タイ・テコンドー女子金メダルで報奨金1億円超えか 韓国人監督はタイへの帰化申請中
東京五輪・女子テコンドー49キロ級タイ代表のパニパック・ウォンパッタナキット(愛称・テニス)選手が、タイ人として最初の金メダルを獲得し、凱旋帰国を果たした。地元タイではいまだに金メダル獲得の興奮と熱気が渦巻いており、金メダルを母国に持ち帰ったパニパック選手への称賛の声が止まらない。
日本のテコンドー金メダル報奨金はJOCから500万円、競技団体から1000万円
東京五輪・女子テコンドー49キロ級タイ代表のパニパック・ウォンパッタナキット(愛称・テニス)選手が、タイ人として最初の金メダルを獲得し、凱旋帰国を果たした。地元タイではいまだに金メダル獲得の興奮と熱気が渦巻いており、金メダルを母国に持ち帰ったパニパック選手への称賛の声が止まらない。
今回の金メダル獲得で注目を集めているのが、破格の報奨金だ。2016年のリオ大会では銅メダルだったパニパック選手。「バンコクポスト」(英語電子版)によると、金メダルに輝いた今回は、タイ政府の国立スポーツ振興基金から一括払いなら1000万バーツ(約3340万円)、分割払いなら1200万バーツ(約4000万円)がパニパック選手とテコンドーチームに支給される。さらにその他のスポンサー、各種団体からの報奨金も加わるため、その額はさらに膨れ上がるという。日本の大学に留学経験のあるバンコク在住の20代タイ人男性に国際電話を入れてみた。
――東京五輪で金メダルに輝いたパニパック選手。バンコクの様子はどうですか?
「タイではここ1週間ほどコロナ感染者数が連日1万人を超えていて7月31日は1万8000人を超えています。そんななか、タイの人々は外出を自粛して自宅のテレビで東京五輪の中継を見ているので、関心度は非常に高いと思います。金メダルがかかったパニパック選手の試合は残り数秒からの逆転劇だったため、多くのタイ人がそのドラマチックな展開に興奮しましたし、私もうれしくて思わず踊ってしまいました(笑)」
――とても感動的な試合でしたね。
「試合後も興奮が続き、タイのツイッターでトレンド1位、試合に関するツイートは400万を超えていました。テコンドー金メダルに話題が集中しタイ全土が熱気に包まれましたね。タイは1996年のアトランタ大会で初めてボクシングで金メダルを獲得して以来、ボクシングで4回、重量挙げで5回、計9回金メダルを獲得していますが、テコンドーの金メダルは今回が初めてです。もともとムエタイの人気が特に地方では根強いですが、テコンドーも最近人気を集めています。バンコク市内でもテコンドーの道場をあちこちで見るようになりました」
――ところで、パニパック選手とテコンドーチームには破格の報奨金が支給されるようですね。
「政府とその他の団体からの報奨金を合わせると計2000万バーツ(約6680万円)という報道もありますが、これだけでは収まらないと思います。96年にボクシングで金メダルを獲得した際は計4000万バーツ(1億3360万円)から5000万バーツ(1億6700万円)が支給されたといいます。バンコクのサラリーマンの平均年収が約100万円であることと比べると破格の金額ですが、タイ国民は、これが高過ぎる金額とは思っていません。なにしろ金メダルに輝いた国民的ヒーローですから。どこかに寄付をすべき、と言った圧力や声もあまり聞きません」(※1)
――タイ・テコンドーチームのチェ・ヨンソク監督は韓国からタイに来て約20年も指導にあたってきたそうですね。
「パニパック選手がニュースに出る際、ほぼ毎回チェ監督の姿も紹介されますし、チェ監督の指導のおかげだと感謝しています。韓国から来た監督といってもタイ人は熱く支持しています。なぜなら、タイではいまK-POPが大人気で、例えばBLACKPINKのタイ人メンバー・LISAがとりわけすごい人気を集めていて、韓国カルチャーへの関心が高いといえます。しかも、チェ監督は『タイ人になりたい』といって現在、タイへの帰化を申請しています。こうしたことからもタイ人から好感を持たれています」
――パニパック選手は早くも2024年のパリ五輪への意欲を語っています。
「タイ政府は金メダリストに輝いたパニパック選手を“スポーツ観光大使”に任命しました。コロナが1日も早く終息することを願うとともに、パリ五輪でもぜひ金メダルを獲得してタイ国民に勇気と元気を与えてほしいですね」
(※1)日本では選手が五輪競技で入賞すると、JOC(日本オリンピック委員会)から報奨金が支給される。金額は金メダル500万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円。その他、各競技団体からの賞金・報奨金もあり、テコンドーの場合、国際クラブから1000万円が支給される。ただし賞金額は競技種目によって差があり、中には「ゼロ」という競技もある。