元アイドルレスラー、宿敵相手に「乙女の生き様」でリベンジを誓う
「もう一つのイッテンヨン」東京女子プロレスの2021年1・4東京・後楽園ホール大会に「乙女の生き様」を懸けて臨む「元アイドルレスラー」がいる。伊藤麻希である。
2021年1・4東京・後楽園ホール大会に生き様を懸けて臨む伊藤麻希
「もう一つのイッテンヨン」東京女子プロレスの2021年1・4東京・後楽園ホール大会に「乙女の生き様」を懸けて臨む「元アイドルレスラー」がいる。伊藤麻希である。
1・4決戦では、常に目の前に立ちはだかってきた山下実優との一戦。デビュー戦、初の後楽園ホール大会のメインイベントだった2019年1・4決戦、夢だったニューヨーク遠征での対決……シングル戦では全敗と怨敵そのもの。「私にとって思い入れのある相手、もっとも苦しい思いばかりだけど」と山下を語る伊藤の顔はいつも歪み、その表情から愛らしさは消え去る。
18年秋のDDTドラマティック総選挙で、一時は首位に立ち3位に入賞。有頂天になっていた時に、19年1・4後楽園ホール大会でプリンセス・オブ・プリンセス王者・山下に挑戦した。敗戦以上に「ファンのみんなが、全く付いてきてくれなかった。自分が勘違いしていたことを、思い知らされた」と、ショックが大きかった。「挫折した。トラウマになった」と振り返る。
「デビューから大変なこともあったけど、プロレス、ファンとの一体感を楽しんでいたつもりだった」伊藤はへこんだ。グッズ販売も不振に陥り、ファン離れを実感させられた。
その後の試合では、声援ではなくヤジばかりが耳についた。実際はそうでもなかったが、スランプの身には周囲がすべて敵に感じられる。「(出身地でアイドル活動をしていた)福岡に戻るしかない」とまで思いつめた。入場曲のレコーディングでは、ふがいない思いに駆られ、気づくと涙がこぼれ落ちていた。暗い迷路にはまりこんでしまった。
それでも、持ち前の負けず嫌いな性格で踏ん張った。半歩ずつ前進。基礎練習を繰り返し、新人の様にロープワークに取り組んだ。
思わぬところで、転機が訪れる。19年4月のニューヨーク遠征の連戦。ツインテールの髪型、アニメそのままのコスチュームで、中指を立てるポーズを取ると、会場は大爆発した。
夢だったニューヨークでのファイト。物販も抜群の売り上げだった。「スペインやイギリスでも人気を集められた。私、いけるかも」と、上を向けるようになった。
コロナ禍の今年も、思えば筋肉トレーニングの時間がたっぷりと取れた。マスクをしての練習でスタミナにも自信がついた。トレーナーの指導で体幹がしっかりし、姿勢もよくなった。
12・19名古屋大会の前哨戦は10分時間切れ引き分け。「山下にテクニックをはじめ、プロレスのすべてでかなわないのは承知。彼女は空手のバックボーンまである」ことを改めて思い知らされた。
ただし、手ごたえもつかみ取った。「気持ちでは負けない。固め技を決めて、ギブアップと言わせる」と、勝利の方程式も出来上がっている。強気に言い放つ、らしさが戻ってきた。
山下超えを果たし、プリンセス・オブ・プリンセス王座を頂く。そして世界サーキットを実現させる。世界中のマクドナルド制覇も欠かせない。
「私の生き様をファンのみんなに見てもらいたい」とレスラー魂を訴える。もう「元アイドル」の気持ちもない。「レスラー」として生き抜く覚悟も固まった。伊藤麻希の生き様を、しかと見届けよう。