井上公造はなぜ重宝されたのか 付き合い30年の記者が見た時代への対応力と人間力

芸能リポーターの井上公造氏(64)が、今月16日に自身のYouTubeチャンネルを更新し、2022年3月いっぱいで東京・大阪・名古屋・福岡の全レギュラー9番組を降板することを明らかにした。「芸能リポーターからの卒業」であり、今後は肩書を持たずに「裏方」での仕事を軸に活動していくという。約30年の付き合いになる記者が、井上氏から改めて話を聞き、その生きざまを解説した。

芸能リポーターの井上公造氏
芸能リポーターの井上公造氏

来年3月いっぱいでのレギュラー9番組からの降板をYouTubeで発表

 芸能リポーターの井上公造氏(64)が、今月16日に自身のYouTubeチャンネルを更新し、2022年3月いっぱいで東京・大阪・名古屋・福岡の全レギュラー9番組を降板することを明らかにした。「芸能リポーターからの卒業」であり、今後は肩書を持たずに「裏方」での仕事を軸に活動していくという。約30年の付き合いになる記者が、井上氏から改めて話を聞き、その生きざまを解説した。(文・柳田通斉)

 井上氏の決断を知り、あの時のつぶやきを思い出した。「僕もこのまま芸能リポーターを続けていくかどうか分からないですね」。私は井上氏が、かつて新聞記者だったこともあり、「芸能以外のことも含めて書く仕事も考えているのかな」と思っていた。だが、そうではなかった。大きな理由は「体調の問題」。約7年前から自律神経のバランスを崩し、本番中のめまいや下半身の冷えなどを感じ始めたという。私がつぶやきを耳にしたのも、ちょうどその頃だ。

 芸能リポーター歴35年の井上氏は、第一線を走り続けた唯一無二の存在だ。新聞記者から転じて約7年は、張り込み、直撃取材をいとわずに数々のスクープをものにしていた。テレビ局もその成果を電波に乗せた。だが、95年のオウム真理教事件を境に各ワイドショーが芸能ニュースを扱う頻度を減らし、芸能人のプライバシーに踏み込むスクープは「不必要」とされた。この時点で淘汰されたリポーターは少なくないが、井上氏は週刊誌、新聞が報じたニュースの裏側を伝え、独自情報も付け加えるなどし、存在感を示し続けた。

 と同時に悩みや不安を抱えるタレントらと向き合い、信頼関係を築いていた。そして、「調整力」を駆使した新たなスクープ取得法を見出した。代表例が、2014年10月23日、日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」で実現した「矢口真里 生告白」だった。矢口は自身で起こした男性問題をきっかけに約1年5か月、地上波のテレビ番組から離れていたが、所属事務所、本人に生出演を持ち掛け、説得し、番組側にもその舞台を作ることを了承させた。そして、矢口は緊張しながらも、離婚を決めた理由、交際中の恋人のことを告白。番組は高視聴率をマークし、矢口が仕事に復帰する足掛かりとなった。

 井上氏は当時のことを振り返り、「実現までには約5か月かかりました。ただ、矢口さんのような才能を持ったタレントが、あまりにも長く画面から消えるのは良くない。セカンドチャンスを与えるべきと思っていました。もちろん、私がお世話になっている番組に貢献したいという思いもありました」と明かした。

 このスクープを目の当たりにし、私は「井上公造にしかできない仕事」と感じた。その後、芸能人がプライベートを話す会見は激減したが、井上氏は独自の取材網を駆使し、レギュラー番組であらゆる情報を解説。真相に迫りながら、常に「伝えられる側」の立場も考慮してきた。

次のページへ (2/3) 今後についても言及「1つはコンサル的な仕事をやりたい」
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