反社チェックのカギは「名刺」 クラウド活用サービスが注目、企業コンプラの最前線

近年、社会的責任が強く求められている企業のコンプライアンス問題。反社会的勢力とのつながりの発覚や疑惑が持ち上がることで、その企業が深刻な信用失墜に陥るケースが日本国内においても取り沙汰されるなか、クラウド名刺管理サービス大手の「Sansan」が開発した、名刺をスキャンするだけで、反社会的勢力との関わりなどの取引リスクを、早期に検知できる機能「反社チェックオプションpowered by Refinitiv/KYCC」(以下、反社チェックオプション)が注目を集めている。

「反社チェックオプション」開発に携わったSansanの酒井悠作さん【写真:ENCOUNT編集部】
「反社チェックオプション」開発に携わったSansanの酒井悠作さん【写真:ENCOUNT編集部】

社長が暴力団と会食していた九州の企業は公表から2週間足らずで倒産

 近年、社会的責任が強く求められている企業のコンプライアンス問題。反社会的勢力とのつながりの発覚や疑惑が持ち上がることで、その企業が深刻な信用失墜に陥るケースが日本国内においても取り沙汰されるなか、クラウド名刺管理サービス大手の「Sansan」が開発した、名刺をスキャンするだけで、反社会的勢力との関わりなどの取引リスクを、早期に検知できる機能「反社チェックオプションpowered by Refinitiv/KYCC」(以下、反社チェックオプション)が注目を集めている。

 2019年に大手芸能プロダクション所属のお笑いタレントによる“闇営業”が問題となったことは記憶に新しいが、今年5月には九州の大手設備工事会社の社長が指定暴力団幹部と会食をしていたとして、福岡県警が暴力団排除条例を適用し社名を公表。企業取引は停止、銀行口座は凍結され、排除措置公表からわずか2週間足らずで倒産に追い込まれた。ある企業が反社と関係があった場合、取引先の企業が芋づる式に信用を失ったり、損害を被ったりする可能性もあり、相手企業の情報はコンプライアンス管理上、非常に重要なものとなりつつある。

 一方で、数ある取引先の情報をすべて手作業で検索・確認するには膨大な時間と人的リソースを伴う。従来のリスクチェック体制では契約直前になってリスクが判明し、それまでの営業の努力が水の泡となる場合もあった。こうした無駄を効率化し、早期段階でのリスクマネジメントを可能にしたのがSansanの「反社チェックオプション」だ。

 Sansanはクラウド名刺管理サービスの国内最大手で、業界シェアは84%、利用企業は7000社以上に上る。クラウド上で名刺情報を管理、社員がもつ人脈を可視化・共有し、組織として人脈データを蓄積・活用することで、出会いからイノベーションを生み出すことを理念としている。「反社チェックオプション」は従来の情報管理・情報共有の技術を応用し、交換した名刺を専用のスキャナーやアプリで読み込むだけで、名刺情報を外部のデータベースと照合。契約する上でのリスク情報を利用企業に提供する仕組みだ。社内の担当者はその情報をもとに取引をするかどうかを検討、取引不可と判断した場合はその案件に関わった社内の人間全員に情報が共有されるという。

 Sansan Unit Product Marketingグループの酒井悠作さんは「数年前から業種・業界問わず、お客様からコーポレートガバナンスについて相談を頂く機会が多くなっていました。反社会的勢力との付き合いだけでなく、マネーロンダリングや人権侵害、脱税など、取引においてチェックするべきリスクが多様化する中、手作業のキーワード検索でそれらをすべてチェックするには限界があります。犯罪にひもづくあらゆる情報を手間なく早期に確認できるのが、当社が提供する反社チェックオプションです」と開発・導入の背景を語る。

 経営者視点で気がかりなのは、自社が知らず知らずのうちに「反社と交流あり」と見なされないかという点だが、酒井さんは「会社として従業員全員の接点を把握することは難しいですが、反社チェックオプションを導入していればそれらを可視化できます。何らかの形で接点を持ってしまった場合でも、それ以上の関わりを断つことができます」と説明する。

 コロナ禍で対面での名刺交換の機会が減っている一方で、オンライン商談・会議が普及したことから、氏名や肩書など正確な名刺情報の交換を可能にするオンライン名刺の利用も拡大。対面で面談できないからこそ、相手の企業情報をより詳しくチェックしたいという需要は増しているという。オンライン名刺の活用により、オンライン商談や会議の場においても、取得した正確な相手方の情報を元に、リスクチェックが可能になる。企業が保有する接点データを活用した企業のコンプライアンス管理は、今後スタンダードとなっていくか。

次のページへ (2/2) 【写真】リスクを持つ企業の名刺が取り込まれた際の通知画面のイメージ
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