リングと酒場で元気をアピール デスマッチ戦士の打倒コロナにかける熱い思い
「通常の髪型に戻した。皆さんにも一日も早く、日常が戻りますように!」。“ブラッド・レインメーカー” アブドーラ・小林が新型コロナウイルス禍からなかなか抜け出せない日本国民に、頭を丸めて熱いエールを送った。
“ブラッド・レインメーカー” アブドーラ・小林
「通常の髪型に戻した。皆さんにも一日も早く、日常が戻りますように!」。
“ブラッド・レインメーカー” アブドーラ・小林が新型コロナウイルス禍からなかなか抜け出せない日本国民に、頭を丸めて熱いエールを送った。
コロナ禍で新たな生活様式を日本中が模索していた2020年4月、小林は毎日のようにそり上げていた頭のお手入れを停止し、髪の毛を伸ばし始めた。東京・表参道の美容院で1万5千円かけてヘアメイク。自称・おしゃれ男に変身し、デスマッチに勤しんできた。
あれから1年2か月。コロナ禍から脱出できないままの日本に、小林が再び立ち上がった。試合で相手に髪の毛の一部を切られたのをきっかけに、以前の様にツルツル頭に戻したのだ。「いつものライフスタイルに戻すには、まだまだ大変ですが、私の頭を見てもらって、コロナ禍以前の生き方を思い出し、少しでも楽しくなっていただければ」と、頭を愛おしそうになでる。
2日に一度、試合があれば毎日、そり上げる髪の毛。同じ丸刈りでも、岡林裕二はそる必要はないのだから小林は大変だ。しかも、慣れるまで衝撃が大きい。ヘッドバットを放った際の、自分のダメージも「こんなに痛かったのか」と驚くほど。髪の毛の役目を痛感し「髪は男の命です」と、自然に口からついて出る。
ヘアスタイルは元に戻したが、飲食業への再チャレンジもスタートさせていた。4月9日、横浜有数の繁華街・長者町に「アブドーラ・小林酒場」(アブ小酒場)をオープン。20人ほど入れるお店で定員10人にするなど、感染拡大対策も整えた。
ただし、いかんせん営業時間は制限され、酒類の提供もままならずとあって、正直ここまでは苦戦は免れなかった。
とはいえ6月21日からは酒類の提供ができるようになった。持ち前の前向き思考、ポジティブシンキングで、小林の攻めが始まった。SNSを活用してアピール。現在は午前11時~午後8時までの営業とあって、昼飲みを推奨。深夜までフル営業が可能となれば「みなさんのたまり場、居場所になれれば」と目標は「だらだらできる店」だ。
もちろんお酒大好きな小林。大相撲出身の225キロ・浜亮太との飲み比べでも負けない。特大ジョッキで生ビールを40杯、それこそだらだらと楽しんだことがある。
「世界一アルコール度数の高い酒」スピルタス(度数96)を常温で、7杯連続で飲み干しても、その場では平気だった。ただ、翌日、道場での練習中に気分が悪くなり、リングを使えなくし迷惑をかけてしまった。それでも「伝説になっている」と笑い飛ばす小林である。
アブ小酒場には、試合があるとき以外は顔を出している。試合当日でも、間に合う場所、時間ならば、終了後に駆け付ける。たとえ小林が不在でも大日本プロレスOBの鈴木勇司代表がいる。
サービス精神旺盛な小林が顔色を変えたことがある。他団体の某人気選手が、女性ファンからの手作りクッキーの差し入れを「食品はもらえない。何が入っているか、分からないからね」と突っ返した。ショックを受けたその女性ファンはそれ以降、その団体はもとよりプロレスから離れてしまったという残念な話を聞いた時だ。
小林と言えばコロナ前に手渡しで栄養ドリンクを差し入れられると「ありがとう! 今飲んじゃう!」とその場で一気飲み。そして「元気が出たよ! 試合も頑張る」と、愛嬌たっぷりに笑った。感激したファンは今でも小林の、大日本プロレスの大ファンだという。
そんな小林の人柄にひかれたお客さんで、お店はきっとにぎわうだろう。傷だらけだが、ニコニコ笑う福々しい顔は、布袋様のようで縁起がいい。
無論、プロレスラーとしてもまだまだ暴れまわる決意だ。大日本プロレスに加え多くの団体に乗り込みたいという。「デスマッチはもちろん、どんなスタイルでも対応できる。顔を売り、お店にも来てほしい。ファイトでもトークでも、プロレスの魅力を伝えたい」と力説。元より明るく陽性の男だ。楽しめること間違いなしだろう。
コロナ禍でままならないが、少しでも前へ進みたいという小林。彼と触れ合うことで勇気と元気をもらえるのは確かだ。