仲村トオル、「棒読み」との映画批評に「監督の狙いを忠実に再現できたんだ」
俳優の仲村トオル(56)が主演を務めた映画「愛のまなざしを」(11月12日公開、万田邦敏監督)がまもなく公開される。ラブサスペンスの鬼才、万田監督とは20年来のつきあいで、3度目のタッグ。仲村が、キャリア36年の中でも「衝撃的だった」という独特な演出法、コロナ禍を経験して感じたことなどを語った。
映画「愛のまなざしを」で万田監督と3度目タッグ「感情や意味についてまったく語らない」
俳優の仲村トオル(56)が主演を務めた映画「愛のまなざしを」(11月12日公開、万田邦敏監督)がまもなく公開される。ラブサスペンスの鬼才、万田監督とは20年来のつきあいで、3度目のタッグ。仲村が、キャリア36年の中でも「衝撃的だった」という独特な演出法、コロナ禍を経験して感じたことなどを語った。(取材・文=平辻哲也)
「ビー・バップ・ハイスクール」「あぶない刑事」「チーム・バチスタ」シリーズといった娯楽作の印象が強い一方、大人のドラマにも定評のある仲村。その原点は約20年前の万田監督との出会いだったのかもしれない。
万田監督作品で仲村がタッグを組むのは、公務員(森口瑤子)の恋の相手となるクールな実業家を演じた「UnNloved」(02)、物語のキーマンである国選弁護人役を演じ、第23回高崎映画祭主演男優賞を受賞した「接吻」(07)に続き3度目。万田監督の演出は「本当に衝撃的、僕にとっては革命的でしたね」と振り返る。
「それまでは演じる役の気持ちや感情が大切という演出を数多く体験してきましたが、万田監督は、感情や意味についてまったく語らない。『その状態から3歩歩いてください』『左から振り返ってください』と言われるだけ。表に現れるものさえあれば、その役の中にあるもの、すなわち役の内面も伝わる、というような演出方法なんです。最初は戸惑いましたけど、自分を操り人形化して、万田監督が指示する動きをなるべく忠実に再現することによって、新しい自分を見ることができた気がするんです」
「UNloved」の映画評の中で、今でもはっきり覚えている批評がある。「僕のセリフの言い方を『丸太で人を殴り続けるような棒読み』と書いてあったんですが、監督の指示どおりだ、とうれしく感じました。監督の狙いを忠実に再現できたんだ、というか」。結果、「UNloved」はカンヌ国際映画祭「批評家週間」に出品され、キリスト教関係者選定の「エキュメニック新人賞」と仏鉄道員による「レイル・ドール賞」に輝いた。
最新作「愛のまなざしを」は、精神科医・貴志(仲村)が、美しい患者・綾子(杉野希妃)と恋し、残された一人息子と確執し、今も忘れられない亡き妻・薫(中村ゆり)との思い出の間で葛藤し、精神をかき乱されていくという愛憎サスペンス。その苦悩する姿は、クールな二枚目とは、かけ離れた役がらだ。