数千枚のマスクを準備! 開催が危ぶまれたRIZINがまたもや強運を証明

格闘技プロモーション「RIZIN」にとって2020年最初の大会「RIZIN.21」が22日、静岡・浜松アリーナで開催された。浜松での開催はRIZIN初。しかも2月開催もRIZINにとっては初の試みになる。

朝倉未来もきっちりメインを締めた(C)RIZIN FF
朝倉未来もきっちりメインを締めた(C)RIZIN FF

「RIZIN.21」浜松アリーナ大会

 格闘技プロモーション「RIZIN」にとって2020年最初の大会「RIZIN.21」が22日、静岡・浜松アリーナで開催された。浜松での開催はRIZIN初。しかも2月開催もRIZINにとっては初の試みになる。

 2015年の旗揚げ以来、毎年大晦日にシーズンピークを迎えるRIZINからすると、大晦日にキラーカードを切ってしまうため、2月開催は準備期間という部分で大きな実験。それでも五輪イヤーという、日本スポーツ界にとっては大きな分岐点となる2020年を考えれば、今から多少なりとも変化に対応していく体質をつくっておく必要がある。

 そう考えるとRIZIN.21は非常に前向きな決断だったが、大会内容や開催目的以前の段階で立ち塞がった大きな障害が存在した。現在、世界中に不安を撒き散らしている新型コロナウイルスがそれだ。

 ご存知の通り、全国各地の各種イベントが軒並み自粛や中止の方向に進む昨今、その流れとは逆行するかのように開催を決めたRIZIN。だからこそ、ドクター陣に協力を仰いで数千枚のマスクを準備し、大会開催の3日前に当たる2月19日の段階で、取材陣を含む来場者に入場ゲートでマスク(1名につき1枚)を配布することを決定。公式サイトでも同日にはこれを告知し、厚生労働省の推進する「咳エチケット」へのリンクを貼って、ウイルスの拡散を少しでも防ごうと呼びかけた。

 ちなみに「咳エチケット」とは感染症を他人に感染させないために、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえること。これに加え、会場内にアルコール消毒液を設置するなど、最善策を講じた結果、大きな批判や事故もなく開催にこぎつけることに成功したのが今回のRIZIN.21だった。

 もちろん、こうした関係者の努力に選手も呼応する。オープニングファイト3試合と柔術エキシビションイリミネーションマッチ1試合を含む全13試合のうち、半数以上の7試合がKO決着(柔術マッチは時間内に決着)を果たし、午後2時に開始された大会は、5時半過ぎには終了と、RIZIN史上最短級の開催時間を弾き出した。

 なかでもメインを務めた“路上の伝説”朝倉未来の活躍は大きかった。大晦日に試合を終えたばかりの朝倉は、同世代を中心に圧倒的な支持を得て、開設から1年かからずに今やチャンネル登録数89万人超えの日本一のYouTube格闘家に成り上がった。そうした状況に朝倉は、年末の段階で「来年はYouTubeを頑張りたい」と「格闘技は年2回」を公言していたが、年が明けると1月24日には今大会の会見に出席。一転して「年間4試合」という方向性を示してファンを驚かすプランを発表する。

 今大会でもでメインを任されると、2月6日には静岡に赴き、現地での大会告知活動に参加。弟の朝倉海、榊原信行CEOらとともに地元メディアへの露出や市役所への訪問を行った。

 その後、2月13日には取材陣向けに公開練習を実施。自身のYouTubeチャンネルへの出演や、当然のことながら日々の練習なども加わった結果、大会前々日には「コンディションは絶不調」と口にする状況にまで追い込まれた。その際には「今、負けるんじゃないかって不安なんですけど、まぁ絶不調ながら頑張ろうかなと思ってます」と珍しく弱気とも取れる言葉を発し、決して楽観視できない胸のうちを告白していた。

 それでも蓋を空ければ朝倉は、2R2分34秒KO(グラウンドパンチ)を果たし、無事メインの役割を勤め上げるメインイベンターぶりを発揮する。一見しただけだとこれはメインイベンターならば当たり前の話とも言えるのだが、その当たり前ができるファイターは稀(まれ)だったりする。というのも、これは簡単なようでいて、実は非常に高度な心技体を要求されるからだ。

 事実、試合後の朝倉は対戦相手のダニエル・サラスを「思っていた以上に強かった」と評しながらも、「(地元・愛知県豊橋市に近い浜松なので)応援も多かったから勝ちよりも見せる戦いをしたい気持ちが強かった」とコメント。朝倉人気も手伝って、会場には6832人(主催者発表)が集結し、朝倉の勝利に拍手を送った。

 ちなみにRIZINはこの日、次大会RIZIN.22を4月19日、横浜アリーナで開催する旨を発表したが、朝倉は「4月、あんまり気が乗らないんですけど。相手よりも花粉という強敵が4月はいるのでそれがハンデで」と花粉に悩まされていることを吐露。

 とはいえ、試合後にリングに上がって対戦を表明した朴光哲に関しては「全く知らなくて。おじさんがなんで入って来たのかなと思った。(リングを降りてから)ONEの(ライト級)チャンピオンだったっていうのを聞いて、まあまあ強いのかな」との見解を示すと、朴が言い放った「しっかり練習しとけよ、クソガキ!」のマイクアピールに対しては「あの人からしたらガキですかね」とニヤリと笑って見せる余裕ぶり。

 これには榊原CEOも「メインがしっかりメインの仕事をする。プロのエンタメの側面からすると凄い」と大絶賛。さらに「年末に言っていたことと真逆の行動をする。なかなか読めない」と朝倉の真意を掴み切るのは容易ではないとしながら、「不言実行じゃないけど、行動でRIZINの顔として確実に自分が引っ張っていくことを示してくれているなと。そこには頭が下がると共に期待をするところです」と文字通り期待を込めた。

 なお、次大会RIZIN.22では、先にも述べた朝倉未来×朴光哲戦をはじめ、朝倉海、トフィック・ムサエフらの今シーズン1戦目をメインにカード編成をしていくと同時に、タイミングが合えば、マネル・ケイプの持つバンタム級ベルトに扇久保博正が挑戦するタイトルマッチを行うという。

 ……と、ここまで書いたところで、やはり今回同様、RIZIN.22でもまだ、ウイルス騒動が収まっていない可能性も現段階では全否定できない。

 これに関して榊原CEOは「ウイルスの広がりに不安はあるが、どこにピークが来て、その後終息に向かうことは他のインフルエンザでも(実証されている)。気温が20度を越えてくれば消えていくと聞いている」と口にし、最後は「(様々な情報を)念頭に入れて準備をして開催する」と前向きなコメントで締めくくった。

 それにしてもRIZINほど、定期的に大会開催が危ぶまれたイベントも珍しい。昨年のRIZIN.19(10月12日、エディオンアリーナ大阪)と一昨年のRIZIN.13(9月30日、さいたまスーパーアリーナ)は台風の直撃に遭い、今回は新型コロナと、毎年、何かしらの理由で開催を阻もうとする要因と遭遇する。昨年でいうなら7大会(つまり365日のうちの7日間)しか実施していないことを考えると、非常に高い確率でそういった障害と真っ向勝負していることになる。人為的な要因ではないので偶然なのは理解できるが、偶然にしては恐ろしいくらいのピンポイント。まさにRIZIN(雷神)の名が示す通り、神がかっているということか。

 言い換えれば、そういった自然災害やウイルスにすら負けずにRIZINはここまで成長し生き残ってきた。今大会に用意された数千枚のマスクにしろ、日本全国で品薄が伝えられているマスクをそれだけの数、用意できるのだ。これはもう、単なる関係者の努力というより、それだけ強運なイベントとしか言いようがない。

 結果としてその運の強さが那須川天心、堀口恭司、RENA、そして朝倉兄弟といったスターを生み出すことにつながったのではないか。そう思えてならない。

 いずれにせよ、2020年のRIZINは正式に開幕を果たした。冒頭にも記したように今年は五輪イヤーであり、56年ぶりに東京五輪が開催される。

 榊原CEOは本媒体への直撃インタビューの際、五輪後のRIZINでメダリスト×元少年院(朝倉未来)を示唆していたが、そういった前代未聞とも言える対戦カードこそ、幾多の障害を超えた先に見えてくる風景に違いない。

 さらに言えばそうした仰天マッチメイクやリング上での激闘で話題をさらいながら、こうなると今後もRIZINがどんな困難に直面しながら強運を発揮し成長して行くのか。その点を含め興味は尽きない。今年もRIZINから目が離せない一年になりそうだ。

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