「子供たちがすべての始まり 」…家族で届けるレバノン映画「存在のない子供たち」のメッセージ

昨年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で、見えざる人々へ光を当てたレバノン映画「存在のない子供たち」の日本公開を7月20日に控え、ナディーン・ラバキー監督が初来日。7月5日に東京・日本ユニセフ協会のユニセフ・シアター・シリーズ「子どもたちの世界」の一環として行われた本作の上映会後、トークイベントが行われた。

レバノン映画「存在のない子供たち」トークイベント  (C)2018MoozFilms
レバノン映画「存在のない子供たち」トークイベント (C)2018MoozFilms

ナディーン・ラバキー監督と家族が来日 日本ユニセフ協会でトークイベントを実施

 昨年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で、見えざる人々へ光を当てたレバノン映画「存在のない子供たち」の日本公開を7月20日に控え、ナディーン・ラバキー監督が初来日。7月5日にトークイベントが行われた。

 ナディーン・ラバキー監督とパートナーであり音楽・プロデューサーを務めたハーレド・ムザンナル、一緒に日本に来ていたワリード君(10)、メイルーンちゃん(3)の家族4人で登壇した。穏やかな雰囲気でイベントがスタートし、ラバキー監督は「こうやって初めて来日できたこと、家族で作った、ホームメイドのような作品がはるばる日本という国に届いたことをとてもうれしく思っています。この作品が日本の観客にどのように受け入れられるのかわくわくしています。おそらく感情面で何か通じ合える作品になっているのでは。そんな風に感じていただけたらと思います」と話した。

映画「存在のない子供たち」場面写真 (C)2018MoozFilms/(C)Fares Sokhon
映画「存在のない子供たち」場面写真 (C)2018MoozFilms/(C)Fares Sokhon

 劇中では子どもの権利条約への無関心さ、不法移民、人種差別といった世界中に不当に扱われている子供たちが中心に描かれている。なぜ本作を作ろうと思ったのか、ストリートキャスティングにこだわって作った経緯について、ラバキー監督は「レバノンに住んでいると、劇中に出てきたような仕事をしている子供たちの光景を日々目にします。レバノンは150万人の難民の受け入れをしているのですが、その影響もあり経済状況が悪化しており、それが最も色濃く、いちばんに影響を受けてしまうのが子供たちなのです。その事実はショッキングで責任を感じましたし、どうにかしなければと思いました。何もしないということはそれに加担していることと同じです。子供たちがそんな世界に生きなければならない状況を私たちは作っている。その状況に適応してしまってはいけないんです」

 さらに、「最近の統計によると10億人以上の子供たちが世界中で何かの権利を奪われています。発展途上国に限らず先進国でも同じ状況です。私にできることは映画を作ること。映画というツールは真に物事の見方を変えられる力を持っていると信じています。この作品を観て、みなさんの心の中に子供たちが安心して暮らせる状況を作らねばいけない、このままではいけないという気持ちを持っていただけたら少しずつ変わることができるのではないか。すべては子供たちから始まると私は思っています。負の連鎖を断ち切らなければならない、この現状があることに驚いてはいけない、これは私たちが作り出していることなのだから」と真摯に語った。

トークイベントの様子  (C)2018MoozFilms
トークイベントの様子 (C)2018MoozFilms

 続いて、主人公を演じた少年ゼインの希望あふれる印象的なシーンについて、ラバキー監督へ質問を投げかけると……。まだ3歳のメイルーンちゃんがマイクを奪う?というハプニングが。その愛らしい姿に会場は釘付けになる。ラバキー監督は「ゼインが笑顔を向けるシーンは“僕はここにいる”“もう無視はしないで欲しい”そういう訴えが観客へストレートに伝わるシーンだと思います。同時に僕たちには希望を持って生きていける、という思いを感じ、私も感情的になってしまうのですが、実は映画の外でもその笑顔は続いているんです」と、現在のゼインはノルウェーに移住し、学校に通い、家族と共に笑顔で暮らしていることを報告した。

 ハーレドは音楽を担当すると共に本作で初めてプロデュースをしたのは「誰もこの企画を受けないことが分かっていたから」と語る。「厳しいことが分かっていたから、すべて自分たちでやろうと決めました。この作品ではリアリティとの一線を超えてしまうような瞬間があり、子供たちの現実を伝えることを目的としていたので音楽で観客の感情を操るようなことは一切したくないという思いもあり、とても難しかったです。2つの考え方で進めました。リアルな街のノイズを使うこと。もう一つは詩情的なスコアを作ることでバランスを取っています。それでも、最後の方は自分たちの感情を止めることができなくて、かなり音楽が強い存在感を放っているのではないかなと思います」と話した。

 本作は7月20日からシネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国公開となる。

(ENCOUNT編集部)