幕末に恋をするのは今とどう違うのか…22歳新進女優が手塚治虫の名作舞台で考えたこと
女優の日比美思(22)が、舞台「陽だまりの樹」(演出・樫田正剛、3月5~14日:東京・ヒューリックホール東京、3月27日・28日:大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ)で時代劇に初挑戦する。同作は激動の幕末期を舞台にした人間模様で、日比は蘭方医と侍の2人の青年から思いを寄せられる寺の娘・おせきを演じる。(取材・文=平辻哲也)
日比美思が舞台「陽だまりの樹」で菅田琳寧、早乙女友貴らと共演
女優の日比美思(22)が、舞台「陽だまりの樹」(演出・樫田正剛、3月5~14日:東京・ヒューリックホール東京、3月27日・28日:大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ)で時代劇に初挑戦する。同作は激動の幕末期を舞台にした人間模様で、日比は蘭方医と侍の2人の青年から思いを寄せられる寺の娘・おせきを演じる。(取材・文=平辻哲也)
日比にとっては念願の時代劇だった。「本当にうれしかったです。ずっと時代劇に出演したいと夢見ていたので、役者のお仕事を始めてから、ピアスを開けなかったんです。最近はピアスの穴があっても関係ないとは聞いていましたが、願掛けですね。『陽だまりの樹』はすごく大事な作品になるっていう予感がしています」と喜ぶ。
これまで何度もアニメ化、ドラマ化、舞台化された手塚治虫さんの傑作漫画が原作。黒船来航で揺れる幕末の江戸に病がまん延する中、口が達者な蘭方医の手塚良庵(菅田琳寧)と無骨な府中藩の下級武士、伊武谷万二郎(早乙女友貴)を中心にした人間ドラマだ。「まん延した流行病を治すために良庵が奮闘するんですけど、いつ死ぬのか、分からない、そんな時代の中で精いっぱい生きていく人たちの物語なので、すごく心に刺さりますし、今とも重なるところがたくさんあります」。
ヒロインのおせきは生まれも育ちも対照的な2人の男性からの求愛に揺れる寺の住職の娘。「すごく平和を愛していて、とても芯が強くて、凛としているところもあるんですけど、恋をすると、おっちょこちょいになってしまうのがかわいらしい。時代劇ならではの、所作やテンポを気にしつつ、幕末に恋をするのは今とどう違うのか、どんな重みがあるのかを考えました」。
求愛する相手は、軟派な面もありながら進歩的な医術には一途な良庵と、武士の伝統と誇りを重んじる昔かたぎの侍、万二郎。「どっちも魅力的です。どっちもギャップがあります。良庵はちょっと(女性に)だらしないところもあったりしますが、医術に対しては一途。万二郎は武士として、男たるものという誇りがあるんですけど、不器用なところがあって恋になると、ちょっとうまくいかないんです。その役を菅田さんと早乙女さんが演じることで、すごいことになっています」。
個人的にはどちらの男性がタイプ? 無理を承知で聞いてみると、「えー、迷います。どっちも女としては心配ですよね」と笑った。「両方ともちょっと危なっかしいところがあります。万二郎は生死を問わず、『自分がこれだ』と思うものに突き進んでいってしまうので、毎日ハラハラしなきゃいけないんじゃないかな。良庵はちょっと女性関係にだらしないところもあるから、いろんな女の子のところに行っちゃうんじゃないかって…(笑)。悩みますけど、やっぱり万二郎ですね」
2人の共演者はどうか。「菅田さんはすごくお忙しい方で、稽古が休みの日はライブのリハーサルが1日あったと伺って、大変だな、と。それでも、稽古ではしっかり集中していらっしゃるので、置いてかれないようにしないと思っています。早乙女さんの舞台は、もともとたくさん観劇させていただいていました。あの芝居や殺陣が間近で見られるのはぜいたく。殺陣は柔らかくて重いというか、すごく流れるようで、素敵です。昨日は『おはようございます』とあいさつしたら、『おはようございます』ではなく、『おはよう』と返してくれて、ちょっとうれしかったです」と笑み。