「ドラゴン桜」が伝えたかったメッセージ 「東大だけが人生じゃない」 私学という選択肢
俳優の阿部寛が主演を務めたTBS系日曜ドラマ「ドラゴン桜」の最終回が27日、15分拡大で放送され、東大受験に失敗した生徒の驚くべき進路先が描かれた。“最強の助っ人”への関心も高まり世帯平均視聴率は20.4%(ビデオリサーチ、関東地区)と前回第9話から一気に5.0ポイントもアップ。今年の全ドラマ1位という好成績をたたき出した。(※この記事にはドラマの内容に関わる記述があります)
最終回の平均世帯視聴率は20・4% 今年の全ドラマ1位の快挙
俳優の阿部寛が主演を務めたTBS系日曜ドラマ「ドラゴン桜」の最終回が27日、15分拡大で放送され、東大受験に失敗した生徒の驚くべき進路先が描かれた。“最強の助っ人”への関心も高まり世帯平均視聴率は20.4%(ビデオリサーチ、関東地区)と前回第9話から一気に5.0ポイントもアップ。今年の全ドラマ1位という好成績をたたき出した。(※この記事にはドラマの内容に関わる記述があります)
元暴走族の弁護士・桜木建二(阿部)の受験指導によって東大専科で勉強する瀬戸輝(高橋海人、King & Prince)、早瀬菜緒(南沙良)、岩崎楓(平手友梨奈)、天野晃一郎(加藤清史郎)、藤井遼(鈴鹿央士)、小杉麻里(志田彩良)、原健太(細田佳央太)の7人は全員が東大現役合格を目標に掲げて大学入学共通テストを受験。27日放送の最終回では東大入試の二次試験を受ける生徒らの真剣なまなざしや思わぬハプニングが描かれた。
そして大注目の合格発表。岩崎、小杉、健太、天野、そして“大逆転劇”として瀬戸が合格。藤井と早瀬は残念ながら不合格だった。結果が出そろった後、東大専科の教室に集まった生徒たち。桜木が早瀬に何か言いかけようとしたところ、早瀬は「みんなには言ってなかったけど、実は私、青学の経営学部、受かってるんだよね。テヘッ」と予想もしない私学受験を明かし、桜木を仰天させたのだった。
実はここからの桜木と早瀬の会話こそが、今回の「ドラゴン桜」が伝えたかった本当のメッセージだったように思える。東大専科の生徒が受けた大学入学共通テストとは、国立、公立、私立の各大学が大学入試センターと協力して同一の期日に同一の試験問題により共同で実施される選抜方法だ。東大だけではなく早稲田大学や青山学院大学も利用している。早瀬はこの共通テストの成績を利用して青学を受験していたというわけだ。
東大合格という専科の目標を裏切ってしまった早瀬。「共通テスト利用の私大への出願とはな…」とつぶやく桜木に「ごめんなさい」とペコリと謝罪するのだが、桜木は予想外の反応を見せる。「何を謝る必要がある。おまえは自分で調べて行動した。自分の人生を人任せにせず、真剣に選んで決めた道だ。堂々と胸張れ!」とエールを送ったのだった。
桜木のこのせりふは意外に聞こえるかもしれない。何が何でも生徒の東大合格が桜木の仕事でもあったからだ。しかし、4月25日放送の第1話を思い返せば、桜木の早瀬へのエールは、実は桜木が胸の中に秘めている真の理想に近いものだったことが分かる。
偏差値32で経営破綻寸前の龍海学園。自由な校風を理想に掲げる理事長・龍野久美子(江口のりこ)は、東大合格者を出すために学園にやって来た桜木と元教え子の弁護士・水野直美(長澤まさみ)と対立する。体育館に集まった全校生徒を前に桜木は「勉強も学校生活もみんな中途半端。やれスマホだ、ゲームだ、毎日ボケ―とした日々を送ってやがる。バーカばっかりだ」と突き放し、「無関心、無気力、甘ったれ、根性無し。そんなおまえらがこのまま何となく世の中に出てみろ。あっという間に薄汚い社会の渦に飲み込まれ、知らず知らずに搾取され、だまされ、カモにされ、こき使われる。一生社会の奴隷となってもがき続け死んでいくんだ!」と罵声を浴びせる。そして最後に「そうならないために一番手っ取り早い方法がある。東大に入ることだ!」とげきを飛ばした。
“薄汚い社会”の典型として描かれていたのが、リゾート開発で利益を得るために学園を売り飛ばそうとする龍野恭二郎前理事長(木場勝己)と政治家への野心を持つ高原教頭(及川光博)、それに瀬戸が姉と切り盛りするラーメン店にまとわりつく悪徳金融業者も含まれるだろう。無関心、無気力、甘ったれ、根性無しのままでいることの“愚かさ”を説くことで、生徒たちに人任せにしない人生を歩んでもらうこと、これが桜木の本心だ。
東大受験には失敗したが、自分の人生を人任せにせず、自分で調べて行動し、自分で進むべき道を選んだ早瀬の行動は、桜木にとって理想に近い。何をやっても長続きしない今どき女子高生の早瀬がこんなにも変わった。それだけでも感動的だ。このように考えてみると、「ドラゴン桜」が視聴者に送りたかったメッセージは、逆説的だが「東大だけが人生ではない」ということ。つまり、自分で自分の人生をつかみ取ることができるのであれば、東大以外の選択肢もある、ということだったのではないだろうか。「ドラゴン桜」は結果的に、すべての大学受験生にエールを送っていたのだ。