棚橋弘至も絶賛 “中華圏初”のプロレス小説「リングサイド」日本上陸
“中華圏初”のプロレス小説「リングサイド」(著/林育徳 訳/三浦裕子、小学館)が19日、発売となった。
台湾新世代作家が届ける、リングに魅せられた人びとの物語
“中華圏初”のプロレス小説「リングサイド」(著/林育徳 訳/三浦裕子、小学館)が19日、発売となった。
・この小説はプロレスについて書いている。それはつまり、人生について書いているということだ── 西加奈子(作家)
・知りたかった事が書いてあった。みんなの生活の中でのプロレスの存在意義。 そうか。プロレスラーは記憶の中で、画面の中で生き続けるんだなぁ── 棚橋弘至(プロレスラー)
本書は、プロレスと出会い、それに魅せられた老若男女の人生ドラマ10編からなる。著者の林育徳(リン・ユゥダー)は、台湾を代表する作家・呉明益に師事する新世代の作家で、本書でデビューした新星。言うまでもなく、熱烈なプロレスファンの1人だ。
しかし、台湾ではプロレスはメジャーとは言えず、興行も限られている。ファンが日頃、接するのは日本や米国の興行の衛星中継やケーブルテレビによる再放送。そうした制約がありつつも、プロレスファンはそれぞれの方法で「愛」を深めていく。
たとえば、第18回台北文学賞小説部門大賞を受賞した「ばあちゃんのエメラルド」は、元プロレスリング・ノア社長の故三沢光晴さんの試合を楽しみにする「ばあちゃん」が描かれてる。しかし、三沢さんは現実の世界で2009年に死去。「ばあちゃん」はその事実を知らず、再放送の映像を見ながら三沢さんへの熱を持ち続ける。主人公の孫はネットで悲報を知ったものの、その事実を「ばあちゃん」に伝えられず――といった物語になっている。
そのほか、台湾のインディーズ団体を題材にしている短編もあり、台湾という島国でいかにプロレス文化が華開いているかがよく分かる内容になっている。
各話は独立しているものの、台湾東部にある花蓮(かれん)がモデルとされる地方都市を舞台として、緩やかにつながっており、台湾のローカル文化に関心がある読者にもお勧め。
なお、本書の装画を担当した阮光民(ルアン・グアンミン)が描いた「歩道橋の魔術師 漫画版:阮光民巻」が、このたび日本の外務省が海外の優れた漫画作品を表彰する「第14回日本国際漫画賞」の優秀賞を獲得した。台湾を代表する漫画家の世界観が見事に現れた装丁も本書のノスタルジーを演出する。