女子プロレス・花月引退試合で里村明衣子が愛弟子にラストメッセージ

かつての師匠に別れを告げる花月(右)【写真提供:花月自主興行/撮影:水田雅彦】
かつての師匠に別れを告げる花月(右)【写真提供:花月自主興行/撮影:水田雅彦】

里村明衣子が贈った愛弟子への最後の言葉

 試合後、里村はマイクで花月に対し、「オマエが仙女にいたときにいつも言ってたこと、言ってやるよ。絶対に、絶対に、この世界に生き残る。私は今日、これを証明してみせた。近くにいたからこそ、絶対に負けられなかったんだよ」。さらに「一番厳しかった時代に花月は一生懸命仙女を支えてくれました。本当にあのときは苦しかったから、いまだからこそ言えます。仙女で育ってくれて、花月が後輩でよかったです。これからまだ若いから、これからの人生の方が長いから、仙女で、そしていままで培ってきたことを精一杯人生で活かして頑張って。本当にいままでありがとうございました」とも声をかけた。

 いまだに引退には納得していない。花月の闘いぶりから、よりいっそうそんな気持ちにもなったというが、花月が選んだ道なら、それは尊重しなければならないと考えた。花月は花月でどうしたら里村に追いつき追い越せるか、彼女のプロレス人生の大半はその作業に費やされてきたのである。他団体でこそ、そういう気持ちにさせられた。その結果がスターダムのリーダーとして後進の指導をおこない団体の底上げへの尽力だった。最後の試合を終えた花月はバックステージでスターダムの飯田沙耶を呼び出し、メイン前の第3試合であえて「X」として飯田の相手をつとめた理由を語った。

 花月は葉月(2019年12月引退)と共同で飯田を育てたことを初めて明かした。林下詩美も指導したひとりだが、飯田は林下のようなビッグルーキーではなく、バックグラウンドにはとくになにもない練習生にすぎなかった。そんな飯田に花月は過去の自分を見ていたのだろう。それは里村が花月を、さらに遡れば長与が里村に目をかけたように。こうやって女子プロの遺伝子は受け継がれていく。

 里村は言う。「入門してきた頃から花月はマジメすぎて、マジメすぎるところが本人にはコンプレックスだったと思うんです。その後、フリーになっていろんなことを吸収して、いまのスタイルを身につけた。それって彼女の努力だと思いますし、実際、レスラーとしての魅力って仙女を退団してからガーッとついた。それは本当に彼女の努力ですよ。世代闘争の頃は窮屈だったと思います。いろいろひとりで背負い込んでしまった。それで自分を伸ばすこともできればダメにすることもできる。そのときは挫折したかもしれないけど、フリーになってそこのコントロールはうまくなったんじゃないですかね。あの時期があったからいまがあるんだと思います」

 キャリアの集大成とばかりに花月はこれまでのすべてをぶつけてきた。正攻法はもちろん、以前にはあり得なかった水や毒霧の噴射などの反則殺法も含まれていた。マジメだからこそ、大江戸隊では割り切って弾けることができたのだ。そして最後の闘いで導き出した「花月が後輩でよかったです」との答え。里村はこうも言った。「すごいマジメな選手なので、そのマジメさはこれからの人生にもっと活かせると思うんですね。次の仕事では、相当出世すると思います(笑)」

 「出世」のお墨付きを師匠からもらった花月。勝つことはできなかったものの、最後に師匠と闘う目標は困難を乗り越え達成できた。たとえ距離は離れていても師の教えを常に守ってきた。その成果がここにあったのだ。

 花月、12年間のプロレス生活に悔いなし!

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