林家三平が語る「笑点」降板の真相 自堕落生活で激太り、体調悪化で悲鳴を上げた体
なぜ「笑点」のレギュラーの座を手放したのか? それを一度しっかり聞いておきたかった。今春真打ちに昇進した林家はな平(38)の真打ち昇進披露パーティーの席上で久しぶりに会った林家三平(51)に取材を申し込むと、「いいですよ、何でも聞いてください」。後日、たっぷり2時間。その模様を上下2回でお伝えします。前篇では、新たに始める独演会への意気込みや暮らしぶりを中心に。さあ、開演です!
体重は14キロ増「正座もできなかった。あれは落語家として致命的」
なぜ「笑点」のレギュラーの座を手放したのか? それを一度しっかり聞いておきたかった。今春真打ちに昇進した林家はな平(38)の真打ち昇進披露パーティーの席上で久しぶりに会った林家三平(51)に取材を申し込むと、「いいですよ、何でも聞いてください」。後日、たっぷり2時間。その模様を上下2回でお伝えします。前篇では、新たに始める独演会への意気込みや暮らしぶりを中心に。さあ、開演です!(演芸評論家/エンタメライター・渡邉寧久)
昨年いっぱいで国民的長寿演芸番組「笑点」(日本テレビ系)の仕事から身を引いた三平は今、5月20日(金)に東京・日本橋社会教育会館で開催する「第1回林家三平独演会」に向け稽古に励む日々を送っている。
昨年暮れ、「笑点」の降板ニュースとともに明らかになったライザップと“コミット”していたという体形は、今も引き締まったまま。
「74.4キロを55.8キロまで18.6キロ落としました。テレビのロケでは名産品をいただいたりしますが、ふだん炭水化物を食べるのは朝だけ。体重は2キロ戻っただけで、ほぼ当時の体形をキープしています」。そう語る表情は精悍(せいかん)で、顔色は実にいい。酒も普段は口にしなくなったという。
新たに始める会に「第1回」と打った。しかも「独演会」。
「これまで、単発的な『独演会』は、(主催者がタイトルを付けたため)地方でやったことはありましたが、都内でやるのも、『第1回』と付けるのも初めて。春と秋の年に2回、ずっと続けていきます。地方の落語会では、800人とか1000人の大ホールでしたので、(表現をオーバーにするなどして)ごまかすこともできましたけど、今回の会場のキャパは200人。どこからでも、すべてがお客さまに見られますので、ごまかすことはできない」と、言葉に力を込める。
「笑点」出演中も、「年に150日は落語をしゃべっていました」という生粋の落語家。父の初代林家三平から言い聞かされていた『楽屋はぺけ、高座は一番』――。つまり楽屋では控え目にはしっこに座り、周りに話にニコニコ耳を傾け、高座に上がったら自分が一番の気持ちでやりなさい、という心持ちで寄席や落語会に出演し続けていたため、独演会に臨む下地は十分に備わっている。若いころ、毎月2席のネタ下ろしを15年間続けていた経験も今に続く力の源泉で、当時の必死だった取り組みを記憶の奥底から引っ張り出し、持ちネタのバージョンアップを試みているという。
最近はマグネシウム風呂に凝っていて、そこが、日常の稽古場になっている。
「代謝が上がるし、頭がぼーっとしてきてもちゃんとできるか、と自分を試している。大声出しても防音効果もある。最終的な仕上げは畳の上でやりますが、風呂でしゃべっていますね」と明かす。「第1回」では、春風亭小朝(67)に稽古をつけてもらった落語「愛宕山」を含む全3席で、三平落語の現在地を提示する腹積もりだ。
「『三平、少し変わってきたね』と思ってもらえれば。皆さんの頭の中には、落語ができないんじゃないかというイメージがあるみたいなんで、それを打ち破りたい」と、三平誤解の打破に自信を示す。
先々がどうなるか見通せない新たな取り組みだが、不安よりも大きいのは期待!
「(古今亭)志ん橋師匠に教わった噺、一門以外の弟子には稽古をつけなかった晩年の円楽師匠(5代目)に教わった『浜野矩随(はまののりゆき)』と『お血脈(おけちみゃく)』もいずれやります。漫才の『錦鯉』さんと一緒にやりたいですね。お題をもらって、向こうは漫才、こっちは落語をひと月かけて作るとか」と、独演会の行方を自分自身が楽しみにしている。
今はそうポジティブに考えられるようになっているが、2020年初夏のころの三平は、見る影もないほど、芸人としての粋も気概も失っていたという。
「ライザップとコミットする前は太りすぎて、足も重いし、正座もできなかった。落語家としてあれは致命的でしたね。今は、独演会をやろうという気持ちになるまで前向きになっています。あのころのままだったら……」
三平が恥ずかしそうにそう伝えるのは、コロナ禍における体調不良と自堕落な暮らしぶり。医者には大量の薬を処方され、体が悲鳴を上げていた。「このまま行ったら、体がもつかどうか……」
と同時に「笑点」の無観客収録、リモート収録でたびたび味わうようになった違和感。体と芸がちぐはぐになり、三平の脳裏に、「笑点」から離れるという選択肢が芽生え始めたという。
(続く)