2.5次元俳優・荒木宏文、新作で“記憶をなくした男”演じる 記憶を取り戻すことに苦悩も

幕末期の幕臣、新選組副長の土方歳三ら数々の剣豪に扮(ふん)してきた俳優の荒木宏文が、映画「漆黒天 -終の語り-」(6月24日、新宿バルト9他で公開)で、記憶をなくした流浪の剣士を演じている。同作は8月に幕を開ける舞台「漆黒天 -始の語り-」と連動。舞台「刀剣乱舞」で脚本・演出を手掛けた末満健一氏とのタッグになり、舞台でも主演の荒木は「求められることに応えていきたい」と意気込んでいる。

主演映画「漆黒天 -終の語り-」で流浪の剣士を演じる荒木宏文【写真:山口比佐夫】
主演映画「漆黒天 -終の語り-」で流浪の剣士を演じる荒木宏文【写真:山口比佐夫】

不惑を前に“覚悟”明かす

 幕末期の幕臣、新選組副長の土方歳三ら数々の剣豪に扮(ふん)してきた俳優の荒木宏文が、映画「漆黒天 -終の語り-」(6月24日、新宿バルト9他で公開)で、記憶をなくした流浪の剣士を演じている。同作は8月に幕を開ける舞台「漆黒天 -始の語り-」と連動。舞台「刀剣乱舞」で脚本・演出を手掛けた末満健一氏とのタッグになり、舞台でも主演の荒木は「求められることに応えていきたい」と意気込んでいる。(取材・文=西村綾乃)

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 同作は、映画と舞台を完全連動させるプロジェクト「ムビ×ステ」の第3弾。脚本は末満氏で舞台の作・演出も担当し、監督はアクションの名手・坂本浩一氏がメガホンを取った。荒木は記憶を失った主人公・名無しを演じている。

「第2弾までは役者をベースとした企画というイメージがありましたが、今回は『末満さんと荒木の掛け算が観たい』とオファーをいただきました。末満さんは『求めていることは、本に書いてある』と多くを語らない方なので、プレーヤーとして求められていることに徹底しようと努めました」

 舞台は江戸。ボロボロの身なりの男(荒木)に何人もの刺客が襲い掛かるが、目にも留まらぬ速さで切り倒していく。「この町で……、オレを見たことはないか?」。記憶を亡くした男は助けた女・喜多(小宮有紗)に「名無し」と名付けられ、自身の記憶を探っていく。たった1つ覚えているのは、愛する者たちの死。狂言・玄馬作者(唐橋充)らとの出会いの中で、徐々に記憶を取り戻すが、そこには新しい苦悩が待っていた。

「僕が演じる名無しは、喜多らに助けられて失くしていた記憶を思い出していきます。僕自身は記憶を失った経験はありませんが、僕がもし、『名無し』だったら、記憶がないということを受け入れて生きていくのか、思い出した事柄を自分のものだと受け入れて生きるのか、いろいろな選択があるなと感じました」

 名前をなくした最強の男は、物語の中で何度も窮地に合う。1対十数人など、対峙する人数も想像を超えている。荒木はけん引する2.5次元の舞台作でも剣の腕前を披露しており、その舞うような剣さばきは、俳優仲間や後輩から一目置かれている。

「『どんな練習をするのか?』と聞かれることもあるのですが、何々流など、全てを事前に練習しておくことは難しいです。泥臭いアクション、肉弾戦。現場で求められることに、いつでも対応できる自分でいたいと思っています。映画では、舞台との違いに、ストレスを感じた部分がありました。ダイナミックに動く舞台では、刃先同士が当たらないように展開しますが、限られたフレームの中で演技をする映画では刃先を交えないと斬り合いをしているように見えません。なので、『カット』の声がかかる度に、手にした『竹光刀』が傷んでいるのを見ることが『持ち道具さんに手間をかけてしまうな』と感じていました。というのも、舞台ではいつも竹光刀を傷めずに、いかにしてリアルな表現をしていくかを求めていたので」

 荒木は6月14日で39歳になる。30代最後の年をどう生き、不惑へとつなげていくのか。

「40歳からは体力的に苦労する部分が増えてくると覚悟しています。すでにその予兆を感じてもいます。ただ、39歳は死に物狂いでやれば限界突破できることも、まだあると思っています。これまで積み重ねたものをどう維持して、自分がやりたいことを体現していくか。自分のコンディションをどう整えて行くかがカギになると思っています」

 8月の舞台は、映画で展開された物語後の「未来」ではなく、映画前の「過去」が描かれるという。

「映画は光と闇、正義と悪、陰と陽のように表裏一体のものが混ざり合い、1つにまとまった作品になりました。『これが正解です』という答えはないので、見た後の自分の心の動きにも着目してほしいですね。舞台は、名無しが記憶をなくす前の時間が描かれています。登場人物たちの因果関係なども明らかにされます。舞台を見た後に、映画を見直すと、別の視点が見つかるはずです。どちらも何度も楽しんでもらえれば」

 どちらも「成功」で終えるには、まずは映画でのヒットが不可欠。荒木はその思い込めて、「漆黒天 -終の語り-」の魅力を伝えていく。

□荒木宏文(あらき・ひろふみ)1983年6月14日、兵庫県生まれ。2007年に獣拳戦隊ゲキレンジャーに出演し注目を集め、その後は数々の映画や舞台に出演。近年は「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」Rule the Stageシリーズやミュージカル「刀剣乱舞」シリーズなどの人気2.5次元舞台作品に出演している。

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