「鬼滅の刃」 台湾で大ヒットの理由は成熟した台湾声優陣 妖怪ブームも後押し

「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の全世界累計来場者数が約4135万人、総興行収入が約517億円に上ったことがこのほど製作・配給のアニプレックスから発表された。日本国内の興行収入は約400億円という驚異的な成績だった。

台湾の書店では「鬼滅の刃」の単行本も大ヒット【写真:(C)陳飛豪】
台湾の書店では「鬼滅の刃」の単行本も大ヒット【写真:(C)陳飛豪】

今後は英国、アイルランド、オランダ、トルコ等で公開

「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の全世界累計来場者数が約4135万人、総興行収入が約517億円に上ったことがこのほど製作・配給のアニプレックスから発表された。日本国内の興行収入は約400億円という驚異的な成績だった。

 昨年10月30日には台湾で公開されて大ヒット。それまで現地で歴代1位だった「アナと雪の女王」の興行収入を超えてアニメ映画の歴代最高興収を記録するなど社会現象と化した。アニプレックスの発表によると、台湾・香港・マカオ合わせて興行収入は約29.1億円、動員数は約335万人という。

 台湾では「鬼滅の刃」の公開に合わせて同10月25日から各地でロードランニング大会「全集中マラソン」が開催された。チケットには限定Tシャツ、タトゥーシール、タオルなどが入っているパックが付いており、大勢の市民とコスプレーヤーが集まるなどさながら“鬼滅祭り”といった状態が続いた。

 台湾で「鬼滅の刃」が大ヒットした理由について、台湾のカルチャーに詳しい日中翻訳家の池田リリィ茜藍(チェンラン)さんはこう分析する。

「台湾では2015年前後から妖怪ブームが起きています。その年に台湾で最も有名な都市伝説のひとつを実写化したホラー映画『紅衣小女孩(赤い服の少女)』が公開され大ヒットしました。17年に出版された単行本『妖怪台湾:妖鬼神遊巻』もベストセラーとなり、20年には続編にあたる『妖怪台湾:三百年山海述異記・怪譚奇夢巻』が出版されました。過去300年にわたって台湾各地に伝承されている129篇の妖怪話が紹介されていて面白いです。国立台湾文学館でも『台湾鬼怪文学特別展』が開催されました。そういったブームがすでにあったことと、日本統治時代を経験しただけに大正という時代背景や“鬼退治”に対する共感も高いのです」

 台湾における「鬼滅」大ヒットの背景には台湾の声優の存在も欠かせないという。「『吹き替えを担当した台湾の声優陣が素晴らしい』『日本のオリジナルに負けていない』という声をよく耳にします。例えば、人気キャラクターの我妻善逸は台湾声優界でも知名度の高い江志倫が担当しています。オリジナルのキャラクターの性格がそのまま表現されているだけでなく、翻訳調ではない自然な台湾華語も功を奏している。台湾の声優界もかなり成熟してきた表れでしょうね」

 ちなみに江志倫は「劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ」(台湾のタイトルは「銀魂劇場版 完結篇 永遠的萬事屋」の志村新八役、「僕のヒーローアカデミア」(同「我的英雄学院」)の爆豪勝己役、「秒速5センチメートル 」(同「秒速5公分」)の遠野貴樹役などを担当してきた。台湾では声優のことを「配音員」と呼んでいる。日本のアニメは台湾で大量に消費されており、大人も気軽に映画館に足を運び観賞しているという。「鬼滅」の中国語吹き替え版を担当した主要「配音員」らは現地メディアでも取り上げられておりその活躍にますます注目が集まりそうだ。

 アニプレックスによると、今後は英国、アイルランド、オランダ、トルコ等での公開も予定されており、「『鬼滅の刃』がさらに多くのファンへと広がっていくことが期待される」としている。

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