「生涯最前線」武藤敬司が有言実行 グランドスラムを成し遂げ「令和の御大」襲名へ
「58歳」武藤敬司が「アイアム ノア」と自他ともに認める潮崎豪を下したノア約10年ぶりの2・12日本武道館大会。三沢光晴、小橋健太らが栄光の歴史を刻んできたGHC王座のベルトは武藤の腰に巻かれた。
武藤敬司が潮崎豪を破りGHC奪取
「58歳」武藤敬司が「アイアム ノア」と自他ともに認める潮崎豪を下したノア約10年ぶりの2・12日本武道館大会。三沢光晴、小橋健太らが栄光の歴史を刻んできたGHC王座のベルトは武藤の腰に巻かれた。
とはいえ、潮崎の猛攻に何度も追い込まれた。武藤も「潮崎、強かった。なんでこんなに痛い思いをしているんだろう、と試合中に思ったよ」と苦闘だったことを認めた。
ムーンサルトプレスも不発。コーナーポストに上がる途中でストップしてしまった。「体が反応しなかった。恐怖心なのかな」と振り返ったが、人工関節が入った両膝は、ムーンサルトを爆発させた瞬間、破壊されるとドクターストップをかけられている。
そこで、これまでため込んできた「引き出し」から、フランケンシュタイナーを引っ張り出した。潮崎の剛腕ラリアートをかわすやや、一瞬にして仕留めた。29分32秒の激闘を制してのGHC初戴冠だった。
新日本プロレス・IWGP、全日本プロレス・3冠、ノアのGHC……3大タイトルでは、天龍源一郎の52歳で獲得を大きく上回る58歳での君臨となる。3大タイトル史にすべて名前を刻み、昭和、平成、令和のすべての時代で頂点に立つという偉業の達成でもあった。
潮崎が「アイアム ノア」なら自分は「アイアム プロレス」。決戦前から自信をほのめかしていた武藤だが、見事な有言実行。フリー戦士となったことで、プロレス界全体にカツを入れるという気持ちが強くなったようだ。
実際、フリー戦士を団体が起用するのは、リング上のカンフル剤になり、ファンを熱狂させてくれるからだ。「俺の上がる団体は盛り上がる、となってほしいし、そうさせる引き出しを持っているつもり」とにやり。
潮崎を下した武藤の元に、吸い寄せられるように清宮海斗が現れた。2人の視線が交差。言葉は交わさなかったが、静かな火花を散らした。
清宮は24歳。初の日本武道館大会となった2・12決戦では、稲村愛輝を率いて、秋山準、丸藤正道組と対戦。リビングレジェンドコンビに苦戦したものの、タイガースープレックスで清宮が丸藤を退け、大きな白星をゲットしていた。
元より、2018年暮れにGHC王座を奪取し翌19年、ノアの先頭に立ち続けた清宮。武藤とも20年に抗争を展開し、一騎打ちでは武藤に敗れている。
「俺しかいないでしょう」と自然に清宮の体が動いていた。思えば潮崎にベルトを奪われた清宮だ。その潮崎が武藤にやられた。となれば、団体外に流出したベルトを奪還するのは使命だろう。
若き志士のぎらつく野望にさらされた武藤は「頂上に昇ったけど、霧で視界が見えない」と、いつものペースを崩さない。それどころか「ボクシングの様にタイトルマッチは年に1回か2回でいいんじゃないか」と“武藤ルール”を提案。「チャンピオンには権限があるから」とうそぶく。
武藤は一歩も引くつもりはない。この日、観戦に訪れていた息子さんと同じ年の清宮を一蹴して「生涯最前線」をアピール。「令和の御大」の座を不動にする。