天心VS武尊が実現したら? 白鳥大珠が激白「スピードでは天心が上。武尊はどっから攻撃が来たのか分からない」
去る10月11日、横浜・ぴあアリーナMMにて開催された「RISE DEAD or ALIVE 2020 YOKOHAMA」にて63キロ級トーナメント戦に出場した、“キック界の王子”白鳥大珠(24)。優勝候補と目されながら、まさかの1回戦負けという衝撃に、会場からは驚きの反応が見られたが、裏を返せば、この後のリベンジに期待が持てるというもの。一方で白鳥は「格闘技界を盛り上げる」べく、他団体との対抗戦をぶち上げる。その資金石とばかりに、昨年は元K-1王者の大雅(24)に2連勝。続いて狙うは、やはり元K-1の皇治(31)である。なぜ白鳥は皇治を狙うのか。その真意を聞いてみた――。(聞き手◎“Show”大谷泰顕)
「人生が終わった」と思った直樹戦の敗退
去る10月11日、横浜・ぴあアリーナMMにて開催された「RISE DEAD or ALIVE 2020 YOKOHAMA」にて63キロ級トーナメント戦に出場した、“キック界の王子”白鳥大珠(24)。優勝候補と目されながら、まさかの1回戦負けという衝撃に、会場からは驚きの反応が見られたが、裏を返せば、この後のリベンジに期待が持てるというもの。一方で白鳥は「格闘技界を盛り上げる」べく、他団体との対抗戦をぶち上げる。その資金石とばかりに、昨年は元K-1王者の大雅(24)に2連勝。続いて狙うは、やはり元K-1の皇治(31)である。なぜ白鳥は皇治を狙うのか。その真意を聞いてみた――。(聞き手◎“Show”大谷泰顕)
――今日は、いかに格闘技界を盛り上げるか、という観点からも話を聞かせてもらいたいなと。
「よろしくお願いします」
――まず、前回の試合(10月11日、ぴあアリーナMM)から話を聞かせてもらうと、RISEの63キロ級トーナメントでは優勝候補と目されながら、準決勝の直樹戦で不運の負けを喫してしまいました(※直樹のヒザで額を割り、1R1分30秒、ドクターストップ)。
「実際、ドクターストップで終わって、退場している時は人生が終わったな、みたいな」
――人生が終わった?
「そのくらいに思ってしまいました。ホントに今回の試合にかける思いが強くて、それがあっという間に終わってしまって。しかも見せ場もなく終わってしまった、という感覚で、どうしよう……っていうか、何も考えられなかったんですよ。退場してちょっと離れたところでもう、うなだれちゃったっていうか。ここまで築き上げたものが、一気に崩れたなっていう感覚が強くて、どうしたらいいんだろうっていうのを考えたッスね」
――当初はどういう戦略を考えていたんでしょう?
「トーナメントだから怪我をしないことが第一だから、先のことは考えずにチャンスがあれば1ラウンドから倒しにいくっていうスタイルで行こうとは思っていたんですけど、そこまでたどりつかなかったことがまず悔しかったですね」
――いろんな見方はあるでしょうけど、僕は白鳥選手が負けた場面が、あの日のハイライトだったと思ったんです。
「(苦笑)」
――サプライズというかハプニングを現出させましたよね。
「前向きにとらえればそういう見方もあると思いましたね。これから先の何かにつながるんじゃないかとは思いましたし、ストーリー的にも。そういうストーリーをつくり直して行かなきゃなっていう」
――今回のトーナメントは原口健飛選手が優勝して、リング上から「白鳥選手がいたからここまで来れた」という話も出ていました。
「あの時は、何を言っているんだろうな、と。僕は負けた人間なので。どれだけ上から目線で行ってくるのかなと思ったら……、ちょっと意外でしたね(笑)」
――意外?
「結構、試合前はバチバチでやり合っていたので、あれ? って感じで(笑)」
――なるほど。
「(原口戦は)あの大会で一番観たいと思われていたカードだと思うんですけど、反応を見ると、逆によかったっていう声もあるみたいで」
――逆によかった?
「トーナメントの決勝じゃなくて、ワンマッチで(白鳥VS原口戦を)見たいっていう。だからこれからRISEの中でのストーリーもまだまだ続くなって。プラスに捉えれば」
「元K-1王者・大雅戦はヤバくて笑っていた」
――聞くところによると、普段からKOを取る試合を心がけているそうですね?
「そうですね。去年から特にその意識は強くなったというか。やっぱり倒したほうが盛り上がるじゃないですか。そういう試合のほうが、格闘技好きな人以外の層にも広まるのかなっていう思いはあるので。格闘技界の枠には収まりたくないなっていうのは昔からずっと思っていることなので。いかにそこまでたどり着けるか」
――よく「格闘技界を盛り上げる」って聞きますけど、何をするとそうなるんでしょうかね?
「強いけど、格闘技業界の中でしか知られていない選手ってたくさんいるじゃないですか。それはキックに限らず、ボクシングの世界チャンピオンでもそうだと思うんですけど、そこまで一般の人に知られている人はいないと思うんです」
――井上尚弥選手、村田諒太選手くらいでしょうね。
「だからそれ以外の層にいかに届くかを常に考えていますね」
――ちなみにRIZINでも何度か試合をされていますね。
「やっぱりRIZINには地上波が付いていますし、日本で一番注目されている舞台なので、僕の中ではお祭りじゃないけど、もっと注目を集めるカードをやりたいなっていう。去年で言えば、大雅選手ともやりましたけど、元K-1のチャンピオンっていうのもあって知名度もありましたし、RISEでチャンピオンになった僕との対決は、すごくいいなと思っていましたね」
――大雅戦は2度ありましたけど、いずれも面白い試合でしたね。
「とくに1回目の試合は注目度もあったと思うんですよ。RIZINはMMAの試合が多いですけど、通常のキックの団体ではありえないような対決がそこではできたらいいなと思いますね」
――大雅戦では、試合中に笑っていた場面があったじゃないですか。
「お互いにありましたね」
――あれはどういう感覚なんですか?
「なんなんですかね? 2ラウンド目までは僕がダウンを取ってほとんど圧倒していたんですけど、3ラウンド目に僕がダウンを取られて、会場もめっちゃわいていて、向こうも笑って。自然な感情で、ヤバいなこの感覚みたいな」
――ヤバい?
「ヤバいって、やられるとかそういう感情じゃなくて、この空間がヤバい空間だなっていうのがあって。楽しかったなあっていうのはありますね。試合で倒されて、苦しい空間であるんですけど、それでも笑みがこぼれちゃうっていうか。あれは見せかけで、アピールで笑っていたんじゃなくて自然と出ちゃいましたね、フフッ」
――なぜか楽しかったんですね。
「たぶんお互い、そんな気持ちだったんだと思います」
皇治の「武尊のほうが強い」発言に「それ、言っちゃうか」
――大雅選手と同じく、K-1から参戦した皇治選手がこの前のRIZIN(9月27日、さいたまスーパーアリーナ)では那須川天心選手と闘いました。率直にどう思いましたか?
「天心本人も言っていましたけど、試合として成立していない印象ですね。あの試合が組まれて、見たいとはなるじゃないですか。ただ、見方がおかしいなっていうか。あれが本来のあるべき姿ではないのかなっていう。皇治ファンでさえ、最後まで立っているのか倒されるのかっていう見方だったと思うんです」
――倒すか倒されるか、ではなかったと。
「そうです。勝つか負けるかじゃなかった。(皇治は)試合をやっても何もできていなかった印象なので」
――テレビ解説者は「皇治選手は打たれ強いですね」と何度も口にしていて、それが焦点のように聞こえました。
「倒すだけじゃない、別の次元の闘いを見せられていたっていうか」
――別の次元の闘い?
「(皇治は)何もできていなかったじゃないですか。もちろん、天心はカウンターがうまいので、それを警戒してっていうのはあったと思いますけど、もうちょいいってほしかったですよね。わざわざK-1を抜けてきたと思うけど、そこまでした覚悟が見られなかった」
――天心選手は入場の時から「ナメるな!」って叫んでいたけど、白鳥選手から見て、あれはなぜだと思いました?
「考え方の違いじゃないですかね」
――考え方の違い?
「皇治選手って実力どうこうっていうより影響力があると思うんですよね。過去の武尊戦もそうですけど、ダウンしない、KO負けをしない選手って思われているじゃないですか。だけど、格闘技ってそういうことじゃないって、天心は伝えたかったんじゃないですか? 強い者は上に行くけど、負けた者はもう後がないぞぐらいの。たぶんそういうことを伝えたかったと思うんですよ」
――天心選手的には、野球で言うならパーフェクトは達成できなかったけど、完封勝利でしたよね。
「試合としては天心の圧倒的勝利じゃないですか? ただ、さっきも言った通り見方が変わっちゃっているから、皇治、最後まで倒されなかった、ってなっちゃっていると思うんですよね。天心強いな、圧倒的だったな、じゃなくて、そっちのほうが声が多いと思うんですよ」
――確かに天心選手が判定まで行った試合は、1年前の志朗戦(2019年9月)以来だから、そういう意味ではすごいのかもしれないけど、倒れなかったことがすごい、ということじゃないですよね?
「また、堀口(恭司)戦と比べちゃダメですよね。あの時は天心も全然余裕がなかったと思いますし。だから今回の皇治戦は全く別ですよね」
――にもかかわらず、なぜか皇治選手は「武尊のほうが天心より強い。俺には分かる」と言ってしまう……。
「それ、言っちゃうかって感じですよね(笑)。本当にやり切って、出し切って言ったならいいと思うんですけど、あそこまで完封されてまで言うことじゃないなって思うんスけどね。だから(皇治)本人が何を目指しているのか……。だからそこが天心とは全く別のとこだと思うんですね」
――お互いの違いが如実に出たと。
「たぶん武尊選手との試合はホント出し切った試合だと思うんですよ。だけど天心戦は何も出せずに終わって、自分の中でも消化不良っていうか。あったんじゃないですか?」
――白鳥選手からすると、なぜ皇治選手は「武尊のほうが天心より強い」と言ったと思います?
「何かの戦略なんですかね? その2人をやらせたいがための。でもそれを選手が言ったところで何も変わらないと思うんですよね。今回も(K-1への)違約金を払ってRIZINに来ているって言うじゃないですか。払っていないで来ているんならすごいと思いますけど」
――試合後にプレスルームで皇治選手のコメントを聞いていたんですけど、「天心は分かってくれたと思う」と。その言葉を聞きながら、正直、天心選手は分かってくれたんだろうかと不思議な感覚に陥りました。
「たぶん、なんも(分かってくれていない)ッスよ(苦笑)」