裏方を「人で選ぶ」結婚式の潮流 プランナーあり方の変化、コロナ禍の試行錯誤

新型コロナウイルス禍の深刻な影響を受けるブライダル業界で、ウエディングプランナーに試練が訪れている。感染状況や周囲の反応などを考慮しながら、結婚式の開催有無を新郎新婦と悩む日々だ。結婚式のあり方自体が問われる中で、フリープランナーの道を歩むことを選択した芳賀恵理さん(35)に、これからのプランナーの生き方について聞いた。

芳賀恵理さんが仕事人生を見つめ直すきっかけになった“2人だけの結婚式”神前式・参進の儀の様子【写真:芳賀恵理さん提供】
芳賀恵理さんが仕事人生を見つめ直すきっかけになった“2人だけの結婚式”神前式・参進の儀の様子【写真:芳賀恵理さん提供】

フリープランナー選択のきっかけは“2人だけの結婚式” 新たな道を歩み始めた芳賀恵理さん

 新型コロナウイルス禍の深刻な影響を受けるブライダル業界で、ウエディングプランナーに試練が訪れている。感染状況や周囲の反応などを考慮しながら、結婚式の開催有無を新郎新婦と悩む日々だ。結婚式のあり方自体が問われる中で、フリープランナーの道を歩むことを選択した芳賀恵理さん(35)に、これからのプランナーの生き方について聞いた。(取材・文=吉原知也)

 大手結婚式場専属のプランナーとして12年務め、今年からフリープランナーの道を選んだ芳賀さん。昨年8月に思わぬ形でプランニングした“2人だけの結婚式”がきっかけで、これからの仕事人生を見つめ直すことになったという。

 もともとは式場でゲスト呼び込みでの華やかな挙式を計画していた20代のカップル。しかし、第5波に見舞われた昨夏、3週間を切ったところで、大幅に変更。新郎新婦が自宅で着替えて、神前式の神社まで行くという、シンプルなスタイルに変えた。別会場で2人だけで食事をして写真撮影も2人だけ。ゲストは招待しなかった。「当時の状況ではゲストを呼ぶことはできませんでした。何が2人にとって最善なのか、本気で突き詰めて考えました」。これまでゲストハウスやレストランでの大規模な挙式ばかりを数多くプロデュースしてきた芳賀さんにとって、この最小限の挙式は自身の経験にはない、まったく新しい挑戦となった。

 目の当たりにしたのは、まさか予想外の光景だった。晴れ姿をひと目見てお祝いしようと、自然と友人有志や近所の人が集まってきたのだ。新郎新婦の自宅にはご近所さん、神社には友人の姿も。友人からはオンライン挙式についての問い合わせもあり、10人ほどが“出席”した。

「皆さんの姿を見て、ハッとしました。『どうしても当日にお祝いしたい』と言っていらっしゃって。人としての生の気持ちに触れ、自分自身を問い直しました。固定概念にとらわれず、もっといろいろな選択肢の中で、2人に合った結婚式を丁寧に作りたい。そう強く思いました」。人々の思いが凝縮された1つの結婚式が、フリープランナーになるきっかけになったことを明かしてくれた。

 リクルートの調査によると、コロナ流行後のブライダル業界の経済損失は計約1兆円の試算があり、式をキャンセル・延期した人は33万組の推測との見方も出ている。コロナの影響による業界全体のダメージは大きい。芳賀さんは前職時代に、何度となく日程変更を経験した。3回、4回の延期はざらにあったといい、「延期の間に新婦が出産するケースも多く、プラン自体を一から練り直すこともありました。そもそも、人生プランが大きく変わることにもなっているので、ご夫婦の苦労を実感しています」と話す。

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