平岩康佑、局アナ辞めてeスポーツの世界に転身した理由「絶対に逃したくなかった」

年々、盛り上がりを見せる日本eスポーツ界において、大きな役割を果たしているのが実況や解説を務めるキャスターの存在だ。元朝日放送キャスターで株式会社ODYSSEY代表取締役の平岩康佑氏はその先駆けとして知られ、eスポーツの舞台をプロフェッショナルな実況で彩っている。そんな平岩氏に、eスポーツキャスターという職業に懸ける情熱、業界の現在と未来などについて話を聞いた。

平岩氏は2018年に独立して事務所「ODYSSEY」を立ち上げた
平岩氏は2018年に独立して事務所「ODYSSEY」を立ち上げた

eスポーツの熱狂から“確信”を得てeスポーツキャスターとして独立

 年々、盛り上がりを見せる日本eスポーツ界において、大きな役割を果たしているのが実況や解説を務めるキャスターの存在だ。元朝日放送キャスターで株式会社ODYSSEY代表取締役の平岩康佑氏はその先駆けとして知られ、eスポーツの舞台をプロフェッショナルな実況で彩っている。そんな平岩氏に、eスポーツキャスターという職業に懸ける情熱、業界の現在と未来などについて話を聞いた。(取材・構成=片村光博)

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 朝日放送のキャスターとして活躍していた2018年、平岩氏は退社してeスポーツの実況に特化した事務所「ODYSSEY」の設立を決断した。当時は「eスポーツ」自体の知名度も現在に比べて高くなかったが、平岩氏には逃してはならない“チャンス”を確信するきっかけがあったという。

「もともとゲームが好きで、『自分も第一線に加わりたい』という思いがスタートにありました。eスポーツの実況をする人は元選手やYouTuberなどにいましたが、プロの喋り手として一番手で入れるチャンスを絶対に逃したくなかったんです。局アナを辞めて路頭に迷うより、誰か同じように考えているアナウンサーが第一人者になってしまうほうが嫌でしたね。

 すでにeスポーツが盛り上がってきているのは知っていて、現場を見たいと思って韓国の『LoLパーク』というeスポーツ専用のスタジアムで試合を見てみたんです。そこで『潜在的な市場が眠っているな』と思い、韓国から帰ってきた次の日に辞表を出しました。『逃したら絶対に後悔する』と感じましたし、自分の中でも確信につながる出来事でしたね」

 eスポーツ先進国として知られる韓国で目にしたのは、いわゆる“ゲーマー”と言われる人々が、熱狂的に声援を送る姿。「日本では見たことのない光景だった」と衝撃を受け、以降は自らが日本で熱狂を生み出す側に回ることとなった。それから約3年、eスポーツを取り巻く環境もすさまじいスピードで変化している。大きな将来性を感じて参入した平岩氏にとっても、予想以上な部分も大きいという。

「思っていた以上の盛り上がりになっていますね。コロナ禍は予測のできないものでしたが、その中でもこれだけ盛り上がるのかと。ここからどうなっていくのか、本当に楽しみですね。逆に、これからはどう定着させていくか。すでに一過性のものではなくなっているという印象ですが、スポンサーさんの視点では、一過性と感じているかもしれないですから。

 ただ、世界的な流れを見ていると、若い人たちが生で大きなイベントを見る文化がなくなってきているんです。スポーツもプロ野球が地上波から撤退し、五輪も開催国の日本はともかく、世界的には視聴率がとても下がっている。アメリカでは大会ごとに視聴率25%減と、すごい勢いで五輪が見られなくなっていて、次のパリ五輪を放送するのかという話もしています。その中で何を生で見るのかというと、eスポーツが上がってくるんですよね。アメリカではNBAやNFLも若い人が見なくなって、eスポーツが見られるようになってきていることを考えると、これから先は日本でも同じような流れがあると思いますし、それをどこまで大きくできるかの勝負でもあると思います。若い人が集まるのはマーケティング的にも大事なポイント。しっかり強みとして出していければ、もっと大きくなっていくのかなと思って見ています」

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