日本人監督初の快挙か、Netflix初の快挙か アカデミー賞作品賞の行方
第94回アカデミー賞の授賞式が3月28日午前(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催される。濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞の4部門でノミネートになっており、受賞に期待がかかる。賞の行方を予想してみた。前編は作品賞、監督賞。
オスカー予想・前編 作品賞、監督賞 「ドライブ・マイ・カー」は4部門ノミネート
第94回アカデミー賞の授賞式が3月28日午前(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催される。濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞の4部門でノミネートになっており、受賞に期待がかかる。賞の行方を予想してみた。前編は作品賞、監督賞。(文=平辻哲也)
【作品賞】
○「ベルファスト」(フォーカス・フィーチャーズ)
作品・監督・助演男優・助演女優・脚本・主題歌・音響(7部門)
▲「コーダ あいのうた」(Apple)
作品・助演男優・脚色(3部門)
「ドント・ルック・アップ」(Netflix)
作品・脚本・編集・作曲(4部門)
△「ドライブ・マイ・カー」(ヤヌスフィルムズ)
作品・監督・脚色・国際長編映画(4部門)
「DUNE/デューン 砂の惑星」(ワーナー)
作品・脚色・撮影・編集・美術・衣装・メイク・作曲・音響・視覚効果(10部門)
「ドリームプラン」(ワーナー)
作品・主演男優・助演女優・脚本・編集・主題歌(6部門)
「リコリス・ピザ」(ユナイテッド・アーティスツ)
作品・監督・脚本(3部門)
「ナイトメア・アリー」(ディズニー)
作品・撮影・美術・衣装(4部門)
◎「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(Netflix)
作品・監督・主演男優・助演男優=2人・助演女優・脚色・撮影・編集・美術・作曲・音響(11部門12賞)
「ウエスト・サイド・ストーリー」(ディズニー)
作品・監督・助演女優・撮影・美術・衣装・音響(7部門)
※◎が本命、〇が対抗、▲が穴、△が大穴
ノミネート枠は昨年の8から10に拡大。最有力は、最多11部門12賞でノミネートされた「パワー・オブ・ザ・ドッグ」だ。「ピアノ・レッスン」で女性監督初のカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したジョーン・カンピオン監督による西部劇。威圧的だが、カリスマ性を持った牧場主(ベネディクト・カンバーバッチ)と、彼が敵意を向ける弟一家(ジェシー・プレモンス、キルステン・ダンスト)の物語。雄大な大自然を背景に、タブーやさまざまな愛憎が描かれる。受賞となれば、Netflix初の作品賞となる。
対抗は「ベルファスト」(3月25日公開)。北アイルランド出身のケネス・ブラナーが製作・監督・脚本を手掛けた自伝的モノクロ作品。プロテスタントとカソリックの対立が激化するベルファストを舞台に家族愛を描く。衝突を機に、故郷を追われる主人公一家の姿は、ウクライナでの悲劇にも通じるところがある。トロント国際映画祭の最高賞である観客賞を受賞しているのは強み。
穴は「コーダ あいのうた」(公開中)。音楽の道を夢見る高校生と耳の聞こえない家族の物語。フランス映画「エール!」のリメイクだが、オリジナルを上回る感動がある。
「ドライブ・マイ・カー」は期待も込めて大穴に。日本映画初の作品賞候補だけでも、大快挙だ。
【監督賞】
○ケネス・ブラナー(ベルファスト)
△濱口竜介(ドライブ・マイ・カー)
ポール・トーマス・アンダーソン(リコリス・ピザ)
◎ジェーン・カンピオン(パワー・オブ・ザ・ドッグ)
▲スティーヴン・スピルバーグ(ウエスト・サイド・ストーリー)
監督賞は作品賞とのセットと見るべきだが、こちらの方が5枠と狭き門。「ドライブ・マイ・カー」の評価の高さが伺える。最有力は「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のカンピオン。対抗は「ベルファスト」のブラナー。「ウエスト・サイド・ストーリー」はブロードウェイ・ミュージカルの2度目の映画化だが、ロバート・ワイズ&ジェローム・ロビンスによる「ウエストサイド物語」(1961年)よりも優れているとの評価もある。「ドライブ・マイ・カー」の濱口は村上春樹の原作短編を再構築し、独自のアプローチで演出した。スピルバーグを始め、世界の一流監督と肩を並べたことがすごい。
(後編に続く)