「打った、打たないがいじめに発展しないか」 ワクチン低年齢化で学校現場が抱える懸念
今月10日、米製薬大手のファイザー社とドイツのビオンテック社の2社が国内において5~11歳を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種を承認するよう、厚生労働省に申請。海外ではこの年齢層を対象とした接種が既に始まっており、現在は接種対象が12歳以上となっている国内でも、接種年齢引き下げの動きが加速している。認可となれば今後はさらに若い世代にもワクチン接種が進んでいくが、子どもへの接種をめぐっては、保護者のみならず学校現場でも戸惑いの声が上がっている。
ファイザーら2社が5~11歳を対象としたワクチン接種承認を厚生労働省に申請
今月10日、米製薬大手のファイザー社とドイツのビオンテック社の2社が国内において5~11歳を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種を承認するよう、厚生労働省に申請。海外ではこの年齢層を対象とした接種が既に始まっており、現在は接種対象が12歳以上となっている国内でも、接種年齢引き下げの動きが加速している。認可となれば今後はさらに若い世代にもワクチン接種が進んでいくが、子どもへの接種をめぐっては、保護者のみならず学校現場でも戸惑いの声が上がっている。
「すでに1回以上接種してる子はクラスの2割くらいでしょうか。受験を控えた3年生だともうちょっと接種率が高い。もちろんご家庭ごとの考えがありますし、学校からは推奨も強制もしませんが、生徒のプライバシーへの配慮にはかなり気を遣っています」
こう語るのは東北地方のある中学校教諭だ。実際に今年の中総体の時期には部内から感染者が出てしまい、部全体が出場停止に。他の生徒や保護者からの批判が感染した生徒に向かないよう、相当気を揉んだという。
「大人でさえ『ワクハラ』が問題になる世の中。とはいえ、接種日当日や翌日はインフルエンザなどと同じで欠席のつかない出校停止扱いとなるので、生徒同士でも何となく誰が打ったかは分かってしまう。友達同士の『打った』『打たない』の話まで禁止するわけにもいきませんし、ひょんなことからいじめに発展しないか、かなり注意深く観察しています」(前出の中学校教諭)
生徒の年齢層が低い小学校では、こういった問題に対する懸念はさらに強い。都内のある小学校教諭は「今のところそういった問題はない」と前置きしつつも、広がるワクチンパスポートの動きに対し、課外活動の影響を心配する。
「修学旅行は今年は感染対策をした上で関東の観光地に行きましたが、仮に施設側からワクチン接種を条件に受け入れを断られたら断念せざるを得ないのでは。うちの自治体は市区町村単位で修学旅行の時期と行き先が決まっていて、他校と合同で一斉に行くので、予算の都合や旅行会社との関係もあって、一校だけ別のところにするということもできない。ワクチンを打った子だけでというわけにもいきませんし、そうなると最悪中止せざるを得ない。打った子が『打たないやつのせいで』と考えることは仕方ありませんし、こういった動きが広がっていくのは疑問です」(都内の小学校教諭)
厚労省の発表では、ワクチン接種後の副反応は大人では若年層で頻度が高いと報告されており、子どもに接種した場合も接種部位の痛みや発熱、からだのだるさ、頭痛などは一定の頻度で出現することが想定される。一方で国内の10歳未満の死亡者はおらず、臨床試験の一部が終わっていないなか保護者からは将来の影響を危惧する声や接種をためらう動きもある。大人世代とは異なる接種事情に、教育現場も頭を悩ませている。