歌舞伎俳優の中村勘九郎と中村七之助が7日、「春暁特別公演2022」「陽春特別公演2022」のオンライン取材会に出席した。

　特別公演は中村屋一門が毎年行っている全国巡業。東京の歌舞伎座まで歌舞伎を見に行くことができない地方の人々のために2005年から始まった。「春暁特別公演2022」は、勘九郎と七之助、中村鶴松らが全国16カ所をまわる（3月6日～26日）。「陽春特別公演2022」は勘九郎と七之助のほか、勘九郎の息子の勘太郎と長三郎も出演し全国5カ所をまわる（3月30日～4月4日）。

　今年の「春暁特別公演」では、勘九郎が舞踊劇「高坏（たかつき）」で和製タップダンスを披露する。また七之助は「於染久松色読販（おそめひさまつうきなのよみうり）」から「隅田川千種濡事（すみだがわちぐさぬれごと）」で、四役早替りに挑む。

「高坏」は、桜咲く春の日に大名から「高坏（盃をのせるための道具）」を買ってくるように言われた次郎冠者が、「高坏」がどういうものか分からず下駄を買わされるというストーリー。タップダンスの技法を取り入れ高下駄を鳴らしながら踊る舞踊で、中村屋のお家芸とも言われている。「高坏」について勘九郎は、「家の芸といっても過言ではない。祖父・十七代目中村勘三郎が、今残っている演出と振りにしたものですので、中村屋にとって大事な演目です」と説明。「とても華やかな作品で、春を先取りできます。今このご時世、お花見も自由にできないので、（舞台の）桜が満開の中、少しでも舞台を見てお花見気分を味わってもらえれば」と語った。

　また今回、下駄を新調したことを告白。「今までに『高坏』は何回も踊っていますが、父（十八代目中村勘三郎）の下駄を使っていました。やっぱり人それぞれサイズ感があり、今回新調したので、“自分の下駄”の最初のお目見えがこの春暁公演です」と明かした。

「高下駄で踊るのは大変？」の問いに、「僕たちが思うのは、下駄でのタップはオマケ」と返答。「次郎冠者がお酒に酔って、桜の風情やお酒の匂い（が伝わること）を大事にしています。もちろん完璧にできなきゃいけないですが、そこ（タップ）に重点を置いている訳ではなく、次郎冠者が出てきたときに、『お客様に桜が満開になっているように見えるか』がポイントです」と語った。

　四役早替わりに挑戦する七之助は、「早替わりって、エンターテインメント性のすごく高い歌舞伎の手法のひとつですが、なかなか生で見たことがない人が多い。踊りも素敵ですし、早替わりも生で見ていただきたくて、この演目を選びました」と説明。「この演目は長いお芝居の最後の段切れの舞踊なので、この踊りだけ見て全てを理解するのは難しいかもしれない。でもパンフレットには（長唄の）歌詞が書いてあるので、歌詞も読みながら、完全にエンターテインメントとして見ていただけたら」と語った。