映画「漂流ポスト」主演の雪中梨世、「皆さんが震災を風化させないという想いで作った作品」

岩手・陸前高田の山奥に建てられた“漂流ポスト”を題材に、心の復興を描く公開中の短編映画「漂流ポスト」のトークイベントが10日、都内で行われ、主演の雪中梨世と監督・脚本・編集・プロデュースを務めた清水健斗監督が登壇した。

映画「漂流ポスト」トークイベントに登壇した主演の雪中梨世と清水健斗監督【写真: (C) Kento Shimizu】
映画「漂流ポスト」トークイベントに登壇した主演の雪中梨世と清水健斗監督【写真: (C) Kento Shimizu】

主人公が手紙を読むシーンの裏話を披露

 岩手・陸前高田の山奥に建てられた“漂流ポスト”を題材に、心の復興を描く公開中の短編映画「漂流ポスト」のトークイベントが10日、都内で行われ、主演の雪中梨世と監督・脚本・編集・プロデュースを務めた清水健斗監督が登壇した。

 アップリンク渋谷での公開を記念したイベント。

 雪中は、東京での公開を迎えた想いを聞かれると、「この作品は、スタッフの皆さんが震災を風化させないという想いで作った作品なので、公開されて光栄です」とコメント。清水監督は、「震災10年という年にこの作品が皆さんの目に届くところで上映できること、非常にうれしく思っています。風化がさけばれていますが、震災当時のことを思い出してもらえるように、この作品が伝わればいいなと思います」とあいさつした。

 清水監督は、漂流ポストについての映画を作りたいと思った理由について、「私自身は当時CM制作会社で働いていて、2011年に岩手で撮影を控えていて、3月12日にも岩手に行く予定だったんですが、前日に震災が起こって、自分が見てきた場所やお世話になってきた方が苦しんでいるのを目の当たりにして、ボランティアに参加して、避難所とかで被災者の方々の声を直で聞きました。映像に関わっている人間としては、映像で被災者の今を伝えていかなくてはいけないと思い、制作しました」と説明した。

 また、作品の中にドキュメンタリー的に撮ったシーンがあると明かし、「主人公が手紙を読むシーンがあります。(劇中に出てくる手紙は)漂流ポストに届いた実際の手紙を使っていまして、そのシーンは、雪中さんに実際に撮影しているということを言わずに、(雪中さんが手紙を)一番最初に読んだところを本編で取り入れています」と裏話を披露した。

 雪中は「手紙につづられている1文字1文字が、それまでに資料として見た映像や本だったりとは違う重みを感じました。それを見て、手紙をつづった方々の一歩を踏み出した勇気というのは、絶対に伝えていかなきゃなという覚悟の気持ちになりました」と振り返った。

 最後に雪中は「この作品は、3.11を風化させないという大きなテーマがあるんですが、大切な人への思いを風化させないということにもなるんじゃないかと思います。この作品で1人でも多くの方が、大切な人へ想いをはせる時間を過ごしていただければと思います」と話し、清水監督は「直接被災していないという方でも、何かしら影響を受けているでしょうし、そういう人たちが『忘れない』ということが僕らがやらなくてはいけないことなのではないかと思っていますので、この作品がその手助けになればと思っています」とメッセージを伝えた。

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