他人の人生を狂わすデスマッチファイターの禁断の魅力とは?【連載vol.36】

みなさんは誰かに人生を狂わされたことがあるだろうか?

どうだ!? 自信に満ちた葛西純のファイティングポーズ【撮影:柴田惣一】
どうだ!? 自信に満ちた葛西純のファイティングポーズ【撮影:柴田惣一】

毎週金曜午後8時更新「柴田惣一のプロレスワンダーランド」

 みなさんは誰かに人生を狂わされたことがあるだろうか?

 異性に狂わされた? いやいや、そうではなく、いい意味で狂わされたことはあるだろうか?

 誰もが認める「カリスマ・デスマッチファイター」葛西純は何人もの人生を狂わしている。竹田誠志をはじめ「葛西に人生を狂わされた。葛西に憧れてプロレスラーに、デスマッチファイターなった」という選手は、日本にとどまらず世界中にいる。

「プロレスラーに、いい意味で人生を狂わされて自分もレスラーになった」と、後進が振り返るのは、アントニオ猪木、初代タイガーマスクなど、ごく限られた選手だけだ。葛西は間違いなくその1人だろう。

 実際に葛西のファイトは、聖地・後楽園ホールのバルコニーから決死の6メートルダイブを敢行し、蛍光灯で自身の体を自ら切り刻むなど、過激で捨て身の攻撃には度肝を抜かれる。リング上はまさに「狂猿」。何かが乗り移ったような狂った試合。凶器が狂気になり、そして最後は狂喜となる。見る者を震撼させ興奮させ、そして感動させる。

 3・18決戦で全日本プロレス初のデスマッチ、初のワンマッチ興行が東京・新木場ファーストリングで開催された。すべてが異例尽くしだった。

 異様な雰囲気の中、激しい攻防の末、挑戦者・石川修司が王者・葛西を粉砕。GARORA TV王座のベルトを全日本に取り戻したが、葛西は試合後「ちょっと昔に誰かが言ったな。『プロレスラーってもんは笑わせて三流、感動させて二流、見る者の人生を変えてこそ一流だ』ってな。その言葉が正しいのなら、この全日本プロレスの歴史を狂わせた葛西純こそ超一流プロレスラーじゃねーのか。オイ! 全日本プロレス! こんな超一流プロレスラーを、今日負けたくらいで放っとくわけねーよな?」とコメントを残している。

 2019年に、現在は全日本プロレス所属となったTAJIRIがツイッターで「笑わせるのはプロレスで三流、そんなのは学芸会レベル。何かを訴えて泣いてもらうのは二流。一流は、感動させて人生になんかしらの良い影響を与える。人生を変える」と発信したが、TAJIRIとはまた違った意味でインパクトのある言葉だった。

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