ボーカルの死から22年…伝説のバンドを描いた超大作、メンバーが今だから語れる本音

デビュー30周年を迎えたバンド「フィッシュマンズ」の軌跡を追ったドキュメンタリー「映画:フィッシュマンズ」が9日から東京・新宿バルト9ほかで公開された。貴重な過去映像と新旧メンバーのロングインタビューで構成。MVの世界で活躍する手嶋悠貴監督(38)が、長編監督デビュー作となった本作の舞台裏とフィッシュマンズの魅力を語った。

長編監督デビューとなった手嶋悠貴監督【写真:ENCOUNT編集部】
長編監督デビューとなった手嶋悠貴監督【写真:ENCOUNT編集部】

デビュー30周年を迎えたバンドを追った「映画:フィッシュマンズ」手嶋悠貴監督インタビュー

 デビュー30周年を迎えたバンド「フィッシュマンズ」の軌跡を追ったドキュメンタリー「映画:フィッシュマンズ」が9日から東京・新宿バルト9ほかで公開された。貴重な過去映像と新旧メンバーのロングインタビューで構成。MVの世界で活躍する手嶋悠貴監督(38)が、長編監督デビュー作となった本作の舞台裏とフィッシュマンズの魅力を語った。(取材・文=平辻哲也)

 フィッシュマンズは1987年に明治学院大学の音楽サークル・メンバーで結成され、91年4月にシングル「ひこうき」でヴァージン・ジャパンからメジャーデビュー。レゲエなどを基調にロック、ファンク、ヒップホップの要素を混ぜたハイブリッド・サウンドに、佐藤のハイトーンボイスが特徴。プライベートスタジオで制作された世田谷三部作(「空中キャンプ」「LONG SEASON」「宇宙 日本 世田谷」)、ライブ盤「98.12.28 男達の別れ」が国内外で評価された。

 映画はメジャーデビュー、セールスの不調、レコード会社の移籍、相次ぐメンバーの脱退、ほぼ全ての楽曲を手掛けたボーカル、佐藤伸治さんの突然の死、そして現在までを描く172分の大作だ。「東京スカパラダイスオーケストラ」のドラマーとしても活動する現メンバーの茂木欣一を始め、元メンバーらがゆかりの地で秘話や当時の思いを語る。あまりフィッシュマンズを知らない人たちも、引き込まれる内容になっている。

 プロジェクトは2018年から始動し、19年からクラウド・ファンディングサイト「Motion Gallery」で出資を募集し、19年2月のライブ「闘魂2019」のリハーサルから撮影開始。製作と同時に募った出資額は1800万円以上の大反響だった。「最初、30周年は頭になくて、20年の公開を目指していたんですが、製作の遅れやコロナ禍もあって、30周年にターゲットを合わせようとなったんです。ゆっくり向き合う時間ができたことは僕にはよかった」

 手嶋監督はMVの撮影・演出などを手掛けており、ヒップホップ MC「般若」の音楽ドキュメンタリー映画「その男、東京につき」(20年)の撮影監督も務め、本作が長編監督デビュー作となる。

「フィッシュマンズは2000年頃、18歳の時に『ナイトクルージング』(96年のアルバム『空中キャンプ』収録)で知りました。当時僕は、レディオヘッド、ビョーク、シガー・ロスといった海外の音楽を聞いていたのですが、フィッシュマンズの音楽も何処か通づるところがあり、日本の音楽シーンの中では唯一無二の音楽だなと18歳の自分は思いました。ただ、彼らの音楽は人に勧めるよりも、夜、狭い部屋で一人ヘッドホンして聴きたい感じがして、その時は彼らを深堀りすることはなかったんです」

次のページへ (2/4) 「彼らを説明するものがなかったら、彼らのサウンドは途絶えてしまうかもしれない」
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