“他人事じゃない”コロナ禍で急増の不動産相談 家賃滞納、騒音、「老後の資金がない」
新型コロナウイルス感染症の流行は飲食業や観光業だけではなく、不動産業界にも大きな影響を与え、物件内見数の減少や物件引き渡しの延期などを引き起こした。賃貸トラブル解決を多数手がけてきた司法書士の太田垣章子さんによると、賃貸トラブルも増え、コロナならではのトラブルも起こっているという。4月にそれらをまとめ「不動産大異変 『在宅時代の住まいと生き方』」(ポプラ社)を出版した太田垣さんに現状を聞いた。
家賃滞納者増加で苦境に陥る人が増加
新型コロナウイルス感染症の流行は飲食業や観光業だけではなく、不動産業界にも大きな影響を与え、物件内見数の減少や物件引き渡しの延期などを引き起こした。賃貸トラブル解決を多数手がけてきた司法書士の太田垣章子さんによると、賃貸トラブルも増え、コロナならではのトラブルも起こっているという。4月にそれらをまとめ「不動産大異変 『在宅時代の住まいと生き方』」(ポプラ社)を出版した太田垣さんに現状を聞いた。(取材・文=中野裕子)
去年の春の1回目の緊急事態宣言のときに家賃滞納が増えました。そして、今回の3回目の緊急事態宣言下でさらに増えていると感じます。特に低所得層の方。年金だけで食べていけずアルバイトをしていた高齢者や、奨学金の返済を抱えている若い人たち……。これまではギリギリ何とかやってきたのに、コロナ不況で仕事を失うなどしてついに生活保護になり、というパターンもあります。家賃は3か月分を滞納するとオーナー側から賃貸契約解除が可能になり、明け渡し訴訟となるとオーナー側の主張がほぼ認められ、借り主は強制退去させられてしまいます。
ですが、無職だと退去後の住まいを見つけるのは非常に難しい。若い人は仕事を見つけやすいので何とかなるのですが、50代以上で失業した人や自営でうまくいっていない人は、新しい仕事先がなかなか見つけられず、非常に厳しいです。勤めていた会社が倒産したり不況で解雇されたり、ということは、その業界自体が沈んでいるということなので、同業他社へ再就職するのは難しい。かといって、異業種へ入っていくにも難しい年齢です。貯金もなく、ギリギリの生活をしていた人は、コロナで仕事を失うと住まいも見つからず、大変厳しい状況に陥っています。
コロナはマイホーム購入者をも困らせている
マイホームを購入している人も安心はできません。ここ数か月間で、私の事務所に「老後の資金がない」という高齢者からの相談が驚くほど増えています。思ったほど退職金が出なかった、子どもの学費が思った以上にかかった、マイホームの修繕費などの維持費が多くかかった、でも住宅ローンがまだ残っている、と。マイホームを売却するかリバースモーゲージ(自宅を担保に老後資金を借りる仕組み)等を検討することになりますが、大手企業に勤務していた方ほど周囲への見栄があり、自宅売却+転居に思い切って踏み切れず泥沼にはまっていきがちです。
賃貸の方の解決策としては、住居確保給付金を申請すること。その知識さえない人や知っていても難しそうに感じて申請していない人がいます。不動産のオーナーや役所、家族、親しい人に相談してほしいと思います。そういう人たちと日頃からコミュニケーションをとって、イザと言うときは「助けて」と言える関係を築いていることが大事だと思いますね。今は、生活保護の申請さえ申請者の急増で受け付けてもらえるまで時間がかかっているのが現状ですから、早めに相談をしてほしいと思います。