【プロレスこの一年 ♯33】「ALL TOGETHER 2」で棚橋&諏訪魔&森嶋の豪華トリオ、レインメーカーの登場…12年のプロレス
今から9年前のこの時期、プロレス界に革命をもたらすニューヒーローが出現した。新日本2・12大阪で、オカダ・カズチカが棚橋弘至を破りIWGPヘビー級王座を一発奪取。“レインメーカー”のニックネームはニックネームにとどまらず、本来の意味通り、「奇跡を呼ぶ人物」として、新日本V字回復の象徴となっていく。
新日本の新体制がスタート“レインメーカー”オカダ・カズチカが金の雨を降らせる
今から9年前のこの時期、プロレス界に革命をもたらすニューヒーローが出現した。新日本2・12大阪で、オカダ・カズチカが棚橋弘至を破りIWGPヘビー級王座を一発奪取。“レインメーカー”のニックネームはニックネームにとどまらず、本来の意味通り、「奇跡を呼ぶ人物」として、新日本V字回復の象徴となっていく。
これに先立つ1月末、新日本は新体制に移行した。過去にはこの時期になると選手契約更改で離脱者も出していた新日本だが、株式会社ブシロードが株式会社ユークスに替わり新日本を子会社化すると発表。ブシロードはトレーディングカードゲームを主力商品とするゲーム会社で、木谷高明氏が取締役会長に就任すると、大規模かつ大胆なイメージ戦略で一般世間に新日本をアピール。ブシロード傘下となった新日本の知名度が飛躍的にアップされていった。
頂点王座の奪取に成功したオカダだが、スタートはつまづいた。1・4東京ドームに凱旋、こちらも凱旋となるYOSHI-HASHIを独自のラリアート「レインメーカー」で下していたものの、試合内容から棚橋への挑戦表明はファンからの大ブーイングを浴びたのである。メインで鈴木みのるを退けV11を達成した棚橋は、向き合ったオカダに、「IWGPは遠いぞ」との言葉を送り、立ちはだかった。棚橋への支持は絶大だった。ところが、オカダは“遠いIWGP”を1試合で乗り越えてしまった。2・12大阪で、新日本、マット界全体の空気が一変したのである。
とはいえ、エース棚橋もこのまま引き下がるわけではない。オカダが3・4後楽園の創立40周年「旗揚げ記念日」で内藤哲也を破り初防衛に成功すれば、6・16大阪で棚橋がリベンジを果たし、オカダから至宝を奪回。ならばとオカダは、真夏の祭典G1クライマックスに初出場初優勝の快挙を成し遂げる。しかも24歳9か月という史上最年少Vの新記録まで付けてみせたのだ。
この年のG1には、ノアの丸藤正道が初出場。2年前の10年に参戦が予定されていたものの、直前に消滅。そのうっぷんを晴らすような活躍を見せた。
この年、新体制の新日本は地方大会でも積極的にビッグマッチを組んでいった。7・22山形で初のIWGPヘビー級王座戦をマッチメイクし、棚橋がゼロワンの田中将斗に防衛、後藤洋央紀を破りIWGPインターコンチネンタル王者となった中邑真輔は、ベルトのデザイン一新を要求した。8月26には白いベルトが披露され、中邑は新しい価値観をこの王座にもたらせていくこととなる。また、11・19渋谷では新設のNEVER無差別級王座決定トーナメント決勝が行われ、カール・アンダーソンを破った田中が初代王者となり、新たなベルトの歴史がスタートした。
前年3月11日に発生した東日本大震災の影響は、引き続き、この年のプロレス界にもおよんだ。余震の続くなかで、プロレスは人々に元気を与えるエンターテインメントスポーツとしての役割を改めて考えさせられた。1月1日には前年デビューの橋本大地(故・橋本真也の長男)が横山佳和を破りシングル初勝利。試合中にも震度3ほどの揺れがあったが、この年のオープニングを飾る第1試合で、大地はプロレス界に希望をもたらす光となったのである。
震災による不安を乗り越えようと、プロレス界は一致団結。前年8・27日本武道館での東日本大震災復興支援チャリティープロレス「ALL TOGETHER」に続き、2月19日には被災地・仙台で第2回大会が開催された。武藤敬司と小橋建太が秋山準&大森隆男組を相手にムーンサルトプレスの競演を2年連続で披露すれば、新日本・棚橋&全日本・諏訪魔&ノア森嶋猛の豪華トリオが内藤&真田聖也&潮崎豪組とのメインでトリプルドロップキックをさく裂させた。この年は新日本と全日本の旗揚げからちょうど40年。両団体は7月1日に両国で「サマーナイトフィーバーin両国」を開催。IWGPヘビー級王座戦と3冠ヘビー級王座戦が同日同会場で行われ、IWGPは棚橋が真壁刀義、3冠は諏訪魔が太陽ケアを破り、それぞれが防衛を果たした。同大会では中邑&オカダ組VS諏訪魔&近藤修司組が実現し、オカダが闘龍門の先輩、近藤をレインメーカーからフォールした。