AKB48が手放した「連続ミリオン記録」、2年連続“紅白落選” 大きくかじを切った2021年

AKB48は昨年に続き「第72回NHK紅白歌合戦」の出場がかなわなかった。ネット上では「AKB48はオワコンか」といった議論が沸いているが、筆者は次の大航海への布石になり得ると考えている。前回はブレークの起爆剤となった2人の存在を振り返ったが、今回はAKBの現在地から見えてくる彼女たちの未来を考えてみたいと思う。【後編】

現在のAKB48は「実力派中堅」の宝庫【写真:舛元清香】
現在のAKB48は「実力派中堅」の宝庫【写真:舛元清香】

AKB48は20代中盤の「実力派中堅」の宝庫

 AKB48は昨年に続き「第72回NHK紅白歌合戦」の出場がかなわなかった。ネット上では「AKB48はオワコンか」といった議論が沸いているが、筆者は次の大航海への布石になり得ると考えている。前回はブレークの起爆剤となった2人の存在を振り返ったが、今回はAKBの現在地から見えてくる彼女たちの未来を考えてみたいと思う。【後編】(文=“you-me”成瀬英樹)

 2021年12月で劇場デビューから16周年を迎えたAKB48。その長い歴史の中で皆さんは代表曲といえば何を思い浮かべるだろう? 初のレコード大賞受賞曲「フライングゲット」、キュートな魅力を振りまいた「ポニーテールとシュシュ」、キャッチーなダンスで日本のみならずアジアでも大ヒットになった「恋するフォーチュンクッキー」、NHK連続テレビ小説「あさが来た」の主題歌として大ヒットした「365日の紙飛行機」も外せないだろう。

 そこで思い出して欲しいのがそれぞれの楽曲の顔であるセンターのメンバーである。絶対的センターである前田敦子卒業後の「恋するフォーチュンクッキー」のセンターはHKT48に移籍していた指原莉乃であり、「365日の紙飛行機」のセンターはNMB48の山本彩であった。つまりAKB48名義の国民的ヒット曲でも、センターが「AKB本家のメンバー」ではなかった。ここに今につながる彼女たちの小さなジレンマがあったとも言えるのではないだろうか。

 さて、今年のAKB48である。紅白は落選したものの、この年末にかけてAKB48は精力的な活動を続けている。NHK「うたコン」やテレビ朝日系「ミュージックステーション」などいくつもの音楽番組で立て続けに最新曲「根も葉もRumor」を披露した。

 この「根も葉もRumor」でAKB48は思い切った方向にかじを切った。表題曲をテレビなどのメディアで披露する「メディア選抜メンバー」の選出を「本家AKB48メンバー」のみで行ったのだ。

 AKB48の表題シングルにおける選抜メンバーは、08年の「大声ダイヤモンド」で松井珠理奈(SKE48)をダブルセンターに大抜てきして以来ずっと「全48グループ」のオールスター選抜方式が取られていた。(10年、AKBメンバーがじゃんけんで選抜を決めた「チャンスの順番」は除く)

 その珠理奈を筆頭に、NMB48の山本やHKT48に移った指原など、それぞれが所属グループの中心メンバーであると同時にAKB48楽曲の選抜の常連でもあり、またそれら他グループのメンバーたちがAKB48の楽曲の顔であるセンターを務めることも珍しくなかったことは前述の通りだ。

 この選抜方式がAKB48の栄光を形作ってきた。常に全国の48グループの精鋭が集い「AKB48ブランド」を守ってきたと言える。しかしその反面「本家AKB若手メンバー」のメディア露出が増えにくい状況であったことも事実であろう。それによって世代交代がスムーズに行われなかった面もあるかもしれない。

 あふれんばかりのポテンシャルを持ち、劇場では人気を博すAKB本家メンバーも、他グループの選抜常連枠が存在する限り、なかなか大きなチャンスをつかむことができない。メディアを通じて大衆へのアピールができる「選抜メンバー」に座ることのできる椅子の数は決まっているからだ。

 現在のAKB48は結果的に、世代の谷間に入り込んでしまった20代中盤の「実力派中堅」の宝庫になっている。筆者が思いつくだけでも、岡田奈々(24)、村山彩希(24)、向井地美音(23)、岡部麟(25)らのポテンシャルはいつ国民的スターになってもおかしくないほどであるし、小栗有以(20)や山内瑞葵(20)など表題曲センターを経験した若手達もいる。

「IZ*ONE」のメンバーとして活躍した本田仁美(20)も帰ってきたし、柏木由紀(30)の輝きはいつまでも変わらない。楽しみな若手や頼もしいベテランメンバーたちの名前を挙げていくだけで、まったくもって枚挙にいとまがないのだ。

次のページへ (2/3) 「根も葉もRumor」は「本家AKBメンバー」のみの選抜
1 2 3
あなたの“気になる”を教えてください