“男性初のセクシー女優”、一世風靡した過去作の配信停止を求めた理由「興味本位で来るところではありません」 作家に転身の今

2014年、元祖“男の娘”AV女優としてAVデビューし、大きな話題を集めた大島薫さん。翌15年に25歳でAV業界を引退、現在はタレントや文筆家として活躍の場を広げている。純粋な男性として、ゲイビデオから業界に飛び込んだという大島さんは、なぜAVに活躍の場を移したのか。壮絶な半生と現在を聞いた。

壮絶な半生を語った大島薫さん【写真:井上学】
壮絶な半生を語った大島薫さん【写真:井上学】

「一生彼女なんかできない」卑屈な動機で女装趣味の世界へ

 2014年、元祖“男の娘”AV女優としてAVデビューし、大きな話題を集めた大島薫さん。翌15年に25歳でAV業界を引退、現在はタレントや文筆家として活躍の場を広げている。純粋な男性として、ゲイビデオから業界に飛び込んだという大島さんは、なぜAVに活躍の場を移したのか。壮絶な半生と現在を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)


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「男か女かと言われれば、間違いなく男。手術もホルモン治療もしていませんし、性別変更の欲求もない。ただ、一般的な男性とは少し性的指向が異なるだけ。『女性になりたいわけではない』という自分の気持ちには正直に生きています」

 大島さんが自身の性的指向に気付いたのは15歳のとき。幼い頃からネット環境が家にあり、さまざまなエロやポルノの文脈に触れて育った経験から、「大概の性癖には寛容な自覚がありました(笑)」と振り返る。一方で、自分の容姿に自信が持てないという思春期特有の悩みも……。さまざまな要因が重なった結果、女装趣味に目覚めていく。

「中学生の頃は、どうすればセックスができるかにしか興味がなかった。当時、小太りで背が低くて、天然パーマだった自分の見た目じゃ、一生彼女なんかできないと人生を悲観していたとき、ネットで女装掲示板の存在を知ったんです。そこでは30代のおじさんが、若い子扱いされてもてはやされていた。15歳の自分ならもっとモテるんじゃないか、自分にはそれ(女装)しかないんじゃないかと、卑屈な動機で始めたのを覚えています」

 匿名掲示板を通じて知り合った中年男性と関係を持ったのは、15歳のとき。一方で、高校入学後には女性とも交際。男性との行為に抵抗はなかったが、「恋愛対象はあくまで女性」という自分の中の指向と向き合っていった。

 18歳のとき、就活のための費用を稼ぐ目的でゲイビデオの求人に応募。地元の大阪から夜行バスで東京に向かい、3日間で3本を撮影、約20万円の報酬を手渡された。

「いかがわしいビデオでも、ちゃんと監督やADがいるというのが新鮮でした。1回きりのつもりでしたけど、みんな大根役者で、演技が下手過ぎて笑いをこらえながらみんなで作品を作っていく感じが、何だか学園祭のノリみたいで楽しかった。体を売ってしまったという悲壮感みたいなものはなくて、それからちょくちょく参加するようになったんです」

 コールセンターの派遣業務とビデオ出演の収入でその日暮らしをしていた23歳のとき、大きな転機が訪れる。一般AVメーカーとゲイビデオメーカーの共同企画で、本格的な女装モノビデオに出演。これが異例の大ヒットを記録し、女装モノ作品への依頼がひっきりなしに舞い込むようになった。

「自分は男性との行為に抵抗がないだけで、ゲイではないので、ゲイビデオだとどうしても演技しているという感覚になる。あくまでも仕事として割り切っている感じでした。一方で、ばっちり女装やメイクをした撮影で『かわいいねー!』と褒められると、俄然スイッチが入った。もっと女優みたいな、タレント的な売れ方がしたいと思うようになっていったんです」

引退から10年、現在は文筆家としての一面も【写真:井上学】
引退から10年、現在は文筆家としての一面も【写真:井上学】

女装モノゲイビデオ作品で人気を博し、2014年、鳴り物入りでAVデビュー

 日常生活から女装をして見た目を磨き、AVプロダクションに応募。SNSアカウントも開設し、「男だから問題ないだろう」と上半身裸の写真を投稿すると、瞬く間に大きな話題となった。

 2014年、大手事務所と専属契約を結び、鳴り物入りでAVデビュー。2年間で30本以上の作品に出演した。だが、一方でAVやゲイビデオの世界では、タレント生命に限りがあることも感じていたという。

「常に話題性や過激さが求められる世界。性転換手術をせず、ホルモン治療を行わない“ノンオペ・ノンホル”が自分のアイデンティティーでしたが、『竿も取らない、玉も取らない、胸も入れない。あなた何になりたいの?』とそれを否定されるような言葉も言われました。自分は女装がしたいだけ、きれいでいたいだけなのに、こういう消費のされ方は違うよなと」

 専属契約が切れた後、フリーの企画単体女優としてよりハードな撮影をこなすか、知名度を生かし、新たな道を模索するか……。ゲイビデオ時代も含め、長く業界に身を置いた経験から引き際を心得ていた大島さんは、潔く引退を決意。同時にフォトエッセーを発売し、作家としてのセカンドキャリアに舵を切った。だが、引退後は、元AV女優という肩書きから、差別や偏見を感じることも多くあったという。

「性器が一切映っていない、18禁でもないただの写真集が、『エロ本でしょ?』と言われ本屋に置いてもらえなかったり、通販サイトで18禁と弾かれたり、テレビ出演の話も直前で取りやめになったり……。一度でもAVに出た人間は、世間からはもう同じ人間扱いをされないんだなと痛感しました。理不尽なことはAVに限らずどこの業界でもあるけど、過去が追いかけてくることってあまりない。やらなきゃよかったとまでは思わないけど、自分の考えも甘かった」

 23年には、過去の出演作の販売・配信停止を求め、メーカー側を提訴。今年2月に和解が成立した。引退から約10年。作家としての地位を確立した現在は、風俗誌上でのコラムやAV女優へのインタビューなど、多くの連載をこなしている。

「世間のイメージよりはずっとちゃんとしているけど、それでも非常識な業界であることは間違いない。覚悟を持って入るならともかく、興味本位で来るところではありません。参入のハードルが下がっていることは問題ですし、整形費用を事務所が肩代わりしてデビューさせたり、ホストクラブにハマって……という流れも実際にある。AVを選ぶことも職業選択の自由ではありますが、それは本当に自分の意志で選んだと言えるのか、引退した後もそうだと言い切れるのか。自分が見た地獄、他の人の地獄を伝えていくことが、今の自分にできることの一つだと思っています」

 男か女かという枠組みを超え、「自分らしさ」に正直に駆け抜けたAVの世界。自身も当事者であるからこそ、特殊な世界で生きる女性たちの本音に寄り添い続けている。

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