地震、停電時に水と塩だけでスマホを充電 実用化進む家庭用燃料電池の今
16日夜に福島県沖を震源とする地震が発生し、宮城県、福島県では最大震度6強を観測した。東北地方や関東地方では、広い範囲で最大210万軒が停電。東日本大震災から11年を迎えた矢先に起こった強い地震に、あらためて防災備蓄の大切さを感じた人も多いだろう。現在、被災した際の最大のライフラインのひとつと言われるのが、スマートフォンを始めとする携帯電話。いざというとき、水と塩だけで携帯が充電できる簡易燃料電池「マグネ充電器」を開発した家電メーカー「STAYER」(東京)の清水伸俊営業統括部長に、防災用燃料電池の今を聞いた。
16日夜の地震では東北地方や関東地方の広い範囲で最大210万軒が停電
16日夜に福島県沖を震源とする地震が発生し、宮城県、福島県では最大震度6強を観測した。東北地方や関東地方では、広い範囲で最大210万軒が停電。東日本大震災から11年を迎えた矢先に起こった強い地震に、あらためて防災備蓄の大切さを感じた人も多いだろう。現在、被災した際の最大のライフラインのひとつと言われるのが、スマートフォンを始めとする携帯電話。いざというとき、水と塩だけで携帯が充電できる簡易燃料電池「マグネ充電器」を開発した家電メーカー「STAYER」(東京)の清水伸俊営業統括部長に、防災用燃料電池の今を聞いた。
「東日本大震災を機に防災家電の企画開発に取り組み始めました。被災者に直接会って話を聞くなかで、安否確認や情報収集など、携帯電話が欠かせないライフラインとなりつつある一方、電池が長続きしない、充電できる場所がない、たとえあっても人が殺到して長蛇の列といった切実な悩みが聞かれた。家電の開発で培ったノウハウで、停電時でも使える充電器が作れないかというのが出発点でした」
使い方は本体内部に塩と水、マグネシウム棒を入れ、ふたをして30回ほど振ったのち、ふた上部のゴム栓を開けるだけ。10分ほどでスマートフォンを安定して充電できるだけの電流が供給される。照明目的だけなら海水や醤油、尿での使用も可能だ。ただし、この場合は不純物による電圧低下でスマートフォンの充電には使えない。
原理は燃料電池の一種である空気マグネシウム電池と一緒。マグネシウムが塩水に触れることで、表面が溶けだし電子を発生させる。他社製品と比較し、同社がこだわったのが災害時に持ち出せる携行性と繰り返し使える再利用性。カートリッジ式のマグネシウム棒を4本同梱しており、カートリッジを交換することで最大でスマートフォン10回分のフル充電が可能だ。カートリッジは追加販売もしているという。
「水と塩で使える防災用ランタンは以前からありました。ただ、スマートフォンの充電に使える電圧を担保するのが難しかった。内部を2つのタンクに区切ることで、乾電池でいう直列回路の電圧を確保し、炭素性の酸素浸透膜を採用したことで、小型化と安定した電圧の両立に成功しました」
発売された2018年と、ラジオ機能搭載モデルを発売した20年にはグッドデザイン賞も受賞。各社から類似製品が販売されているが、照明機能や防水性能、非常時の持ち運びやすさなど、防災備蓄としての実用性に特化した。
平時はもとより、今や非常時にも何より頼りになるツールとなったスマートフォン。いざというときに電池切れという事態にならないためにも、どこでも充電できる家庭用燃料電池の需要も高まっている。