ゴキブリ、名前の由来は? 昆虫博士が教える意外なルーツと最強の撃退法

初夏の陽気が漂うこの季節に活発に活動を始める、家庭内で最も遭遇したくないキングオブ害虫・ゴキブリ。日本一の嫌われ者の“G”だが、それゆえにその名前の由来や生態、人間との関わりの歴史など、意外と知らないことも多いのではないだろうか。敵を知り己を知れば百戦危うからず。1985年に日本で初めて発売された毒エサ殺虫剤「ゴキブリキャップ」販売元のタニサケで虫コラムを担当する、“日本のファーブル”こと昆虫博士の奥村敏夫氏に、さまざまなゴキブリ雑学と対処法を聞いた。

かわいらしくデフォルメされたゴキブリのキャラクター【写真提供:タニサケ】
かわいらしくデフォルメされたゴキブリのキャラクター【写真提供:タニサケ】

日本に生息する4種類のうち3種類は江戸時代以降に人の手によって運ばれた外来種

 初夏の陽気が漂うこの季節に活発に活動を始める、家庭内で最も遭遇したくないキングオブ害虫・ゴキブリ。日本一の嫌われ者の“G”だが、それゆえにその名前の由来や生態、人間との関わりの歴史など、意外と知らないことも多いのではないだろうか。敵を知り己を知れば百戦危うからず。1985年に日本で初めて発売された毒エサ殺虫剤「ゴキブリキャップ」販売元のタニサケで虫コラムを担当する、“日本のファーブル”こと昆虫博士の奥村敏夫氏に、さまざまなゴキブリ雑学と対処法を聞いた。

軽トラからセンチュリー、バイクにバギー…大御所タレントの仰天愛車遍歴(JAF Mate Onlineへ)

 現在、日本に生息する主だったゴキブリは4種類。そのうち在来種は主に森に生息する日本固有種のヤマトゴキブリのみで、残る3種類は江戸時代以降に人の手によって運ばれた外来種に当たるという。とはいえ、平安時代の書物にはすでにヤマトゴキブリと思われる記載があるなど、日本においても人との関わりの歴史は古い。

「ゴキブリの名前は平安時代の『御器齧(ごきかぶり)』が由来です。当時の貴族は大変高価で雅な器『御器』に盛った食事を、すべて食べずに少し残すのがマナーとされていました。大切な御器に夜な夜な群がる虫として、当時から忌み嫌われていたようです」

 ヤマトゴキブリは森林性で普段目にする機会は少なく、現代の日常生活でもっぱら目にするのは中国原産のクロゴキブリとエジプト原産のチャバネゴキブリだ。どちらも江戸時代以降、船での交易を通じて大陸から日本に持ち込まれた。

「クロゴキブリもチャバネゴキブリも中国文明とエジプト文明の長い歴史の中で、人間と共生、もとい寄生して生きてきました。クロゴキブリは酒だるを運んだたる廻船で日本中に広がると、徳川綱吉の『生類憐みの令』を追い風に一気に定着しました。チャバネゴキブリは熱帯性なので寒いところが苦手。明治時代に暖房のある富裕層の家でのみ見られたことと、シャンパンゴールドのゴージャスな見た目から、当時は『コガネムシ』というとチャバネゴキブリのことを指していました」

 もう1種類、見る機会こそ少ないものの最強最悪とうたわれるのが、アフリカ原産のワモンゴキブリだ。体長は最大5センチにも達し、クロゴキブリやチャバネゴキブリと遭遇するとあっという間に巣やコロニーを殲滅(せんめつ)。都市部の排泄物を貯留する汚水槽を主なすみかとするため、ありとあらゆる病原体やばい菌を媒介する文字通りの“バイオハザード”だ。

 世界中で古くから忌み嫌われてきたゴキブリ一族だが、かつては生物学の権威ですら、これを嫌った痕跡があると奥村氏は指摘する。

「18世紀の生物学者で『分類学の父』と呼ばれるカール・フォン・リンネは、ゴキブリの学名を『ペリプラネタ・フリギノーサ(Periplaneta fuligginosa)』と名付けましたが、これはラテン語で『地球上のどこにでもいる黒いやつ』という意味。通常学名とはギリシャ神話にちなんだり、もっとかっこいい名前をつけるもので、こんなに適当な命名は他にありません。また、分類された場所からチャバネゴキブリが『ドイツのゴキブリ』、ワモンゴキブリが『アメリカのゴキブリ』という学名ですが、原産国はまったく別でこれは分類上は大きなルール違反。いかにゴキブリだけぞんざいに扱われていたかが読み取れます」

次のページへ (2/3) 昔ながらのホウ酸ダンゴは耐性を持ったゴキブリが出ることもなく有効
1 2 3
あなたの“気になる”を教えてください