「なぜ合唱だけが」 卒業式で自粛も…コロナ禍3年目、岐路に立つ合唱文化の今
今年2月、文部科学省は新型コロナウイルスのオミクロン株に対応した学校での感染防止強化策をまとめ、合唱や管楽器の演奏を「感染リスクの高い教育活動」と位置付け、基本的に自粛するよう全国の教育委員会に要請した。これを受け、全日本合唱連盟はすぐに文科省に要望書を提出。意見交換を行い、「一律に控えることを求めるものではない」という共通見解が示された。コロナ禍初期からやり玉に挙げられてきた合唱は今、どんな岐路に立たされているのか。全日本合唱連盟の梅田昌和事務局長に聞いた。
今年2月、文科省は「感染リスクの高い教育活動」として合唱の自粛を要請
今年2月、文部科学省は新型コロナウイルスのオミクロン株に対応した学校での感染防止強化策をまとめ、合唱や管楽器の演奏を「感染リスクの高い教育活動」と位置付け、基本的に自粛するよう全国の教育委員会に要請した。これを受け、全日本合唱連盟はすぐに文科省に要望書を提出。意見交換を行い、「一律に控えることを求めるものではない」という共通見解が示された。コロナ禍初期からやり玉に挙げられてきた合唱は今、どんな岐路に立たされているのか。全日本合唱連盟の梅田昌和事務局長に聞いた。
「コロナ禍の早いうちから合唱はリスクの高い行動とされており、実際にクラスターを出してしまったケースもありました。それを受け、2020年の6月に医師の監修のもとでガイドラインを作成し、これに基づいて活動を続けてきた。ただ、2020年は各県、支部も含めて大会はほぼすべて中止となりました」
翌年には、飛沫が届かないだけ距離を取れば感染リスクを大幅に下げられることも分かってきた。昨秋には、全日本合唱コンクールの全国大会をコロナ流行後初開催。各方面でニューノーマルが広がるなか、合唱表現の在り方も様変わりを迎えている。
「今ではマスクをした状態での合唱も一般化してきました。ただ、やはり声がくぐもったたり、発音が聞き取れない、表情が見えないという部分もある。全国大会ではガイドラインに則った上で、本番でのマスクなしも認めました」
大会を行う会場は規模や換気設備も整っており、マスクを外しても飛沫が届かない十分な間隔を取っての合唱が可能だ。本番では参加62団体のうち、9割に上る55団体がマスクを外し、久々に本来の合唱を表現した。ところが……。
「本番会場では感染対策が取れても、練習を行う通路やリハーサルではマスクをしたまま調整せざるを得ない。ずっとマスクありで練習をしてきたので、本番だけマスクなしでは響き方が変わってしまうんですね。反対に、プロの合唱団はマスクありでもきれいに聞かせる技術も生まれている。小学生の部では録画や録音での参加もあって、審査員の中でも評価が分かれたと思います」