流通のプロが語るマスク不足解消法と「チャイナプラスワン」中国産依存からの脱却
中国・湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大の問題は、日本国内の流通・物流の経済面に加え、マスク不足など日常生活にも大きな影響を及ぼしている。日本社会はどう対応するべきなのか。ENCOUNT編集部では、流通アナリストの渡辺広明氏に聞いた。
流通アナリスト渡辺広明氏、マスク不足解消のための増産対応は「政府がどう差配するかが重要だ」
中国・湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大の問題は、日本国内の流通・物流の経済面に加え、マスク不足など日常生活にも大きな影響を及ぼしている。日本社会はどう対応するべきなのか。ENCOUNT編集部では、流通アナリストの渡辺広明氏に聞いた。
全国的にマスクが品薄になっているマスク不足について、買い占めや転売が社会問題化している。渡辺氏は「怖くなってマスクを買ってしまう。新型コロナウイルスのワクチンがない以上、恐怖感を覚えてしまうのは仕方ない。それに、高額転売が目的の“転売ヤー”が出てきているのも、不足の原因の一つだ」と現状を説明する。「この状況でも、冷静に考えて行動しないといけない。重要なのは、困っている人たちやほかの病気にかかっている人、お年寄り、医療機関に適切に行き渡るようにすることだ」と話す。
一方で、安倍晋三首相はマスクの増産支援について表明した。渡辺氏は「マスクを適切な人に対して適切に配布することが求められる。政府がどう差配するかが重要だ」と指摘する。今夏には東京五輪・パラリンピックも控えており、「世界で一番、世界各国の人たちが集まる機会になる。世界の人たちを迎えることになるので、今ここでしっかりと取り組まないといけない」と語った。
経済・流通面でも影響が広がっている。機械工業分野では中国から部品・材料が日本に入らない現状があり、生産を中国に頼っているアパレル業界は春物の新商品に影響が出る可能性があるという。それに、100円ショップなど小売業への影響も懸念される。マスクに加え、消毒液のポンプのノズル部分、除菌シート、割り箸、ビニール傘といった「使い捨ての便利なグッズ」は中国産のものが多く、「低コスト・高クオリティーは中国の存在があるから、実現できている」という。渡辺氏は「経済面で中国に依存している側面もあり、チャイナプラスワン、別の国の生産拠点を確保していくことが大事だ」と説く。
ここで渡辺氏は、消費社会の中で築かれてきた価値観についても言及する。「なんでも使い捨てはいかがなものか。なんでもいつでも手に入るという生活スタイルが日本に広がり過ぎており、改めていくこともエコロジーの観点からも大事ではないか。日本社会は人口減を迎えていく中で、便利ではないことにも慣れていく必要がある」と強調した。
□渡辺広明(わたなべ・ひろあき)、静岡県浜松市出身、東洋大学法学部経営法学科卒業。ローソンで店長・スーパーバイザー・バイヤーとして22年間勤務し、約730品の商品開発にも携わる。現在は、株式会社やらまいかマーケティング代表取締役社長。報道番組「Live News α」(フジテレビ)などのコメンテーターを始め多様なメディアで活躍し、講演活動も好評。2020年1月に「コンビニが日本から消えたなら」(KKベストセラーズ)を上梓した。現在も月1回、実際のコンビニ店舗でレジや品出し担当として従事している。
〇…コンビニエンスストアの経営論に詳しい渡辺氏は日本で進化を遂げたコンビニについて、「世界最高の小売業。日本の豊かで便利の象徴」と表現する。あらゆる立場、年齢の人たちが来店することに加え、食品ロスやレジ袋といった環境・エコ問題や労働問題が深く関わっており、「コンビニは日本の縮図。コンビニを見れば、マーケットが見えてくる」と指摘。これからはセルフレジの導入、AI発注による省力化、省人化を進められるかがポイントになるといい、「世の中を変えることができるのもコンビニ」としている。