【電波生活】路線バス番組のハードな舞台裏 テレ東「旅番組の意識なし。サバイバル」
テレビやラジオなどの注目番組の魅力や舞台裏を探る企画。今回はテレビ東京のローカル路線バスの番組だ。太川陽介、蛭子能収のコンビで2007年に「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」がスタートし、その後「バスVS鉄道乗り継ぎ旅」など、さまざまな企画が視聴者を楽しませている。ネットを使わず現地の時刻表などをもとに路線バスで目的地を目指す紀行番組だが、制作陣はそうは思っていないという。テレビ東京のローカル路線バスの企画を担当する木村健作プロデューサーに話を聞いた。
新型コロナ収束後、テレ東の担当者が目指すバス旅企画「海外でやってみたい」
テレビ東京のローカル路線バスの番組は、太川陽介、蛭子能収のコンビで2007年に「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」がスタートし、その後「バスVS鉄道乗り継ぎ旅」など、さまざまな企画が視聴者を楽しませている。ネットを使わず現地の時刻表などをもとに路線バスで目的地を目指す紀行番組だが、制作陣はそうは思っていないという。テレビ東京のローカル路線バスの企画を担当する木村健作プロデューサーに話を聞いた。(取材・文=中野由喜)
「旅のルートは毎回、スタッフ全員で持ち寄って考え、面白そうなスポット、途中の景色がいい所などの組み合わせを考慮して選んでいます。1回決めたらシミュレーションを全員で行い、慎重に吟味します。テレビなので余裕で目的地に到着されても厳しいし、シミュレーション上はギリギリで到着する形にしています。まず地図上で模範ルートを作り、その後、スタッフが現地に行き、机上の空論ではないことを確認するため実際に路線バスを乗り継いでルートを組み立てます。現地ではバス停がないとか新たなルートの発見もあります」
スタッフのロケでの苦労、プレッシャーは、計り知れない。
「綱渡りです。実際、ロケ中に出演者がこちらのシミュレーションしたルートと全然違う方に行ってしまうことが、ほとんどです。ドキドキします。でも、それも運命。そのまま放送しています。よく旅番組と言われますが、スタッフはその言葉に違和感を持つと思います。言うならドキュメンタリーです。結果は終わるまで分からないですから」
スタッフの苦労はほかにもある。
「出演者の宿泊などの心配もありますが、スタッフの車中泊もレアですがあります。食事は店では絶対に食べられないので、おにぎりや非常食を携帯してバスの待ち時間などを利用して食べています。出演者が歩いて移動する際は、重いカメラなどの機材を担いでいます。携帯用のトイレの用意も。スタッフに旅番組の意識はないです。サバイバルです」
今は「陣取り合戦」「ぐるり一周対決旅」「路線バスで鬼ごっこ」などさまざまな路線バスの企画が登場している。
「2019年の『太川蛭子の旅バラ』で蛭子さんが高齢となり歩くのが厳しい、となったとき、タクシーを1万円分使えるようにしました。それがプラスにはたらき、今までにない、いろいろなルートが日本全国に広がりました。それがきっかけで、太川さんと話し、鉄道も面白そうとなり、バスVS鉄道が生まれ、いろいろ応用企画が誕生するようになりました」
今後も多様な企画が誕生していくのか。
「増やしたいです。同時に一つ一つの企画を大切にしながらやっていきたい。もちろん路線バスが基軸。これはテレビ東京の財産ですので。昔のバス旅は『ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z』がありますから」
バス旅と言えば太川陽介。バス旅のプロとも言える太川の現場の様子も聞いてみた。
「あまりにも勝負に集中しすぎて、テレビなのに全くしゃべらないことがあります。真剣に勝ちにいっています。あとは病院や大型スーパーに行けば何とかなるというのは経験がないと出ないアイデア。もう1つ、ぜひお伝えしたいのは優しさ。ロケが終わった後、技術スタッフらが片付け終わるまで帰らずに見守っていて、終わったら『お疲れさまでした』と言って帰ります。チームという意識を強く感じますね」
ネット時代にネット使用禁止ルール。番組が人気を得ている要因の一つでもあるようだ。
「スマホを禁止にすることで聞き込みをして地元の人との会話が生まれ、アナログだからこその演出が可能になります。普通の人はこうした旅はしないでしょうから、疑似体験的なゲームをしているかのように感じてもらえているかもしれません」
最後に今後の目標を聞いた。
「若い年齢層にも見てもらいたい。家族で見る番組にしたいです。バス旅の可能性をもっと広げたい。今は新型コロナウイルス禍ですが、いつか海外でバス旅をやってみたいです」