銀座のロシア食品専門店に理不尽な破壊行為 従業員のウクライナ人「残念な気持ちでいっぱい」
ロシアのウクライナ侵攻を受け、反ロシアのムードが日本国内でも高まる中、東京・銀座のロシア食品専門店が何者かに看板を壊される被害を受けていたことが2日、分かった。同店はウクライナ人が経営しており、取材に「本当に残念な気持ちでいっぱい」と心を痛めている。
「日本人がやったのですみません」代わりに謝罪する書き込みにも心痛める
ロシアのウクライナ侵攻を受け、反ロシアのムードが日本国内でも高まる中、東京・銀座のロシア食品専門店が何者かに看板を壊される被害を受けていたことが2日、分かった。同店はウクライナ人が経営しており、取材に「本当に残念な気持ちでいっぱい」と心を痛めている。(取材・文=水沼一夫)
被害を受けたのは、都内のロシア食品専門店「赤の広場」。2日、公式ツイッターで「当店で起きた悲しい出来事についてお知らせさせていただきます。2月28日の夕方店舗の看板が壊され、割られてしまいました」と報告した。そして、「ロシア食品を扱っているという理由からでしょうか。店名のせいでしょうか…。実は当店代表はウクライナ人、スタッフもウクライナ人、ウズベク人、日本人です。そのうち5人はシングルマザーとして家族の生活を支えるために働いています」と内情を明かし、困惑の様子を見せた。
3日、同店のウクライナ出身の女性スタッフが取材に応じた。看板が破壊されたときの状況について、「夕方ぐらいにお客さんを接客しているときに、(外で)ちょっと音がして、自転車が見えたんですね。自転車で衝突があったんじゃないかなと思いますけど、そのまま行ってしまった。それがわざとじゃなかったとしても、謝りにこなかったのは事実なので、本当にきれいにパッカリ割られてはいるので、それがちょっと残念ではあります」と説明した。
ロシア侵攻後、同店には電話などでも嫌がらせ行為はなかった。店で働くスタッフにロシア人はいない。「今まで看板を割られるとか何かを壊されるということは一度もなかったので、それに対しては本当に残念な気持ちでいっぱいです」と、無念の気持ちをにじませた。
店のオープンはちょうど1年前。赤の広場と名付けた理由は、「もともと赤というのは『美しい』という意味があるので、美しい広場という意味合いも込めてますし、あとは『中心』という意味ですね。ロシアの中心という意味ではなく、お店として中心になりたいという意味。日本で初めての旧ソ連の食品専門店になるので、その中心として、やっていければなという思いがあります」という。本格的な品ぞろえは反響を呼び、客層については、「ロシアが好きなお客様がいらっしゃる。日本人が8~9割。残り1割はロシアの方や旧ソ連の方」と話す。
店で働くウクライナ人たちは、ただでさえ、母国のことが不安で仕方がない状況。「ウクライナの親戚のことをみんな心配している。毎日毎日、電話をして連絡を取り合っている」と、気をもんでいる。その最中に、日本で起きた理不尽な破壊行為に、悲しみが広がっている。
SNS上には、ツイートを見た人から破壊行為を非難する声が相次ぐ。
ただ、行為自体は許されないことでも、スタッフの思いは複雑だ。「『日本人がやったのですみません』って書かれる方がいるんですけど、日本の方がやったという証拠がない。そういったことでモメるのも残念。看板を壊しても何か変わることではない。人として少し残念かなというのはありますね」と、騒動の過熱を気にかけた。
被害については警察に相談しており、今後の対応を検討している。