俳優の笠松将が19日、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで行われた映画「リング・ワンダリング」（19日公開）の初日舞台あいさつに登壇。共演の阿部純子、金子雅和監督らとトークを繰り広げた。

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　無事の公開に笠松は「こんな大変な世の中で、こうやって公開できて本当に幸せに思っています。ありがとうございます」と感謝。阿部も「この映画、ちょうど2年前の2月に撮影していたんですが、今日という日を迎えられて、日の目を見ることができてうれしく思っています。本当にありがとうございます」と感慨に浸った。

　約4年前に企画したという金子監督は、東京の地面の下に歴史や記憶が埋もれているという物語について「僕は東京生まれの東京育ちなので、1度は東京を舞台にした映画を作りたいと思っていました。ちょうど東京オリンピックに向かって東京が新しく開発され、変わっていく時期で、その地面の下に埋もれた記憶や命があるんじゃないか？　と着想しました」と明かした。

　笠松は「台本を読ませてもらって、監督にお会いしていろんな話をして、現場で撮影して、完成した映画を見させていただいて、その都度、作品に対する見え方、感じ方がどんどん変わっていきました。（公開を迎えて）今日でまた、僕の中でのこの作品の“置き方”が変わると思います」としみじみ。阿部も「始めて台本を読ませていただいたとき、正直、文章だけでは理解しきれないと思ったし、そこが魅力のひとつだなと感じました。監督の中のイメージが明確で、それを映像として完成させていくというのは、役者にとって楽しい過程であり、どんな現場になるのか？　興味がそそられる脚本でした」と振り返った。

　笠松と阿部は今回が初共演。現場ではあまり話す機会がなく、また大自然での撮影で笠松は疲労がたまり、間の時間も休んでいることが多かったとのこと。「そんなとき、阿部さんがそっと栄養ドリンクを買ってきてくれて、本当に優しい人だなって思いました」と笑顔。一方の阿部は、笠松について「縁の下の力持ちでチームを引っ張ってくれる存在」と評し、それを象徴するシーンとして、笠松さんが阿部さんをおんぶするシーンを挙げ、「何段もある階段を何度も何度も上ったり降りたりしてくださったんですが、全然、弱音を吐かず、ずっと私を背負いっぱなしで、この映画も背負って、私も背負ってくれました」と称賛した。

　撮影のクランクアップから2年を経ての公開となったが、笠松はこの2年を振り返り、「僕は、この作品でお仕事を辞めようと思ってたんです。自分には向いてないと思って……」と衝撃の告白。「だから、この作品を一生懸命やりたかったし、この仕事に挑んでいるときの僕のマインドと、いまの僕にとっての映画やドラマというものの価値が、僕の中で全然違っていて……。価値観が変わる前、がむしゃらに一生懸命にやっていた頃の最後の作品であり、2年たって、そういう僕をこうやって見ていただけて、こういう場があって、本当にうれしく感慨深いです」と語った。

「リング・ワンダリング」は渋谷シアター・イメージフォーラムほか、全国順次公開中だ。

(C)2021 リング・ワンダリング製作委員会 配給:ムービー・アクト・プロジェクト