臼田あさ美、15歳から変わらぬ信条はマイペース「他人と比較される世界だからこそ」
女優の臼田あさ美が主演するBSテレ東ドラマ「ちょい釣りダンディ」が4日から放送される。撮影開始前には、釣りを楽しむ主人公になりきろうと港で釣り糸(ライン)を垂らしたという。今では、精神を研ぎ澄ます釣りは「自分を整える時間」と言うまでになった。
まさかのオファーに「戸惑いました」
女優の臼田あさ美が主演するBSテレ東ドラマ「ちょい釣りダンディ」が4日から放送される。撮影開始前には、釣りを楽しむ主人公になりきろうと港で釣り糸(ライン)を垂らしたという。今では、精神を研ぎ澄ます釣りは「自分を整える時間」と言うまでになった。(取材・文=西村綾乃)
ドラマは阿鬼乱太作の漫画「ちょい釣りダンディ」が原作。建設設計事務所で働く会社員の主人公・檀凪子(臼田)は釣りが大好きで、外回りに出ると、川や港、公園の水路などで“ちょい釣り”を楽しむことを日課にしている。臼田は言った。
「これまでの人生の中で釣りをしたことがあるのは、数えられるほどでした。“ちょい釣り”というワードもピンとこなくて、なぜ私にオファーがきたのだろうと戸惑いました」
原作漫画の主人公は男性。ドラマではその設定を、女性にするという発案にも驚いたという。
「頂いた台本を読んでいくと、私と檀は『自分のペースで生きている』ということに気が付きました。共通点を見つけたら、檀が身近な存在になってしっくりきたんです。タイトルの“ダンディ”は、女性にも使われる言葉ですよね。男性に“ビューティー”という形容詞を用いることもありますし。30代後半になった今、私の中にあるダンディな部分に出会ってみたいと思いました」
ドラマ、映画、バラエティー番組などで活躍する臼田は、15歳のときに東京・渋谷で雑誌の編集者にスカウトされ、芸能の世界に飛び込んだ。雑誌モデル時代はもちろん、活動の場を広げた現在も、「マイペース」を大切にしている。
「マイペースというと『プロ意識がないのか』と、叱られるかもしれませんが、そうではなくて、自分の歩幅を守って進みたいんです。何歳までにこれをするとか、この作品に出るとか欲は出さずに。自分がどうありたいのか、いつも自分の心に耳を傾けてきました。他人と比較される世界だからこそ、一歩ずつ。ゆっくりでも自分のペースで歩みたかった。ペースを崩さずに進めたから、ここまで続けることができたのだと思っています」
撮影準備のため実際に釣り体験「釣れた魚は自宅で唐揚げに」
演じる檀は、空いた時間に釣りを楽しむ“ちょい釣り女子”。物語の中で、ちょい釣りは、人生を豊かにしてくれるもの。釣り糸を垂らせば、瞬時に子ども時代に戻ることができるものとされている。
「私は本を読むことが大好きな子どもでした。本の中には知らない世界がたくさん描かれていて、知らない場所とつながっているような感覚がありました。大人になった今は、台本を広げた時に、子どもの頃に感じた高揚を思い出します。『どんな物語が書かれているのだろう』。ワクワクする気持ちは変わりません」
同作では、魚にまつわる雑学のほか、なじみの店などで釣った魚を味わうシーンも登場する。
「シロギスは願掛けの魚など、知らなかった知識に触れました。昔からの言い伝えのような雑学は面白いですね。先日撮影準備のために、スタッフと釣り体験をしたのですが、釣れた魚は自宅で唐揚げにして家族でいただきました。うろこを取ってさばいたりするのも平気。イカははらわたを取って塩辛にしたりもします。娘からは『ママが作った、かぼちゃのポタージュが好き』と言われています」
撮影開始前、臼田は2度釣りに出向いている。東京・有明での1度目は、約2時間半で15匹を釣る大漁だったという。
「釣れる楽しさを知り、また行こうと出向いた2度目の成果はゼロ。『この前釣れたから、また釣れるだろう』と欲が出ました。気温や時間などいろいろな条件がそろわないと難しい。邪念を持ったままでは、一切通用しないのだと気付かされました。垂らした糸に集中し、自分が無にならなければ、魚の繊細な動きに気付くことができない。自分を研ぎ澄ます時間は、瞑想に近い。最初に行ったときよりも、釣れなかった2度目の方が満足でした。『整いました』と感じました」
撮影では、川や海などにも出向く予定だ。臼田は「技術を身に付けて、1人でも車に乗ってふらっと行かれるようにしたいです」と言い、「どこかの港で釣り糸を垂らしているかもしれません」とうれしそうに目を細めた。
□臼田あさ美(うすだ・あさみ)1984年10月17日生まれ、千葉県出身。映画では「蜜蜂と遠雷」、「ウェディング・ハイ」などの話題作に出演。「愚行録」では、「第39回ヨコハマ映画祭」で助演女優賞を受賞した。ドラマでは、大河ドラマ「龍馬伝」、「イチケイのカラス」、「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」など数多くに出演している。
ヘアメイク:秋鹿裕子
スタイリスト:山口香穂