災害時に本当に使えるアウトドア用品とは? 登山用品店のプロに聞いた【水&非常食編】
東日本大震災から11日で11年を迎える。近年はキャンプや登山などアウトドアブームの高まりから、防災用品としても使えるアウトドアグッズに注目が高まっている。災害時に本当に使えるアウトドアグッズとはどのようなものなのか。登山用品専門店「石井スポーツ」ヨドバシ新宿西口店の店員で、登山歴26年、南米最高峰のアコンカグアを始めヒマラヤ登山の経験もある鈴木岳載さんに聞いた。全2回の前編は水と食事に関わるアウトドア用品についてお届けする。
水を運ぶ容器は「大きければいいというものでもない」
東日本大震災から11日で11年を迎える。近年はキャンプや登山などアウトドアブームの高まりから、防災用品としても使えるアウトドアグッズに注目が高まっている。災害時に本当に使えるアウトドアグッズとはどのようなものなのか。登山用品専門店「石井スポーツ」ヨドバシ新宿西口店の店員で、登山歴26年、南米最高峰のアコンカグアを始めヒマラヤ登山の経験もある鈴木岳載さんに聞いた。全2回の前編は水と食事に関わるアウトドア用品についてお届けする。
非常時のためにまず備えておきたいのが、水と食糧。アウトドアで水の確保というと、川の水をろ過して飲み水にする携帯浄水器などの製品もあるが、防災備蓄という観点からするとそこまでの備えは必要ないという。
「日本の場合、断水してもすぐに支援が届きますし、飲み水が確保できないということは考えにくい。それよりも、体を拭いたり洗い物をしたり、飲料用以外の用途の水をどれだけ確保するかが大切かと思います。キャンプなどでも使うウオーターキャリーがおすすめですが、大事なのは容量です。大きければいいかというとそういうこともなく、大きすぎると重くて持ち運びが大変。女性でも運びやすい5リットルほどの容量のものを、2つ3つ用意する方がいいと思います」
水の次は食糧だ。近頃はキャンプでも豪華な食事を楽しむのが主流だが、災害時はいかに簡単に栄養を摂取できるかが最重要。お湯を注ぐだけのアルファ米や乾パンなど、非常食や備蓄食というとやや味気ないイメージもあるが、最近は格段においしく進化しているという。
「アルファ米は白米だけでなく、五目ごはんやドライカレー、リゾットに加えて、ビリヤニやナシゴレンなど、種類も豊富で食べ飽きません。熱湯15分、水で60分で戻るものが多いですが、最近は熱湯3分、水で5分で食べられたり、水がなくてもそのままスナックのように食べられるフリーズドライタイプのものもあります。やや値段は上がりますが、一般的なカップラーメンメーカーのものより賞味期限が長く、保存期間は5年ほど。備蓄として買いだめしておくのには向いています。乾パンも昔のような口の中の水分がなくなる感じはなく、しっとり柔らかい食感でおいしいと好評ですね」
災害時に温かいごはんが食べられるのは、気持ちの上でも大きな励みとなるもの。上記の備蓄食をおいしく食べるためには、お湯の確保も重要となる。ガス燃料やアルコール燃料、固形燃料に薪を使った焚き火など、アウトドアでもお湯を沸かすための選択肢は多岐にわたるところだ。
「非常時でも手に入りやすいのはやはりガスですね。本来はメーカーが同じものを推奨していますが、カセットボンベを使うタイプはコンビニでも手に入ります。アルコールストーブや固形燃料は軽くて場所を取らないですが、直接火が出るものなので避難所など屋内での使用は気をつけたほうがいいでしょう。火にかける器は金属製で取っ手のついた大きめのシェラカップが手軽です。そのままおたまや食器にもなりますし、普段使いされている方もいますね。意外と大事なのが保温用の水筒。せっかくお湯を沸かしてもそのままではすぐ冷めてしまいますから。赤ちゃんの粉ミルクを作るのにも使えますね」
基本的な防災備蓄と考え方は一緒でも、随所で光るアウトドア流の備え選び。後編は避難所で使える防災用品についてお届けする。