異例尽くしの2020年「陰湿」レスラーに脚光 来年の大暴れに期待
コロナ禍に世界中がほんろうされた2020年。今年の漢字を選ぶとしたら、異例尽くしの「異」ではなかろうか。
異例尽くしの「異」時代で異彩を放つ才能
コロナ禍に世界中がほんろうされた2020年。今年の漢字を選ぶとしたら、異例尽くしの「異」ではなかろうか。
プロレス界も興行の中止や延期が相次ぎ、ゴングを鳴らしても、無観客試合や配信試合の実施とかつてない事態が続いた。
現在も観客数は制限され、マスク着用は必須。飲食も声を出しての応援も禁止されるなど、ファンも選手も団体も「日常」を取り戻せないままだ。
異例なことが現在進行形のプロレス界だが、年末には前代未聞の展開が待っていた。全日本プロレスの世界最強タッグ決定リーグ戦に優勝した青柳優馬の飛びぬけた言動が、波紋を呼んでいるのだ。
ジェイク・リーの応援ボードやグッズを掲げたファンに、リング上から「ジェイクのファン、ざまーみろ! グッズで隠すんじゃねえ。顔見せてみろ」と挑発。さらにメディアに連載している日記で文字にしてダメ押し。インタビューでも、ジェイクファンのみならず「全日ファンはいつまでも王道にこだわっていて陰湿」と突き抜けている。
かねてよりイケメンのジェイクに、一方的に敵意をむき出しにしていた。だが、ジェイクは嫉妬されるのに慣れているのだろう。青柳の挑発はスルーされ「ギャフンと言わせてやる」と意気込んでいたものの、空回りしていた。
年末になって、最強タッグ戦で青柳はジェイクを下し「メチャメチャ超気持ちいい。もうなんも言えねえ。最後に言いたいのは、ざまあみろと。それだけ」と胸を張った。
「陰湿」をトコトン繰り返す天井知らずの陰湿さは本物。自身のファンをも敵に回しかねないが、それは不退転の決意の表れなのだろう。かつてないキャラクターとして、新しいレスラー像を作り上げようとしている。
2019年2月、当時のパートナー・野村直矢が青柳とともに保持していたアジアタッグ王座を返上した時、青柳は「これから邪魔してやる」と吐き捨てた。野村は「勝手に言っとけ」と意に介さなかったが、その頃から青柳の陰湿さが一部で注目を集めていた。それがここに来て一気に開花。明るく楽しい全日本の根底を覆すほどのインパクトを与えた。
その勢いはすさまじく、新春早々、一気に5冠王に上り詰めるチャンスをつかんだ。1・2、1・3の後楽園ホール2連戦で、世界タッグ王座、3冠王座に連続挑戦。ベルトを奪い取れば「史上最年少5冠王」の金字塔を立てることにもなる。
かつて青柳はタオルを振り回しながら入場していた。このところ封印してしまっているが、是非とも復活させてほしい。タオルは使い勝手が良い。
有刺鉄線バットやガラスボードではなく、タオルという日用品を凶器に使うことで、より一層、陰湿さに磨きがかかるはず。
「ざまーみろ!」は、決めゼリフ。下した相手に「〇〇、ざまーみろ!」そして「〇〇のファン、ざまーみろ!」……繰り返すことにより、認知度が高まり定着する。
思えば、棚橋弘至の「愛してま~す」も、当初はファンから失笑が漏れていた。小島聡の「いっちゃうぞ! バカヤロー!」も「どこに行くんだ! バカ!」などというヤジを浴びたものだが、その後、ファンの大合唱(今は大拍手)を集めている。
試合の度に、言い続ければ「ざまーみろ」も青柳の代名詞となるはず。折しも、半沢直樹の「倍返し」で、リベンジが再認識されており、時代の追い風もある。さっそく発売のTシャツの青色は「陰湿ブルー」と名付けられた。
加えて、陽そのもののパートナー・宮原健斗がフォローすれば、キャラの相違が際立ち、陰陽理論のごとく、令和を代表する最強コンビの誕生となる。
明るさを売りにし、元気をトレードマークにしているレスラーはいるが、陰湿を全面に出したのは青柳が、初めてではないか。唯一無二の陰湿キャラ、青柳はどこまでその個性を極められるのか。今後から目を離してはいけない。