「101回目のプロポーズ」劇中音楽は“浅野温子の瞳の輝き”から誕生 西村由紀江が明かす裏話
「僕は死にましぇん。あなたが好きだから」武田鉄矢の名ゼリフで話題になったフジテレビ系月9ドラマ「101回目のプロポーズ」(1991年)。この劇中音楽を手掛けたのはピアニストの西村由紀江。一般的にはCHAGE&ASKAの大ヒット曲「SAY YES」が有名だが、実はピアニストのアルバムとしては辻井伸行氏が2009年に記録を塗り替えるまでの18年間、西村のサントラCDがオリコン週間ランキング歴代最高位だったことはあまり知られていない。そんな大ヒットドラマの重要なシーンで流れていた「夢を追いかけて」が収録されたコンピレーションCD「PURE SWEET」が19日に発売された。レーベルプロデューサーの葉加瀬太郎をはじめ、古澤巌、高嶋ちさ子らが演奏する極上のサウンドトラック集。新作の面白さを語ってもらう前にまずは当時の裏話を西村に聞いた。
浅野温子の瞳の輝きから生まれたメロディー
「僕は死にましぇん。あなたが好きだから」武田鉄矢の名ゼリフで話題になったフジテレビ系月9ドラマ「101回目のプロポーズ」(1991年)。この劇中音楽を手掛けたのはピアニストの西村由紀江。一般的にはCHAGE&ASKAの大ヒット曲「SAY YES」が有名だが、実はピアニストのアルバムとしては辻井伸行氏が2009年に記録を塗り替えるまでの18年間、西村のサントラCDがオリコン週間ランキング歴代最高位だったことはあまり知られていない。そんな大ヒットドラマの重要なシーンで流れていた「夢を追いかけて」が収録されたコンピレーションCD「PURE SWEET」が19日に発売された。レーベルプロデューサーの葉加瀬太郎をはじめ、古澤巌、高嶋ちさ子らが演奏する極上のサウンドトラック集。新作の面白さを語ってもらう前にまずは当時の裏話を西村に聞いた。(インタビュー・文=福嶋剛)
――「夢を追いかけて~薫のテーマ~」は、31年前の大ヒットドラマ「101回目のプロポーズ」の劇伴(※)として今でも聞くと懐かしい名場面がよみがえってきます。
(※)映画やドラマ、アニメなど劇中で流れる伴奏音楽のこと。
「この曲ですが、実は撮影現場でメロディーが思い浮かんだんです」
――撮影現場で?
「はい。普通は台本を頂いたり、あの頃はビデオテープをもらって曲を書くこともありましたが、時間がなくて『台本でサントラを作ってください』と依頼されたんです。ところが、武田鉄矢さんと浅野温子さんのラブロマンスというのが、当時は台本を読んでいてもなかなかイメージが湧かなくて」
――当時は「3年B組金八先生」(TBS系)と「あぶない刑事」(日本テレビ系)のイメージが強かったですものね。
「そうなんです。いったいどんな感じの映像になるんだろうと思ってプロデューサーさんに撮影現場に連れて行ってほしいとお願いしたんです。それまで全然曲が浮かばなくてちょっと不安だったんですが、2人の撮影現場を見て浅野温子さんにごあいさつしたとき、浅野さんがあまりにも美しくて、その瞳の輝きを見た瞬間にあのメロディーが降りてきたんです」
――ものすごい瞬間ですね。
「そのまま撮影現場で五線譜を出して書いたんですよ。他に候補曲もありましたが最終的に撮影現場で書いた曲を採用いただいたんです」
――もしもあのとき、現場に行ってなかったら。
「生まれていなかった曲ですね」
――実際にドラマを見たときの感想は?
「もう普通に視聴者として毎週番組が楽しみで楽しみで(笑)。もともと台本を読みながらこの辺で流れる音楽という具合に想定しながら作りましたが、実際ドラマを見るとまったく想像していなかったシーンで使われていたりするんです。でもそれがすごくマッチしていて、やっぱり音効(※)さんのプロの技はすごい! って新鮮な発見ができました。この体験はその後の私の音楽家としてのキャリアにも大きな影響を与えてくれた出来事だったんです」
(※)選曲や作品に合う曲を選んだり、付けたりする専門の仕事
――まさに西村さんにとっての大きなターニングポイントとなった大切な曲ですね。
「その通りです。本当に大きいですね」
――武田鉄矢さん演じる星野達郎がピアノを練習していた楽曲が、偶然なのか西村さんにも縁の深いショパンの曲(別れの曲)でした。
「そうでしたね。もちろん武田鉄矢さんにもお会いしましたよ。最後にそのピアノを弾くシーンがあって『どうやって弾くのかな?』と聞かれまして(笑)。ほんの少しですが弾き方をお伝えしました」
――西村さんはポップスとクラシックの橋渡し役としてご自身の作品やコンサートを通して両方の音楽の面白さを長きにわたって紹介し続けていますよね。
「そう言っていただけるとうれしいです。『クラシックみたいな堅苦しい音楽は聞かない』と聞く前から入り口を閉ざしてしまっている人たちに『まず1回聞いてみて』と。クラシックという名前だけで閉ざしてしまった扉を開けたり、取り払いたいって思いながら活動しているんです。きっと面白さを発見できる人もたくさんいると思うんです」