「平成ベストソング」を考える 今だから推したい名曲たち、作曲家目線で選ぶ1位は?
5月6日に放送された「関ジャム完全燃SHOW」(テレビ朝日系)のゴールデン2時間スペシャルで、「令和に活躍する若手アーティストが選ぶ平成ソングBEST30」と題して、平成にリリースされた日本の楽曲の中から、ランキング形式で30曲を紹介した。平均年齢25.8歳の若手アーティスト48人が選ぶ「総合ランキング」だ。選者には、筆者も当コラムで取り上げたVaundyや、シンガーソングライターの大原櫻子、吉澤嘉代子らに、音楽作家の大橋莉子らも名を連ねた。現在進行形の若手音楽家たちが選ぶこのランキング、筆者も大変興味深く見た。なんと言っても2位にキリンジの「エイリアンズ」が入っているのが最大の注目点だ。
2位にランクインしたキリンジ「エイリアンズ」が注目ポイント
5月6日に放送された「関ジャム完全燃SHOW」(テレビ朝日系)のゴールデン2時間スペシャルで、「令和に活躍する若手アーティストが選ぶ平成ソングBEST30」と題して、平成にリリースされた日本の楽曲の中から、ランキング形式で30曲を紹介した。平均年齢25.8歳の若手アーティスト48人が選ぶ「総合ランキング」だ。選者には、筆者も当コラムで取り上げたVaundyや、シンガーソングライターの大原櫻子、吉澤嘉代子らに、音楽作家の大橋莉子らも名を連ねた。現在進行形の若手音楽家たちが選ぶこのランキング、筆者も大変興味深く見た。なんと言っても2位にキリンジの「エイリアンズ」が入っているのが最大の注目点だ。(文=“you-me”成瀬英樹)
2000年のリリース時はオリコン最高位42位に過ぎなかったこの楽曲は、さまざまなアーティストに20年以上歌い継がれてきた。キリンジのデビュー時からのファンである筆者は、この曲への若い世代からの高い評価が大変にうれしく、自分のことのように誇らしい気持ちになる。名曲とは、たとえリアルタイムでヒットしなくとも、後世にしっかりと残るのだ。音楽家としても大変に勇気づけられた。
平成の30年間を「20歳から50歳」として過ごし、その大半の期間を音楽家として活動してきた筆者から見ると、今回のランキングには、いくつか完全に抜け落ちていると感じるいくつかのムーブメントがあるのも確かだ。選者の平均年齢が25.8歳であるため、それはやむを得ないことではあると思うのだが。
そこで、若い世代のみなさんに、筆者から「平成ベストソング」のいつくかのご提案をさせていただきたい。筆者と同じ「昭和生まれ、平成育ち」のみなさんには、それぞれの「平成ベストソング」に思いをはせ、楽しんでいただけるとうれしい。
まずは、平成に新たにヒットチャートに登場し、現在では市民権を得たと言える「ヒップホップ」楽曲がベスト30に選ばれていないのが気になった。
リアタイ世代にはDragon Ash featuring Aco,Zeebraの99年のオリコンNo1ヒット「Grateful Days」のシーンに与えた衝撃は忘れられないし、RIP SLYMEもクオリティーと人気を両立させ、後世に影響を与えたキラーチューンをいくつも持つ。筆者は01年のメッセージソング「One」を今こそ聴いていただきたいと思う。そんな中でも、Def Techの05年「My Way」を強く推す。近年の「THE FIRST TAKE」での熟成されたパフォーマンスも感動的な、時代を超えた名曲だ。
1990年代は「渋谷系」の時代でもあった。かろうじて、小沢健二(featuring スチャダラパー)「今夜はブギー・バック」が37位、ORIGINAL LOVE「接吻」が46位にすべりこんでいるが、「渋谷系」の影響力はそんなものではないだろう。小沢が在籍したフリッパーズ・ギターやCornelius、カジヒデキ、など素晴らしいアーティスト、楽曲は数多いが、筆者は「渋谷系」を代表して、ピチカート・ファイヴをご提案したい。曲は「東京は夜の七時」ではいかがだろう。カヴァーも多いエバーグリーンな名曲だ。東京の街で暮らす若者たちを照らす、きらめく光のような美しいナンバーだ。
シンガーソングライターKANのレコード大賞受賞曲「愛は勝つ」(90年)も覚えておきたい。オリコン8週連続1位にダブルミリオンというセールスもさることながら、東日本大震災やコロナ禍という苦難の時代に、人々の心を奮い立たせるカバーもリリースされた平成の「愛のアンセム」である。