「完全に心の水がこぼれ落ちた」 BiSHアユニ・Dが映画で見せた本物の涙の意味

“楽器を持たないパンクバンド”BiSHが初主演する映画「BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK'N'ROLL」(6月10日公開)。メンバー6人がそれぞれ主演したオムニバスで、アユニ・Dは、BiSHのドキュメンタリー映画「ALL YOU NEED is PUNK and LOVE」(2017年)のエリザベス宮地監督とタッグを組んだ。アユニ・Dが演じたのは自身のグループでの立ち位置と同じ“妹”だ。

BiSHのアユニ・D【写真:舛元清香】
BiSHのアユニ・D【写真:舛元清香】

BiSH初主演映画「BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK'N'ROLL」10日公開

“楽器を持たないパンクバンド”BiSHが初主演する映画「BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK’N’ROLL」(6月10日公開)。メンバー6人がそれぞれ主演したオムニバスで、アユニ・Dは、BiSHのドキュメンタリー映画「ALL YOU NEED is PUNK and LOVE」(2017年)のエリザベス宮地監督とタッグを組んだ。アユニ・Dが演じたのは自身のグループでの立ち位置と同じ“妹”だ。(取材・文=平辻哲也)

 アユニ・Dが主演するのは、亡くなった写真家で狩猟家の兄の思い出をたどる「オルガン」。兄役は写真家の石川竜一、兄の友人役は俳優の高良健吾が務めた。2年前、夏から冬にかけて、長野、北海道などでロケ。短編ながら、じっくり時間をかけて作っているのが分かる。

「宮地さんはずっとBiSHを見てきてくださった方で、ビジネスパートナーではなく、ソロでの活動やプライベートでもお世話になっています。たくさんのドキュメント映像を生み出して宮地さんにしかできない作品だな、と思いました。ドキュメント性が練りこまれていて、撮影の前には、喫茶店で宮地さんと一対一で会って、私の実態調査みたいな時間を作ってくださったんです。普段なかなか話さない家族のこと、アユニ・D以前、どういう生き方をしてきたのか、1、2時間は話し込みました。出来上がった脚本は、アユニ・D以前の私の人間性、リアルなものが入っています」

 アユニ・DはBiSHに最後に入ったメンバー。グループでは「僕の妹がこんなに可愛いわけがない」を担当している妹キャラだ。「実際、私自身も妹で、姉と3歳上の兄がいて、“にいに”と呼んでいるんですが、それが反映されていますし、お兄ちゃん役の石川さんも実際に写真家で、狩猟をしている方。生の強い人間性を織り込まれている脚本だったので、面白いなと思いました」。

 ヒロインのあーこは、死とは何かを考え、兄の魂、そして物事の価値と向き合い始める。「あーこは割と本来の自分と似ている部分がたくさんあったので、逆に難しかったですね。叫んだり、オーバーリアクションの演技の方が逆に楽なのかもしれないと思ったりしました。自分の自然な姿、動きってなんだろうと思ってしまったんですね。奥深いところに入ってしまった気もしました。」と振り返る。

 劇中では、映画を中心に活躍する高良健吾とも共演し、刺激を受けた。「高良さんが出ることを製作途中まで知らなかったんです。お会いした時はすごく恐縮してしまいました。高良さんは『うん』一つの言葉もリアルで、これが長年、積み上げてきた方の『うん』なのかと思ってしまいました」。

次のページへ (2/3) 歌と演技の共通点を語る「何かに憑依されている感覚はある」
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