バイアグラ、保険適用に問題は? 悪用の懸念、副作用の有無を現場の医師が解説
厚生労働省が2日、不妊治療目的に限り4月から公的医療保険の対象とすると定めた勃起障害(ED)の治療薬「バイアグラ」。ネット上では悪用や副作用を懸念する向きもあるが、保険適用に問題はないのか。現場の医師からは保健治療となる際の用法・用量の基準を求める声が上がっている。
不妊治療目的に限り4月から公的医療保険の対象となる
厚生労働省が2日、不妊治療目的に限り4月から公的医療保険の対象とすると定めた勃起障害(ED)の治療薬「バイアグラ」。ネット上では悪用や副作用を懸念する向きもあるが、保険適用に問題はないのか。現場の医師からは保健治療となる際の用法・用量の基準を求める声が上がっている。
バイアグラは米国で開発され、1999年に国内での製造販売の承認を受けたが、これまでは自費診療でのみ使われてきた。4月から始まる保険適用では、「勃起障害による男性不妊」と診断された場合のみ保険の対象となり、厚労省では今後、処方できる医療機関の要件を定めていく方針だ。
「勃起障害による男性不妊」とはどのように診断するのか。都内の男性専門クリニックの医師は「勃起障害、いわゆるEDは問診による診断が基本です。触診は聞いたことがない。現在の自費診療では、受付で問診表を書いてきただき、それをもとに医師が質問、勃起状況を表したイラストなども交えつつ多方面から診断をし、処方せんを出すというのが一般的ですね」と話す。
診断の基本が問診である以上、患者が悪用する恐れは否定できない。保険適用であることを利用して安価に仕入れ、私的利用や薬の横流しなども懸念される。
この点について、「勃起障害による男性不妊ということは、実際にパートナー性行為をするタイミング法での使用が前提になる。女性が妊娠しやすい時期は月に数日ですから、不妊治療を目的とするならその日数分の処方量に限るべきです。不妊の原因は男女でほぼ半々。実際に男性のEDによって不妊に悩んでいるカップルも多くいます。適切な処方量を定めれば、不妊治療の大きな手助けになると思います」との考えを示した。
あくまでも妊活を目的としているため、女性の排卵日に合わせて使用する。そのため、医師が一度に処方する薬の量もそれほど多くないというわけだ。
最後に、バイアグラの副作用や安全面に問題についてはどうだろうか。過去には心臓に負担を与えるとの報道もあったが、「輸入当初に誤った服用法で事故が起こったケースをマスコミが大々的に取り上げたため、そのようなイメージがありますが、本来は忍容性が高く、副作用は非常に起こりづらい薬です。適切な用法・用量を守れば、せいぜい頭痛や鼻詰まり、顔のほてりくらいのもの。血管を若返らせる効果もあり、1日1錠であれば毎日飲んでも構いません。クリニックによっては1度に10~20錠も処方するところもあります」とこの医師は語った。
いずれにせよ、保険適用されたバイアグラが不妊治療以外の目的で出回ることがないよう、早急な制度作りが求められる。