ウクライナ問題、核攻撃懸念でシェルター需要が急増 「意味ない」説検証も
ロシア国防省は2月28日、ロシア軍の戦略核兵器部隊が戦闘態勢に入ったと発表した。日々緊張が高まるウクライナ情勢で、核戦争も現実味を帯びるなか、今、国内のシェルター需要が急増している。
各国で高い設置率を誇る一方、日本の設置率はわずか0.02%に留まる
ロシア国防省は2月28日、ロシア軍の戦略核兵器部隊が戦闘態勢に入ったと発表した。日々緊張が高まるウクライナ情勢で、核戦争も現実味を帯びるなか、今、国内のシェルター需要が急増している。
キューバ危機の1962年に創業、国内最古のシェルター販売実績を誇る株式会社シェルターでは、この数日、家庭用シェルターの注文が急増している。平時は年間でも20件程度の契約数のところ、30件以上の問い合わせが寄せられていると同社の西本誠一郎代表は言う。
「東日本大震災で福島原発が被災したときは15件ほど契約に至りましたが、それと比べても多い。本格的な地下シェルターは問い合わせの2割くらいで、8割は空気中の放射性物質を除去するろ過機(の要望)です。一般的なエアコンのような設置式で、放射性物質をろ過するとともに気圧を上げて外部からの侵入を防ぐもので、価格は250万円~320万円。1坪あたり約150万円で、少なくとも450万円ほどかかる地下シェルターと比較すると手軽です。一般のご家庭のほか、100人ほどの社員全員が避難できるものを注文された企業もありました」
核シェルターというと、爆発時にはすでに避難していなくてはならず、アラートが鳴って10分前後でミサイルが到達する日本の現状では、ほとんど費用対効果がないとの言説もある。同社では過去、この「核シェルターは意味がない」という説を徹底検証。広島と長崎に落とされた核爆弾では、爆風や熱線が降り注ぐ爆心地の3キロ圏内では生存は困難、また、3キロ圏外では直接的な被害は大幅に軽減するため、核シェルターの中にいなくとも生き残れる確率が高いと分析している。
その上で「放射線物質こそが核攻撃最大の脅威。ばらまかれた放射線物質は風に乗って最大で3000キロもの広範囲に被害を与えます。3000キロというと日本列島がすっぽり入る距離。爆発ではなく、この汚染された空気から身を守るのが、核シェルター本来の目的です」と西本代表。空気の汚染濃度は最長でも2週間ほどで1000分の1程度まで弱まるため、その間の水と食糧、そしてろ過した清浄な空気があれば健康被害を大幅に軽減できるという。
「エアコン型のろ過機は通常は注文から1週間以内で設置できますが、今は注文が殺到しており納品まで2か月ほどかかります。ろ過機はイスラエル製で、戦争が激しくなるとさらに納期が遅れることが予想されます」
西本代表によれば、国民あたりのシェルター設置率が高いのはスイスやイスラエルで、米国やロシア、韓国でも普及しているデータがある一方、日本の設置率はわずか0.02%に留まるという。
近年は東日本大震災の経験から津波対策としてシェルターを求める需要もあるという。ウクライナ情勢をきっかけに、自らの危機管理を見直す人も増えているのかもしれない。