デスマッチと「ぽんぽん」と私―“ハートに刻むデスマッチ戦士”の熱き思い
「ハートに刻むデスマッチ」を目指す「ぽんぽん戦士」杉浦透が、デスマッチ史に新たな歴史を紡ぐため奮闘している。
2013年から5年以上デスマッチを避け続けていた杉浦
「ハートに刻むデスマッチ」を目指す「ぽんぽん戦士」杉浦透が、デスマッチ史に新たな歴史を紡ぐため奮闘している。
杉浦は2019年10月、FREEDOMSのKFC(KING of FREEDOM WORLD)王座を獲得し1年8か月にわたって保持。ビオレント・ジャックとのV10戦を「葛西純プロデュース興行 東京デスマッチカーニバル2021vol.1」(7月5日、東京・後楽園ホール)に控えて、充実期を迎えているが、新たなデスマッチ戦士像を作り上げようとしている。
現在のデスマッチ界は「狂猿」葛西純、竹田誠志らカミソリやハサミなどを操る狂気系デスマッチ戦士が、話題を集め人気を博している。彼らを尊敬する杉浦は「狂気に満ち満ちた、あの人たちを乗り越えるためには、同じことしてもかなわない」と悟った。
そこで杉浦流デスマッチで、時代のテッペンを狙っている。激しいデスマッチも通常ルールの試合も得意とする宮本裕向やFREEDOMSのドン・佐々木貴らが目標だ。「普通の人間である杉浦透で勝負」するファイト。狂気ではなく、ハートを前面に押し出すデスマッチ戦士。凶器の使用に加えて、華麗な空中弾やひじ爆弾などでもファンを魅了する……。杉浦の熱い思いはファンの支持を集め、今や、デスマッチ界の一角を占めるまでになった。
だが、そのデスマッチロードは決して平たんな道のりではなかった。実はデスマッチから逃げ出したことがある。葛西とのデスマッチで額を8針、縫うケガを負った。ケガはともかく「この人たちには太刀打ちできない」と心が折れてしまったという。
13年から5年以上、デスマッチを避け続けた。その間、デスマッチ戦士たちのイキイキとしたファイト、ファンが熱狂する様子を横から眺めるだけだった。
杉浦が再度、デスマッチに挑むことを決意したきっかけは、娘の誕生だった。「すてきなパパ」「かっこいいパパ」になりたい。そのためには、逃げたままでは話にならない。
まずは攻めの姿勢。そして「娘に頑張るパパを見てほしい。デスマッチで会場を熱狂させているデスマッチ戦士に負けないパパを応援してほしい」と、誕生したばかりの娘の顔をながめながら決断した。
いったん、覚悟を固めたらもうやるしかない。「生きていくために、できることをひたすら、がむしゃらに」突き進んだ。ベルトを葛西から奪い、防衛記録も更新し続けている。とはいえ、なかなか葛西の支持率にはかなわない。追いつき、追い越すためには、葛西と同じことをしていてはダメ。「人間・杉浦透」をより鍛え上げるしかない。
いろいろと考える時間がたっぷりとあったコロナ禍の昨年。ぽんぽん作りに目覚めた。娘のために動物のぽんぽんを本を見ながら作成したところ、大ウケ。しかも自分も楽しさに目覚めてしまった。「小さいのなら2時間、大きいのは6時間ほどあればできる」と自慢のぽんぽんコレクションは増えている。その出来栄えは、思った以上に本格的だ。
タイトルに挑戦してくるレスラーの大きめのぽんぽんを制作し、挑戦者を挑発する喜びも知ってしまった。ぽんぽん作成時に使う手芸用針という新たな凶器も手に入れた。返しがついているので、肌に食い込みダメージを与えることができる。リング上からは想像もつかない表情でぽんぽん作りを楽しむ杉浦。「いつか葛西さんみたいに自伝を出版したいけど、まだエピソードが足りない」と頭をかく。
自伝より先にぽんぽん作りの手芸本が出るのでは? 「アハハ、両方めざしますよ!」とニッコリ笑う杉浦。
明るく楽しく優しく、何ごとにも真っすぐで一生懸命。人間味にあふれ、魅力的だ。
「ハートに刻むデスマッチ戦士」の挑戦は続く。