「口がいだてん」 豪快な主人公で劇的変化 阿部サダヲが醸し出す第二部の世界観とは…
NHK大河ドラマ「いだてん」は、6月30日放送の第25回からいよいよ第二部がスタートする。金栗四三を演じた中村勘九郎(37)から主人公の“たすき”を受け取るのは、俳優の阿部サダヲ。新聞記者、五輪の水泳総監督として活躍し、1964年東京五輪の招致に尽力した田畑政治(たばた・まさじ)を演じる。
阿部サダヲ・インタビュー 五輪水泳総監督や1964年東京五輪招致キーマンの田畑政治を演じる
NHK大河ドラマ「いだてん」は、6月30日放送の第25回からいよいよ第二部がスタートする。金栗四三を演じた中村勘九郎(37)から主人公の“たすき”を受け取るのは、俳優の阿部サダヲ。新聞記者、五輪の水泳総監督として活躍し、1964年東京五輪の招致に尽力した田畑政治(たばた・まさじ)を演じる。バイタリティーに満ちた田畑によって、時代が昭和へと移るいだてんの世界観はどう変わっていくのか。役作りや意気込みを聞いた。
――田畑のまくしたてるようなしゃべり方が印象的です。
「台本に、嘉納治五郎(役所広司)が『彼は口がいだてんだな』というセリフがあって、そうじゃなきゃいけないんだろうなと思いました。史実を聞くと、何を言っているのか分からない人だったらしいんです。ギリギリのところまで行けるといいなと思って頑張るのですけど、録音部のスタッフから『何を言っているか分からない』と言われます。難しいところですけど、考えるより先に言葉が出るように見えるようやっています。後半からは落ち着くようになります」
――せっかちな性格の役作りにどう取り組んでいますか。
「歩くのが速いし、文字を書く時は殴り書き。自分で書いた字も読めなかったという史実を聞いているので、そう演じています」
――動作に関してはどうですか。
「いだてんは長回しの撮影が多い。例えばたばこを逆に吸ってしまうシーン。このタイミングでたばこに火をつけて逆にして『熱い』と言う、一連の動きがなかなか難しいのです。当時は両切りたばこで、しかもマッチを使います。宮藤(官九郎)さんの台本にはそんな速度では書いてません。短い時間で動きを収めないといけない。NHKは小道具がしっかりしていて、当時は細いマッチで片側にしかやすりが付いていないんです。どっちか分からなくなるんですよ。難しいけど挑戦するのが楽しい。ある種の競技みたいな感覚です。アスリートみたいな気持ちでやっているときはありますね」
――五輪招致活動のキーパーソンでもあります。役柄のこだわりや難しさはどんなことですか。
「1932年ロサンゼルス五輪ぐらいまではお祭りのような回が続きます。田畑のおしゃべりもすごいですし、上の人にも歯向かっていく。新聞社の政治部にいるのにあまり政治家のことを知らなかったりする。強い人だなと思います。しかし、五・一五事件、二・二六事件が起こり、戦争に向かっていく中で次第に複雑な心情を持つようになります。本当にこの国に五輪を呼んでいいのか、と。どう演じようかという部分は難しいです。役所さんが演じている治五郎さんは近いところもあるので参考にしています」
――嘉納治五郎と似ているところは。
「考えたり話していることは一緒で、『こんなときこそ、五輪をやるんだ』という言葉は似ています。ただ、治五郎さんは手ぶらでいく、気持ちだけでいくというイメージ。そこは違います。田畑は理詰めで納得させてからいくパターンが多いです」
――金栗四三との関わり合いについてです。第25回放送では、パリ五輪報告会でいきなりケンカをするシーンがあります。
「いきなりですからね。台本を読んだ時にいきなりこんなことを言うんだ、と思いました。でも田畑は金栗さんを尊敬しているところもあるのですよ。だいぶ先になりますが、金栗さんとは1940年東京五輪の開催が中止になる際に、五輪とはどういうものか、対等に話をするシーンがあります。そこでがっつりお芝居をすることになります」
――日本水泳界のスター高石勝男を演じた斎藤工らとの共演。大河ドラマの主役として心がけていることはありますか。
「『いだてん』というジャージーを作りました。勘九郎さんがTシャツを作ったと聞いたので(笑)」
――第一部から変わるところはどんなところですか。
「まず水泳を通して見ていくようになることが違いですね。みなさんの知っているような五輪の名シーンが登場します。(1936年ベルリン五輪の)『前畑、ガンバレ』のラジオ実況のシーンも出てきます」