棚橋、難敵征伐へ 獣神最後のリングに立つ! 新日史上空前のドーム大会展望 (後編)
新日本プロレスが2020年1月4日、5日に「WRESTLE KINGDOM 14 in 東京ドーム」を開催。今回は棚橋弘至VSクリス・ジェリコの一戦とこのドーム大会で引退する獣神サンダー・ライガーの引退試合の見どころを触れてみたい。
棚橋とクリス・ジェリコの一戦にある“重要なテーマ”
新日本プロレスが2020年1月4日、5日に「WRESTLE KINGDOM 14 in 東京ドーム」を開催。今回は棚橋弘至VSクリス・ジェリコの一戦とこのドーム大会で引退する獣神サンダー・ライガーの引退試合の見どころを触れてみたい。
イッテンゴ(1月5日)では、メインのダブル選手権試合の前に棚橋弘至VSクリス・ジェリコのシングルマッチが実現する。これは日米スーパースターによる究極のドリームマッチ。今回の棚橋はあえてイッテンゴに集中、ジェリコとの試合にすべてをぶつけることになる。
両者の遺恨は2019年6月9日大阪大会で発生した。押し潰される形でオカダに3カウントを奪われた怒りのジェリコが、放送席の棚橋を「バーカハーシ!」と挑発したのだ。18年の東京ドームから数えてジェリコが新日本に参戦するのはこれが6度目。戦績こそ2勝3敗と負け越してはいるものの、すべてのカードで世界的注目度を集めている。
今回ジェリコはAEW世界王者としての来日で、試合頻度は18年以降、最高と言っていい状況だ。2冠争いとは対照的に前哨戦が一切組まれない“エース”棚橋だが、12月19日後楽園ではタッグマッチで飯伏と組み内藤&鷹木信悟組から勝利。最後は鷹木のフィニッシュ狙いを切り返し丸め込んだのだが、タイミング、キレ、スピードとも絶妙だった。ここにジェリコを黙らせるヒントがあるのではなかろうか。2冠争いに食い込めなかった悔しさもあるとはいえ、ジェリコを破ればそのニュースはたちまち世界を駆け巡る。
“怒りの獣神”ついにファイナルマッチ! 過去と未来と向き合うその姿を見よ!
東京ドーム2DAYSでは、ジュニアのレジェンド、獣神サンダー・ライガーの引退試合も2日間にわたっておこなわれる。イッテンヨン(1月4日)が引退試合Ⅰ「ライガー&藤波辰爾&ザ・グレート・サスケ&タイガーマスクwithエル・サムライ組VS佐野直喜&大谷晋二郎&高岩竜一&田口隆祐with小林邦昭」、イッテンゴが引退試合Ⅱ「ライガー&佐野直喜with藤原喜明組vs高橋ヒロム&リュウ・リー組」。初日がかつての新日本ジュニアを思い出させるカードなら、2日目はまさに現在進行形の戦いだ。ここで注目されるのが、2日間ともかかわる佐野の存在だろう。
佐野は素顔のライガーと同日デビューの同期である。海外修行で道が分かれると、1989年4月29日、新日本初めての東京ドームでマスクマンの獣神ライガーが初登場。佐野はメキシコ遠征から帰国し、再び相まみえることとなった。だが、佐野が90年4月にSWSに移籍したことで両者のライバル関係は中断。2人が再びリング上で顔を合わせたのが、新日本とUWFインターナショナルの全面対抗戦、95年10月9日東京ドームだった。この試合でライガーは敗れるも、UWFスタイルでは御法度の空中殺法トペ・スイシーダを出させたことでライガーはしてやったり。ライガーは、プロレス観でかつての佐野を引き出すことに成功したのである。それは、佐野の存在なしにライガーはないと考えていたから。そして2009年1月4日東京ドームでも両者は再会。ライガー20周年でタッグを組み、金本浩二&井上亘組と対戦した。団体は分かれてもドームで絡んできたライガーと佐野。これぞ永遠のライバルそのものではないか。だからこそ、ライガーのラストマッチで佐野がいるのは自然な流れ。しかも対戦とタッグの2本立てである。さらに2日目にはヒロム&リーというジュニアの近未来ともいうべきバリバリの選手と対戦する。ここで佐野がどう対処するのかも見どころとなるだろう。本名であり、新日本時代のリングネームで参戦する佐野直喜の出方も見逃せない。
ライガーの介錯をつとめるヒロムは、前日のイッテンヨンでウィル・オスプレイの保持するIWGPジュニアヘビー級王座に挑戦する。クビの負傷で長期欠場をしいられていたヒロムだが、2019年12月19日後楽園で530日ぶりに復帰、ジュニアのカリスマが万全の体調で戻ってきた。復帰戦ではブランクによる試合勘の乱れか敗れたものの、動きそのものはまさに高橋ヒロムのそれだった。オスプレイとのタイトル戦は激闘必至。翌日への責任感がヒロムの王座奪還を後押しするか。とはいえジュニアにとどまらず無差別の争いに積極的に加わってきたオスプレイは2019年の新日本MVP的存在で攻略は至難の業。果たしてヒロムは、どんな形でライガーの前に立つのだろうか。
平成最初のドームで誕生し、令和最初のドームでリングを去る。文字通り平成という時代を駆け抜けてきたライガーの功績はとてつもなく大きい。だからこそ、ライガーは最後の最後まで戦いにこだわった。ヒロム&リーを相手に選び、セレモニーを翌日にしているのがその証拠。「勝ったら引退撤回するかもよ」と対戦相手にプレッシャーまでかけているライガー。たんなる引退試合では終わりそうにない。
ライガーのラストファイトやIWGPダブルタイトルの行方をはじめ、ほかにも好カード目白押しの東京ドーム2DAYS。2020年、新日本は前人未踏の領域に足を踏み入れる!