宝物であり恋人 プロレスの華チャンピオンベルトの楽しみ方【連載vol.23】
チャンピオンベルトは王者の証。強さの象徴であり、先人たちの血と汗と涙が染み込んだ宝物である。
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チャンピオンベルトは王者の証。強さの象徴であり、先人たちの血と汗と涙が染み込んだ宝物である。
日本プロレスでは、タッグ王者はベルトではなくトロフィーを王座の象徴としていたが、力道山亡き後はアメリカにならってタッグ王者もベルトを巻くようになっている。
チャンピオン「ベルト」の名の通り、腰に装着するものであり、また無冠の場合には「丸腰」と言うように、やはり腰に巻くというイメージが強いが、最近では肩にかけることも多い。その際は「ベルトの上が体の内側に来る」のが正式だ。
ところが昨今では、それが曖昧になっているようだ。
W-1時代、GAORA TV王座についた黒潮“イケメン”二郎が、試合後の懇親会でベルトを反対向きにかけていたところ、同席していた征矢学が「反対だよ。上が内側に来るように」と、小声でアドバイスしていた。
先輩だからと偉ぶるでもなく「知らないのなら、誰かが教えてあげないと」と優しく指導する征矢。イケメンに恥をかかせてはいけないと小声で知らせるところは、何とも配慮が行き届いていると感心した。現在はノアの金剛で寡黙な男、当時はWILDで野性的だったが、きちんと作法は身につけている。
大日本プロレスの岡林裕二。ストロングBJの強さの象徴である。岡林は、昨年の暮れにベルトの向きについて初めて知ったそうだ。「全く知らなかった。でも『どっち向きとかあるのかな、どっちなのだろう』と、ずっと思っていたからスッキリした。そういう伝統は大事だから、自分が伝えていきたい」とピッサリ。
ただ、1・2後楽園ホール大会で、中之上靖文に敗れ、ストロングヘビーのベルトを落としてしまった。悔しがる岡林だが「絶対、取り返す。そしてベルトの向きもピッサリ守る」と、決意を新たにしていた。
大日本タッグ王者の野村卓矢は「自分も知らなかった。でも先人たちの伝統はしっかり受け継ぎたい。試合が終わってすぐはアドレナリンが出ているから、少し冷静さを欠いてしまうので、そこまで気が回らないかも知れないけど、これからは意識して行きたい」と殊勝だ。
27歳の野村だが先人たちのDVDなどをチェックして学ぶなど非常に研究熱心。「何年経っても色あせない名勝負もある。参考にすべきことはたくさんある。古くても良いものは取り入れて行きたい」と、歴史や伝統を大切にする温故知新の心を持っている。
また、若手の兵頭彰は、横浜ショッピングストリート6人タッグ王者時代、ベルトを持ってリングインした後、セコンドに渡す際には、両手で大事そうにそっと渡していた。「ベルトは大事なものなので。粗末には扱えません」と熱かった。
ベルトを放り投げたり、踏みつけたりする選手もいるし、それを対戦相手や団体に対する挑発行為としてパフォーマンスや個性にしている場合もある。そしてそれを今風、クールと支持するファンもいる。
一方で「ベルトを恋人だと思って大事にする」「ベルトと一緒に寝ます」という選手もいる。恋人や宝物だと思えば、大切に扱うだろう。
ちなみに、以前のアジアタッグのベルトは長さが違った。グレート小鹿のベルトは短く、巨体の故・大熊元司さんのベルトは長かった。
岡林が「関本(大介)さんとアジアタッグ王者だった頃、何で長さが違うんだろうねと、2人で頭をひねっていた。謎が解けた」と笑った。
みなさん、ベルトのデザインにも好みがあるだろう。封印されたNWFのベルトは人気が高かった。それぞれ工夫を凝らしており、見ているだけでも、歴代王者や名勝負がよみがえりワクワクする。
猪木が1983年に作ったIWGPのベルトは時価1億円とも言われた。
また同じ団体のベルトでは、ヘビー、ジュニア、タッグのベルトにデザインで統一性を持たせたり、赤いベルト、白いベルトなど革の色を変えて特徴を際立たせる場合もある。
今年は、試合内容だけでなくベルトにも注目するのは、いかがだろうか。