卒業記念ランドセルのリメークが人気 受注は年々倍増も担当者「失敗が許されない仕事」
この春に小学校を卒業し、もう使わないと分かっていながら、なかなか処分できないランドセルがあるという家も多いだろう。6年間の思い出が詰まったランドセルは、親だけでなく、子どもが手放したくないというケースもあるもの。そんな使わなくなったランドセルをリメークし、財布やパスケースに生まれ変わらせるサービスが人気を呼んでいる。愛知県一宮市の「Askalカバン工房」を取材した。
中学校に進学した娘に革製品をプレゼントしたことがきっかけ
この春に小学校を卒業し、もう使わないと分かっていながら、なかなか処分できないランドセルがあるという家も多いだろう。6年間の思い出が詰まったランドセルは、親だけでなく、子どもが手放したくないというケースもあるもの。そんな使わなくなったランドセルをリメークし、財布やパスケースに生まれ変わらせるサービスが人気を呼んでいる。愛知県一宮市の「Askalカバン工房」を取材した。
同社がランドセルリメークのサービスを始めたのは2017年。担当者によると、代表取締役の大橋泰助社長が、中学校に進学した娘に革製品をプレゼントしたことがこのサービス誕生のきっかけだという。
「娘さんが中学入学後に、ランドセルを小さく作り直したミニランドセルの存在を知ったものの、すでにランドセルは処分してしまった後。そこで社長が、革から髪留めのバレッタとパスケースを作り贈ったところ、とても喜ばれたとのことで、このサービスを思いついたと聞いております」
開始当初の17年の受注数は800件ほど。そこから年々倍増し、20年は9000件、21年は1万4000件、今年はすでに2万件もの受注が入っているという。口コミの他、コロナ禍で注文が急増した面もあると担当者は言う。
「緊急事態宣言で学校が急きょ休校になり、ランドセルを背負う最後の日が突然来てしまったことで、思い出を作り切れないままになってしまったというご家庭が多かったようです。代わりに少しでも形に残るものをということで、注文をいただく例も増えています」
同社の従業員は29人、うち27人がパートタイムなどで働く女性スタッフだ。30人に満たない人数で2万件ものリメーク注文をどのように処理しているのだろうか。
「当社のような手作業の工房では、1人の職人さんが革製品1点ずつを採寸から仕上げまで行うのが一般的です。当社ではその工程を分業制にし、反復作業とすることで、作業効率や技術向上を図っています。ただ、もちろん扱うのはお預かりしている大切なランドセル。失敗が許されない仕事なので、熟練のスタッフをそろえ、思い出のキズや刺しゅう、ロゴなどを残したいなどのご要望にもお応えしています」
セット内容は5点セットと6点セットの2種類。中学生になっても使える財布やパスケースのセットが人気だが、ランドセルを祖父母から買ってもらった家庭も多く、おじいちゃんおばあちゃんにキーホルダーなどにして記念にプレゼントすることもあるという。
これまでに5万点以上のランドセルを手掛けてきた「Askalカバン工房」。SDGsの重要性が問われる時代、さらなる広がりを見せそうだ。