2021年ブームの象徴「シン・エヴァ」 新たな若者ファン取り込む“果てしない魅力”とは
2021年のトレンドを振り返って間違いなくブームをもたらしたのが、興行収入102億円超を記録した映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(庵野秀明総監督)だろう。1995年のテレビシリーズ放送から始まった「新世紀エヴァンゲリオン」の一連のシリーズは大きな“区切り”を迎えた。また新たな世代に語り継がれる、エヴァの果てしない魅力を感じる1年でもあった。
エヴァファン“今年の1曲”は松任谷由実の「VOYAGER~日付のない墓標~」
2021年のトレンドを振り返って間違いなくブームをもたらしたのが、興行収入102億円超を記録した映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(庵野秀明総監督)だろう。1995年のテレビシリーズ放送から始まった「新世紀エヴァンゲリオン」の一連のシリーズは大きな“区切り”を迎えた。また新たな世代に語り継がれる、エヴァの果てしない魅力を感じる1年でもあった。(文=吉原知也)
「1992年から企画をやっているので30年近く関わっている。自分の人生の半分を費やした作品。終わったというのは感無量」
今年7月、東京・新宿バルト9で行われたシン・エヴァの舞台あいさつで、61歳の庵野監督が語った言葉が強く印象に残っている。MCからの「あなたにとってのエヴァ」との問い。いちファンとして念願のエヴァの取材に参加できること自体が筆者にとって感無量だったが、庵野監督の口から「終わり」という言葉を聞き、グッとこみ上げるものがあった。それは、寂しさに近いものだった。「終わってほしくないよ」と心の中でつぶやいた。
30代中盤の筆者はそれこそ、14歳の碇シンジら劇中の登場キャラクターと同じ年代である中学生のころにファンになった1人だ。エヴァとともに人格形成を含めて成長してきたと言ってもいい。
陰鬱(いんうつ)ながらも、「必死に生きること」を教えてくれるような、不思議な世界観にのめり込んだ。2007年から再始動した「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ。「:序」公開時に大学生だった筆者は「また楽しませてもらえそう。どんな物語が待っているのだろう」と小躍りした。そこから新劇場版は「:破」(09年)、「:Q」(12年)と公開。筆者は社会人になって記者生活を送るようになり、社会の荒波にもまれる中で、エヴァの世界観や、クセの強い登場キャラたちに人生を投影させるようになった。
この話題になるとキリがないのだが、個人的にエヴァの大きなテーマの1つは「人と人は分かり合えるのか」だと考えている。それに、シン・エヴァは、あくまで個人の解釈だが、どんなに厳しい状況でも希望を信じることの大切さ、仲間がいることのありがたさを示してくれたと思っている。とりわけ、もう1人の主人公と言える葛城ミサトの描写には涙を禁じ得ない。歳月を重ねて“大人になった”エヴァから、また大事なことを教えてもらった。